DISC GUIDE

ダニー・ハサウェイが遺した珠玉のスタンダード&レイラの作品を紹介/冬春夏秋をさまざまに彩るダニーのリサイクル

【IN THE SHADOW OF SOUL:ソウル・ミュージックの光と影】[第88回]娘と父の光と道 Pt.2

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  • 2015.12.21

ダニーの遺した珠玉のスタンダードと、レイラの作品を一部紹介!

DONNY HATHAWAY Everything Is Everything Atco(1970)

黒人街のリアルをシンプルな言葉で伝えて同胞を鼓舞する“The Ghetto”の共作者リロイ・ハトソン、制作にも関わるリック・パウエル、ギターのフィル・アップチャーチなど、DC~シカゴ時代の仲間が曲作りや演奏に関与した初作。知的なファンクの表題曲を筆頭に、歌いたい衝動をぶつけたような新しいソウルとブルースがここにある。レイ・チャールズ“I Believe To My Soul”やニーナ・シモン“To Be Young Gifted And Black”の独自解釈も見事だ。 *林

 

 

DONNY HATHAWAY Donny Hathaway Atco(1971)

スタンダードやヒット曲を自分の音/歌世界に染めるのが得意なダニーだが、ほぼ全編が他人の作品となる本2作目は、彼のカヴァー/編曲センスが発揮された一枚。定番となったリオン・ラッセル名曲“A Song For You”をはじめ、恩人キング・カーティスがサックス・ソロで斬り込んでくるヴァン・マッコイ作の“Giving Up”、ジョージ・クリントン作“She Is My Lady”など、教会でピアノを弾き語るように厳かなムードで歌われていく様は、静かだが力強い。 *林

 

 

ROBERTA FLACK & DONNY HATHAWAY Roberta Flack & Donny Hathaway Atlantic(1972)

ロバータ・フラックとの初共演盤。ダニーも管弦アレンジを手掛け、NYの腕利きによる洗練されたサウンドをバックに歌うのはキャロル・キング“You've Got A Friend”に代表されるポップス名曲などで、双方がピアノと歌で真摯に楽曲に向き合う。ラルフ・マクドナルドらが書いた“Where Is The Love”からユージン・マクダニエルズがペンを交えた“When Love Has Grown”にかけての切なさから多幸感への移ろいは、男女デュエットならではの妙味がある。 *林

 

 

DONNY HATHAWAY Live Atco(1972)

ソウル史上屈指のライヴ盤……というか、純粋にクラシックと呼ぶべき一作。前年8月に〈トルバドール〉で録音されたA面と、同10月にNYの〈ビターエンド〉で収録されたB面から成り、ジャジーな“What's Going On”やジョン・レノン“Jealous Guy”など原曲が世に出て間もないタイミングでの個性的な解釈と演奏力の高さに圧倒される。“You've Got A Friend”の大合唱など、オーディエンスとの親密な空気感も本作を名演集たらしめている重要素だろう。 *出嶌

 

 

DONNY HATHAWAY Come Back Charleston Blue Atco(1972)

「ハーレム愚連隊」の邦題で日本公開もされたブラック・シネマのサントラ。クインシー・ジョーンズ監修のもとダニーが作曲と指揮を手掛けたスコア集で、いにしえのジャズ風インストや疾走感のあるBGMなどが中心だが、ダニーとレイラそれぞれが自身のライヴ(盤)で歌ったシリアスで情熱的な“Little Ghetto Boy”のスタジオ録音版が収録されている。ラウンジーなボッサ・インスト版も登場する表題曲はマージー・ジョセフとの優美なデュエット。 *林

 

 

DONNY HATHAWAY Extension Of A Man Atco(1973)

アリフ・マーディンジェリー・ウェクスラーが制作したソロ最終作。クラシックの交響曲を思わせる荘厳な序曲に続いて黒人たちの明日への希望を願う“Someday We'll All Be Free”が歌われる前半から大作映画のような雰囲気で、多彩な音楽趣味を反映した曲を名演奏家たちとグルーヴィーに展開していく。JR・ベイリーのメロウ・ソウル“Love, Love, Love”やリオン・ウェア作のバラード“I Know It's You”での胸焦がすような歌に聴き惚れる。 *林

