『頂き物』以前に発揮されてきた歌い手としての魅力

 極めて高い評価を得た2010年の『JAPANESE POP』以降、作品の純度をいっそう高めながらコンスタントに良品を送り出してきた安藤裕子。基本的には自身の作詞/作曲によるナンバーを、デビュー時からの縁となる山本隆二の編曲を中心に、宮川弾ベニー・シングスらも招きながら送り出してきたが、近年でも白根賢一GREAT 3)が『勘違い』(2012年)と続く『グッド・バイ』(2013年)に曲を書いたり、『あなたが寝てる間に』(2015年)に末光篤による“クリスマスの夜に”があったように、彼女は必ずしも完全な自作自演に固執してきた人ではない。そもそもクレジットのないCMソングで注目を集めた安藤だけに、その最大の魅力を歌声だと捉えてきた人は多いはずだ。

2012年作『勘違い』収録曲“鬼”
2013年作『グッド・バイ』収録曲“ようこそここへ”
2015年作『あなたが寝てる間に』収録曲“人魚姫”

 

 ちなみにそうした美点は、2004年からシングルのカップリングなどで取り上げてきたカヴァー群を束ねた『大人のまじめなカバーシリーズ』(2011年)にも顕著だったし、昨年の松本隆トリビュート盤『風街であひませう』に提供したC-C-Bの“ないものねだりのI Want You”も抜群だった。最新シングル“360°サラウンド”でも“うしろゆびさされ組”をパワフルに披露していただけに、まじめなシリーズ第2集にも期待したくなるところだ。 *轟ひろみ

2011年作『大人のまじめなカバーシリーズ』収録曲“林檎殺人事件”