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デヴィッド・ボウイ『★』クロス・レヴュー:ロックでアートし続けた粋人が地球で繰り広げる最後の優美な遊びとは……

デヴィッド・ボウイ『★』クロス・レヴュー:ロックでアートし続けた粋人が地球で繰り広げる最後の優美な遊びとは……

Nothing Has Changed?
前作でのカムバックから3年。69歳の誕生日にアルバムを発表し、その2日後に星になったデヴィッド・ボウイ。好奇心の趣くまま次々と姿を変え、ロックでアートし続けた粋人が、地球で繰り広げる最後の優美な遊びとは……

DAVID BOWIE ISO/Columbia/ソニー(2016)

 

これは遺言ではない

 デヴィッド・ボウイの新たな章の幕開け。『★』はそう強く確信させるアルバムだ。10年ぶりの新作として注目を集めた『The Next Day』(2013年)から意外にも短い期間で制作された本作は、前作に引き続きトニー・ヴィスコンティがプロデュースを務める一方でバンド・メンバーは総入れ替え。NYの気鋭ジャズ・ミュージシャンたちが脇を固め、LCDサウンドシステムジェイムズ・マーフィーがゲスト参加している。その結果、前作以上にバンド・アンサンブルは緊密でふくよかになっていて、なかでも骨太なグルーヴを生み出すマーク・ジュリアナのタイトなドラミング、ダニー・マッキャスリンの艶やかなサックスの音色が印象的だ。

 そして、ロック、ジャズ、ソウル、エレクトロなど、ジャンルを自在に行き来できる新しい乗り物(バンド)を手に入れたボウイは、いきなり約10分という長尺でドラマティックに展開する“★”をオープニングに用意。力強く、ポップで、生気に満ちていた前作に比べ、繊細で、アーティスティックで、緊張感に貫かれたアルバムを作り上げた。前作が太陽の輝きなら、今回は月光の妖しさ。時代と共に変化し続けてきたボウイがまたチェンジした――そんな手応えを感じさせる本作が、最後のアルバムになるというのもボウイらしい。いまとなっては歌詞や音から別れの挨拶を読み取ってしまわずにはいられないが、それよりもここに刻み込まれた〈新しいボウイ〉に胸がいっぱいになる。これは遺言ではなく、伝説の始まりを告げる作品だ。 *村尾泰郎

 

思いきり気障な人生

 かの〈ジャガー・ハード・ペイン〉が1月8日に復活を告げ、DAIGO☆STARDUSTが1月11日に結婚を発表……というシンクロぶりに思わず声が出た人も多かろう。それはともかく、いまとなってはオールタイム・ベスト盤『Nothing Has Changed』(2014年)を編んだあたりから着地点を見据えていたのか、そこに新曲として収録された“Sue(Or In A Season Of Crime)”(とシングル化の際にカップリングされた“'Tis A Pity She Was A Whore”)を起点に、自作の演劇「Lazarus」(昨年12月に初演)のプランにも絡む形でまとめられたのが今回の新作『★』となる。件の演劇が「地球に落ちてきた男」(76年)と繋がるという事前情報と共にタイトル曲が先行公開された昨年の段階では、キャッチーな2段構えの長尺ナンバーというその作りも相まって、アダルト版『Station To Station』(76年)みたいな作品を勝手にイメージしてもいた。

 で、蓋を開ければ予想以上の通常モード。新ヴァージョンで収まった“'Tis A Pity She Was A Whore”のスクエアなドラミングと金切るホーンの絡みを聴けば“You've Been Around”あたりの昂揚を否応なく思い出してしまう。同曲を含む『Black Tie White Noise』(93年)は、キャラとしての変容を封じたボウイが〈等身大の初老ぶり〉をスタイリッシュに着こなして最前線に帰ってきたアダルト・ロックの名作であったと同時に、レスター・ボウイマイク・ガーソンを迎えてジャズに対する漠然とした憧れを昇華した一枚でもあった(もっと言えば、かつてなく〈私生活のコンディション〉を投影した作品でもあった)。そう考えると、〈このタイミング〉で彼が先鋭的なジャズメンと組むことを選んだ理由もぼんやり浮かんでこなくはないのではないか。サックス演奏から音楽に入ったヒップ自慢なモッド少年が、かっこつけたまま思いきり気障な人生を自身のアートとしてスタイリッシュに完結させたのだから、当人には〈かっこいい〉という言葉が最大の賛辞となるだろう。かっこいいよ、ボウイ! *出嶌孝次

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