 

 

ROBERTA FLACK feat. DONNY HATHAWAY Roberta Flack Featuring Donny Hathaway Atlantic(1979)

ロバータ作における“The Closer I Get to You”(78年)の成功を受け、久々のデュオ盤として制作を始めるも、結果的に遺作となった一作。生前のダニーが歌入れしたのはスティーヴィー・ワンダー作の佳曲“You Are My Heaven”と、エムトゥーメイ&ルーカス作の都会的なアップ“Back Together Again”のみ。ブラコン前夜の煌めきを備えた後者ではルーサー・ヴァンドロスも声を重ねている。 *出嶌

 

 

DONNY HATHAWAY These Songs For You, Live! Rhino(2004)

『Live』と『In Performance』からのチョイスに蔵出しテイクも加えた、71~73年のライヴ・ベスト的な編集盤。73年のカーネギー・ホール録音による冒頭の3連打が強力で、フリー・ソウル的な快さも帯びた“Flying Easy”での幕開けから押し寄せる躍動と昂揚はハンパない。ひと繋がりのライヴのような作りも楽しめるし、もしダニーの皿を1枚だけ入手する人がいたら、迷わずこれを推薦だ。 *出嶌

 

 

DONNY HATHAWAY Never My Love: The Anthology Atco/Rhino(2013)

資料価値だけじゃない価値に溢れた4枚組のアンソロジー。ジューン&ダニーでの“I Thank You Baby”などアトコ入社前の曲から、2部構成のシングル版“The Ghetto”、アルバム未収録の“This Christmas”などを集めたDisc-1だけでも親切な作りだが、Disc-2は68~78年にスタジオ録音されていた13曲もの未発表曲集、Disc-3は〈ビターエンド〉における未発表ライヴ音源集、そしてDisc-4はロバータとのデュエット集……圧巻! 家宝! *出嶌

 

 

LALAH HATHAWAY Lalah Hathaway Virgin(1990)

アンドレ・フィッシャーら複数の制作陣を迎えてコンテンポラリーにまとめられた、25年前のファースト・アルバム。『Live』でも歌っているアンジェラ・ウィンブッシュ作の“Baby Don't Cry”やディープな“I'm Coming Back”ではこの時点で成熟した熱情を発散しまくる。R&Bチャート3位を記録したデレク・ブランブル作のヒット“Heaven Knows”や、チャッキー・ブッカーがリズミックに仕立てたジャネット風の“Sentimental”はもはや逆に新鮮だ。 *出嶌

 

 

JOE SAMPLE feat. LALAH HATHAWAY The Song Lives On GRP(1999)

昨年鬼籍に入った名ピアニストがレイラをフィーチャーしたジャズ・アルバム。ジョークルセイダーズ名曲“Street Life”をランディ・クロフォードに代わって歌うレイラも話題となったが、技アリなのは、過去にダニーが歌った“For All We Know”を父の面影を重ねるように娘に歌わせたあたりだろう。“When You Life Was Low”はレイラが今回のライヴ(盤)で取り上げている。 *林

 

 

LALAH HATHAWAY Self Portrait Stax/Concord(2008)

新生スタックスでの初作にして、ジャズ方面で発揮されてきた才能にR&Bサイドから改めてスポットが当てられるきっかけとなった転機の一作だ。レックス・ライドアウトとの共同プロデュースを中心に、ケネス・クラウチテラス・マーティンら西海岸の腕利きたちと柔軟に手合わせしている。……ただ、インディーの前作はともかく、これがもう入手困難なのは悲しいので、乞う復刻。 *出嶌

 

 

LALAH HATHAWAY Where It All Begins Stax/Concord(2011)

制作陣にドレ&ヴィダルマイク・シティらを迎えたスタックスでの2作目。シンセ使いのブーミーなアップやステッパーズ調も繰り出されるレイラ史上もっともアグレッシヴな内容だが、アルバム・ジャケットが示すように父への思いも最高潮に達しており、ダニーの“You Were Meant For Me”をカヴァー。デビュー作でも歌っていたヴェスタ曲“I'm Coming Back”はラシェル・フェレルを迎えた再演版で、この2曲は今回のライヴ(盤)でも披露している。 *林

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