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エイドリアン・ヤングの創造性を磨いた源泉としてのソウル/ファンク古典

THE DELFONICS La La Means I Love You Philly Groove(1968)

ゴーストフェイス・キラーも口ずさんだ表題曲で知られる、初期フィリー・ソウルの名門グループ。ウリはウィリアム・ハートのファルセットだが、エイドリアンが惚れ込んだのは、ヨーロッパ的な哀愁を漂わせるトム・ベルのメロディーや、フレンチ・ホルン、エレキ・シタールなどの響きだろう。映画「いそしぎ」のテーマ曲を歌うシネマ音楽趣味も合致。

 

DENNIS COFFEY Dennis Coffy Strut(2011)

70年代サイケ・ソウル~ファンクのギタリスト。ブラック・シネマ「黒帯ドラゴン」(74年)のスコアを手掛け、数々のブレイクビーツ古典を残したことでも知られるデトロイトの偉人を、エイドリアンが自作に招いたのは自然な流れだった。メイヤー・ホーソーンも参加したこの復活盤は、エイドリアン的なディグ感覚によるセルフ・オマージュ的な内容だ。

 

ROY AYERS Coffy Polydor(1973)

ヒップホップの世界でもっとも愛されているこのヴィブラフォン奏者に、同じ楽器を多用するエイドリアンが心酔していないわけがない。ファンキーとメロウの二本立てでゲットー・ブラックのリアルを活写するジャズ・ファンカーがスコアを手掛けた70sブラックスプロイテーション映画のサントラ。下世話さも含めたエアーズの粋は、いまも十分有効だ。

 

WILLIE HUTCH The Mack Motown(1973)

70年代のLAモータウンを支えたシンガー/ソングライター/ギタリスト。本盤と『Foxy Brown』(74年)という名作ブラック・ムーヴィーのサントラを2年連続で制作した彼だが、ファンキーなアップからスウィートなバラードまでをある種の男臭さと哀感を漂わせながらまとめ上げた作風は、エイドリアンの『Black Dynamite』の世界と相通じている。

 

VARIOUS ARTISTS Iron Fists Chronicles Soul Temple/Stax(2014)

ウータン・クランの曲や映画「アイアン・フィスト」(2012年)のサントラで引用されたスタックス・クラシックをRZAがチョイスした2枚組のコンピ。アイザック・ヘイズ24カラット・ブラックの寂寥感溢れる楽曲はそのままエイドリアンの世界で、ゴーストフェイス・キラー〈Twelve Reasons To Die〉シリーズのインスパイア集と言ってもよさそうだ。

 

CURTIS MAYFIELD Sweet Exorcist Curtom(1974)

エイドリアンがブラック・シネマ・サントラの名作「スーパーフライ」(72年)に影響を受けていることは間違いない。が、同じカーティスの作品でも、ワウ・ギターやオルガン、ストリングスを効かせながら抑制したファンクネスで迫る本作は、繊細な表情で描き出されるエロティシズムが、よりエイドリアン的だ。美意識に満ちた黒人音楽家という点も似ている。

 

DOUG CARN Adams Apple Black Jazz(1974)

ブラック・ジャズ最大のヒット作とされる前衛ジャズの名盤。稀代のピアニスト/シンガーによるソウルフルなアルバムで、エイドリアンはゴーストフェイス・キラーとのツアー中に“Higher Ground”を繰り返し聴いていたという。“Mighty Mighty”はダグと縁深いアース・ウィンド&ファイア曲のカヴァー。男女のシンガーが絡む作風もエイドリアンっぽい。

 

BILLY PRESTON I Wrote A Simple Song/Music Is My Life BGO(2011)

エイドリアンも多用しているオルガンやクラヴィネットを操りながらファンキーな音世界を創り出していた70年前後のビリー・プレストン。エイドリアンの作品には時にサイケ期のビートルズを思わせる曲が登場するが、〈5人目のビートルズ〉などと言われたビリーはその頃の空気を吸っていた張本人でもある。プログレッシヴなソウル感覚が似ているか。