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エイドリアン・ヤングの作品

ADRIAN YOUNGE Black Dynamite Wax Poetics(2009)

実際に上映された70年代ブラックスプロイテーション風アクション・コメディー映画のサントラ。あえてB級感を狙ったファンキーでハードボイルドな音世界を繰り広げるアルバムで、死を悼むバラードや情事を描いた女性ヴォーカル曲、チェイス・シーンで使われる緊張感溢れるインストといった〈お約束〉で構成される内容にエイドリアンらしいこだわりが感じられる。塩辛ディープなラヴァン・デイヴィスの歌も70s感をリアルに呼び起こすものだ。 *林

 

ADRIAN YOUNGE PRESENTS VENICE DAWN Something About April Wax Poetics/Linear Labs(2011)

2000年の自主制作EPをベースとした架空映画のサントラ。エイドリアン・サウンドの担い手が結集したヴェニス・ドーンの演奏で、ヨーロッパ映画音楽と70年代ブラック・シネマ・サントラ趣味を合体したダークでサイケデリックなソウルを展開する。ヴォーカル曲では、主にローレン・オデンレベッカ・ジョーダンがリードを担当。ドゥワップ要素も交ざる“Lovely Lady”ではデニス・コフィがさりげなくギターをプレイ。 *林

 

THE DELFONICS Adrian Younge Presents The Delfonics Wax Poetics(2013)

デルフォニックスの復活企画だが、実質的にはリードのウィリアム・ハートによるソロ作。多くの楽器とローファイな音でトム・ベルの甘茶サウンドを再現したエイドリアンに応えるように、ウィリアムが狂おしいファルセットで歌い上げる作品で、“Stop And Look(And You Have Found Love)” などはフィリー時代の傑作群と比べても遜色ない。 *林

 

GHOSTFACE KILLAH Twelve Reasons To Die Soul Temple(2013)

ウータン・クランきってのソウルフル野郎をB級ホラー風味のサウンドで演出し、エイドリアンの名をカルトから外に広げた名作。スタックス系のネタを多用していた初期RZAの作法を、うら寂しい鍵盤を強調したヴェニス・ドーンの演奏で再現するという、多層構造のオマージュが主役の話芸を不穏に輝かせる。ウー軍団の面々やウィリアム・ハートも好演。 *出嶌

 

SOULS OF MISCHIEF There Is Only Now Linear Labs/BBQ(2013)

西海岸のヴェテランを迎えたリニア・ラブスの第1弾。94年のオークランドを舞台にした映画的な作りの内容になっていて、スヌープバスタ・ライムズスキャラブアリ・シャヒードらが各々の配役で登場する。60~70年代ソウルの空気感を帯びたエイドリアン・サウンドも物語を織り成すもの。なお、アリによるリミックス盤も10インチとカセットテープで出された。 *出嶌

 

VARIOUS ARTISTS Linear Labs: Los Angeles Linear Labs(2015)

リニア・ラブスで新装リリースしたワックス・ポエティックス時代の音源も含む過去のエイドリアン作品から、満遍なくトラックを抜粋したショウケース的なコンピ。メランコリックな生音の響きを活かした苦いサウンドという軸はどの曲にも共通するものだ。先行曲が予告編として収録されているアリ・シャヒードとのコラボ作『The Midnight Hour』はまだ出ていない。 *出嶌

 

BILAL In Another Life eOne(2015)

バンド・サウンドをメインとしたシュールで退廃美漂う怪作を出してきたフィリーのシンガーがエイドリアンと結び付くのも必然だった。エイドリアンの架空サントラ曲“Sirens”のヴォーカル版“Sirens II”で幕を開ける本作での相性の良さは抜群、というか、それはそのままビラルの個性でもある。ラウンジーなジャズ風の“I Really Don't Care”も両者の趣味が絶妙に合体。 *林

 

GHOSTFACE KILLAH Twelve Reasons To Die II Linear Labs(2015)

レヴェレーションズバッドバッドノットグッドとのコラボを経験したGFKがエイドリアンと再合体。ハモンドやローズなどをあしらった視覚的な音像はそのままに、前作よりもソリッドなドラムの強度を増した印象で、ヒップホップ的な機能美も磨かれている。5曲で助演したレイクォンをはじめ、後見人でもあるRZAヴィンス・ステイプルズらゲストも豪華に。 *出嶌

※連載〈IN THE SHADOW OF SOUL〉第90回の記事一覧はこちら