〈武道館でやりたい〉という夢を実現するお手伝いをしたい
「あとはサウンドの方向性、こんな作家さんの曲はどうか?といったことを提案したりしたね。〈売れる〉ことを第一に考えるんじゃなく、まずは音楽的な要素を大事にして、BUBKAで宇多丸さんが連載している〈マブ論〉を読んでいるような、アイドルをちゃんと聴いている人たちに刺さるといいなと、人選などもconnieさんに相談して決めた。その時に、connieさんといつかお願いしたいと言っていた小西康陽さんに依頼しようということになったんだよね。connieさんはピチカート・ファイブの大ファンで、小西さんを尊敬しているから、connieさんの曲にもピチカートへのオマージュに溢れたものが多い(笑)。そういう経緯もあって、Negiccoにイメージするものとガチッとハマったというか」
――そういう流れだったんですね。小西さんによる“アイドルばかり聴かないで”は私もすごく聴きました。イイ曲ですよね~!
「ね! あのデモを聴いた瞬間、ガッツポーズした! デモでは別の女性が歌った仮歌が入っていて、その時点で〈キター!〉って(笑)」
――ハハハハ、手応えがハンパないですね(笑)。
「〈ふつうの人はCDなんてもう買わなくなった〉とか〈アイドルばかり聴かないで〉っていう詞、〈ざんねーん!〉のインパクトたるや! あれでいろんな人に知ってもらえたから。あの曲をやっていなかったら、筋肉少女帯の大槻(ケンヂ)さんなんかからイイと言われることもなかっただろうし」
――歌詞のインパクトが何よりすごかったです。
「そうやって郷太さんや小西さんといった作家さんが引き受けてくれて、良い曲を作ってくれたおかげで、それ以降すごくやりやすくなったよね。ついには田島貴男さんも書いてくれたり(2014年のシングル“サンシャイン日本海”)。オリジナル・ラブの『風の歌を聴け』(94年)時代のメンバーがやってくれてる※って……すごいよ!」
※ベーシストとして参加していたのは元オリジナル・ラブの小松秀行
――ホントですね。しかもその後にリリースされたオリジナル・ラブのアルバム『ラヴァーマン』のインタヴューで、田島さんが〈Negiccoの仕事がいい経験になった〉とおっしゃっていたのを読みました。
「ああ、それは僕も読んだ。田島さんはNegiccoをすごく応援してくれるのよ。矢野博康さん※もそうだし、ネギに関わった人は皆さん応援してくれる。愛される力があるんだろうね」
※2014年のシングル“トリプル! WONDERLAND”のプロデュースを手掛けた
――そういうのはすごく大事ですよね。
「なんだろうね、謙虚だからかな。いつもあんまり前に出ない(笑)。それもまた問題だとは思うんだけど、あの控え目さ加減がいいんだろうなという気はちょっとするよね」
――そうかもしれませんね。
「あと僕が思うのは、〈終わらないアイドル〉がいてもいいんじゃないかと。新潟にいながらアイドルを辞めずにずっと続けていったらいいんじゃない?みたいな。まあ、適当なことを言ってるんだけど(笑)」
――アハハ、適当(笑)。でもキャリアも長いですし、もうここまで来たら……というのはあるかなと。
「またNao☆ちゃんが良いことを言うんだよ、〈夢を叶えた人は夢を諦めなかった人〉ってね。だって、まつり湯でライヴをやっていた頃から〈武道館、武道館〉って言っていたし。本当に悪いけど、宴会場でライヴをやっているグループが〈武道館(のステージに立ちたい)〉と言ってもあまりリアリティーはない(笑)。でも言い続けているとね……このあいだPerfumeの日本武道館ライヴにゲストで呼ばれて※、立てたんだよ。ワンマンではないにしろ、武道館を経験できたわけだから、やっぱり自分たちの目標を言い続けること、諦めない気持ちは大事だなと。Negiccoの場合、辞めたくなったことなんて1回や2回じゃないだろうから」
※2015年秋に行われたPerfumeのメジャー・デビュー10周年企画〈Perfume Anniversary 10days 2015 PPPPPPPPPP〉の一環として9月22日に東京・日本武道館で行われた〈3人組〉がテーマの対バン・イヴェント〈Perfume FES!! 2015 ~三人祭~〉にNegiccoが招かれた
――本当にそうですね。言魂という言葉があるくらいですから、口に出すことでそれが現実に引き寄せられるというのはあると思います。
「そうだよねぇ。僕はNegiccoのいちファンから、一緒に仕事をする立場になっちゃったから、ある意味彼女たちの歴史に加担しちゃっているので、Nao☆ちゃんがずっと言っている〈武道館でやりたい〉というのを実現させるお手伝いをしたいなって」
――可能性は十分あると思いますよ……というかできますよ。
「いや~……でも武道館行った時に、広いな~って思ったよね」
――確かに広いですよ。でも日比谷野音までやっているので、あとはもう武道館しかないです。
「3倍以上あるからな……。なんとかしてもっと有名になって、武道館に1万人集められるといいよね。僕のなかでのNegiccoはPerfumeの『GAME』ツアーであ~ちゃんが口ずさんだ歌から始まってるから……思えば遠くへ来たもんだ。Perfumeの武道館イヴェントでも“圧倒的なスタイル”を歌っていたけど、泣けたよ。〈周りの声に惑わされても 決めるのは君さ Always〉っていう歌詞が僕はすごく好きで、それをPerfumeの武道館イヴェントで歌っていたっていうところに、グッとくるものがあった。13年目なのに〈諦めるにはまだ早い 始まったばかり〉って歌うなんて(笑)。その後に、PefumeとNegiccoの6人でライン・ダンスしたりしてね(笑)。でもそういうキラー・チューン的なものがあるのはいいと思うんだ。ちゃんと歌に自分たちの想いが乗っている曲を持っているというのは強みだなと」
――本当にそうですね。いまでも新潟では精力的にライヴをやっているんですよね?
