INTERVIEW

〈和製シガー・ロス〉とも称されてきた噂のピアノ・スリーピース・バンド、Ryu Matsuyamaが初の全国流通盤を語る

〈和製シガー・ロス〉とも称されてきた噂のピアノ・スリーピース・バンド、Ryu Matsuyamaが初の全国流通盤を語る

噂のピアノ・スリーピース・バンド、初めての全国流通盤で大いに吠える! 圧倒的に美しいダイナミックなアンサンブルに撃たれろ!!

 エトランゼが創造する音楽としての寂寞感と緊張感、それを持っているがゆえの底知れぬ美しさに満ちた旋律と音像が、まるで森羅万象に向かって祈りを捧げるようなスケール感をもって、リスナーの耳を通して果てしなく広がっていく。漆黒の闇に射す、一筋の強い光線。フロントマンの個人名でありながら、ピアノ・スリーピース・バンドの名義でもあるRyu Matsuyamaの音楽性は、言葉にすると大仰になってしまうイメージを、しかしシンプルな感性の喚起として脳裏に浮かばせる。なるほど、これまで〈和製シガー・ロス〉とも称されてきたというのも頷ける。イタリアで生まれ育ち、2010年に母国である日本を拠点に音楽活動を始めたRyuが、10代前半から流浪のベーシスト人生を歩んできたTsuruとバークリー音楽大学の奨学生としてアカデミックにジャズ・ドラムを学んだバックグラウンドを持つJacksonが出会い、現在の編成になったのが2014年。

 「イタリアの友人にRyu Matsuyamaの音源を聴かせると〈日本人っぽい音楽〉だと言われて、日本人の友人が聴くと〈海外っぽい音楽〉だと言われるので、自分の音楽のアイデンティティーがどこにあるのか自分でもまだわかってないんですよね。でも、ずっとどこにも属さずにアイデンティティーを探している感じがRyu Matsuyamaの音楽のおもしろさにも繋がっていくのかなとも思っていて」(Ryu)。

「僕はスティーリー・ダンを一番尊敬しているんですね。それはなぜかというと、曲から触発されて、映像が鮮明に浮かぶからで。ポップスやロックであるんだけど、そこにはジャズやブラック・ミュージックの要素があって、日本人である僕もなぜか懐かしいと思うような感触を覚える。音楽としてのアプローチは異なるけれど、それに近いイメージをRyuの歌にも感じたんですよね」(Jackson)。

 「僕はジャズやブルースのサポートもしてきたんですけど、最終的にはJ-Popに辿り着いて。結局、歌がすごく好きなんですよね。このバンドは個々のやるべきことをしっかり念頭に置きつつ、3人の異なる音楽的な指向が調和していると思うんですよね。だから、マニアックな音楽になっていないし、一般的に〈ポップス〉と呼ばれる音楽とはあきらかに違うポップさがあると思います」(Tsuru)。

Ryu Matsuyama Grow from the ground TOWER RECORDS(2015)

 3人は静謐な気配を重んじながら、多様なリズム・アプローチをちりばめ、過不足のないアンサンブルを展開していく。Ryuが編むメロディーに呼応するように徐々にダイナミックな様相を呈していくサウンドは実に忘れ難い余韻を残す。随所にシンセサイザーやエレクトリック・ギターのフレーズを効果的に配置し、楽曲の奥行きの一助としているが、耳に直情的に飛び込んでくるのは、3人のベーシックなプレイの繊細さと爆発力であり、ファルセットとナチュラル・ヴォイスを天衣無縫に羽ばたかせるRyuのヴォーカルの求心力だ。Ryuいわくこのバンドのジャンルをあえて定義するならば、〈アンビエント・ポップ〉。初の全国流通盤となる『Grow from the ground』に収録されている全6曲は、Ryu Matsuyamaの光と影にまつわる音楽的な美学が、真新しいポップ・ミュージックへと生まれ変わるその瞬間を閉じ込めるような様相でそこにある。

 「このアルバムは一人の主人公の成長過程を描いていて。音楽表現における僕の唯一のテーマは、雲の中から差し込む一筋の光を描くことなんです。だから、サウンドもダークな部分もしっかり描きたいと思っていて。そうじゃないと強い光を生み出せないから。そのうえで多くのリスナーに、自分の頭の中でそれぞれの物語を描いてもらいたいと思うんですよね。そして、そのためにはポピュラリティーのあるメロディーが必要だということも強く自覚してます」(Ryu)。

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