「やってるやってる。武道館に出た週末、長岡のイヴェントに出てたね」
――自分たちのワンマンを武道館でやって、その次の日に新潟のショッピングセンターとかでこれまで通りのライヴをやったらカッコイイですね(笑)。Negiccoの原点ですから、地元のファンに向けて。
「そう、原点。やれたら最高だよね! (新潟の)古町や万代あたりでフリー・イヴェントとか。人がいっぱい来て大変になっちゃうかもしれないけど」
――いいですね、圧倒的なシナリオですよ!
「あとは浅草のまつり湯でやるのもありかな、〈復活!〉って。そういえば、2016年のNegiccoカレンダーが発売されたんだけど、撮影場所がまつり湯なんだよ(笑)」
――アハハ、思い出の場所(笑)!
「僕はそれには関わっていないけど、まつり湯で撮ろうというそのセンスがすごいなって(笑)。(ウェブサイトでカレンダーの表紙を見ながら)これはまつり湯の宴会場のステージ。もうなんなんだっていう(笑)」
――へぇ~カワイイじゃないですか。いろいろ浅草の名所で撮られてるんですね、新潟のグループなのに(笑)。でもそういうところがいいのでは?
「まあね、そこがいいんだとは思う、僕も(笑)。まつり湯好きだから、全然いい。3年前のNegiccoの10周年イヴェントもまつり湯でやったんだよ。あれは良かったな~楽しかったな~、ベロベロに酔っ払っちゃって全然記憶がないもん」
――まつり湯での思い出が止まりませんね(笑)。
「まあまあ、ここまでがんばってきたんだから、少しずつ思っていることが実現できるようになるといいなと」
――2016年はどんな感じなんですか?
「去年はライヴをたくさんやっていて、映像作品は2枚出したけどリリースが少なかったから、レーベルとしては来年はきちっきちっとシングルも出していきたいなと思ってる。良い曲に巡り会えて、なおかつ皆さんに支持してもらえるものを作れたらと。それで何とか武道館に一歩でも近付ければ……という感じだよね」
――それを本格的に射程に入れて。
「辞めない限りはいつの日か達成できると思う。古くからのファンの悲願だよね。凄まじい物語を持ってるから、彼女たち」
――そうですね、アイドルそれぞれがいろんなドラマを持っているとは思いますが……涙なしには語れない物語が。
「物語の強度からいったら凄まじい(笑)。もうちょっとそういうエピソードを浪花節な感じで出していってもいいのかなと思ってるんだけど。NHKの『MUSIC JAPAN』には2回出させてもらって、1回目に出た時はその回の主役みたいな扱いでやってくれたんだよね※。あ~ちゃんも泣いてくれて」
※東京・NHKホールで公開収録されている、Perfumeが司会を務める『MUSIC JAPAN』に出演。同番組の前身にあたる「ポップジャム」に2004年に出演して以来の登場、同じ地方アイドルでキャリアや年齢も近いPerfumeとの再会というトピックもあり、話題となった
――メンバーも泣いてましたよね。
「本放送ではカットされていたけど収録ではもっと喋っていたらしい。僕は収録の時に別の仕事でNHKホールに行けなくて、Twitterでその様子をレポしていた人がいて、それを見ながら移動中の表参道で泣いたもん。(Perfumeと)良かったな~、会えて良かったな~!って(笑)」
――あらまー(泣)! でもPerfumeは武道館でのイヴェントに呼んでくれたり、すごくNegiccoをサポートしている印象があります。
「うん、フックアップしてくれているよね。お互い地方出身のアイドルで、かつて一緒にやったというのもあるんじゃないかな。だからそれに応えなきゃなっていうのもあるよね」
――そうですね、本当に楽しみです! ということで最後に、昨年12月にNegiccoのシングル“圧倒的なスタイル”のバンド・ヴァージョンがリリースされましたが……。
「はい。限定盤なので、ぜひぜひ皆さんお早めにお買い上げいただけると! ベスト盤にも収録されている楽曲ですが、さらにいろんな人に聴いてもらいたいということで、バンド・ヴァージョンで出します。オリジナルとはアレンジが違うので、そのあたりも楽しんでもらえれば」
――さっきも話に出た通り、Negiccoの代表曲のひとつですから、とりあえずこの曲を知ってほしいというのはありますよね。
「この1曲を聴いて、彼女たちの歴史をネットで見てもられば。あとBUBKAでね、Negiccoの歴史を振り返る連載が始まったんですよ。ももクロを追っていたライターの小島和宏さんが書いてくれるので、それを毎月読んでもらいたい。できればその連載が終わる前に武道館でワンマンがやりたいね!」