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『Off The Wall』の余波
生楽器を中心にした70年代のレコーディング作法に則りながら、野心的にリズムのフュージョンを繰り広げて80年代への入口を見つけ出した『Off The Wall』。チャートやセールス的な評価もありつつ、作品の出来映えそのものが同業者たちを大いに刺激したのだろう、そこに参加していたソングライターやミュージシャンたちには新たなステップが用意されることとなったのだった。
『Off The Wall』から満を持して御大が仕上げたポップなリーダー作で、パティ・オースティンとジェイムズ・イングラムの歌を中心に恒例のミュージシャン軍団が集っている。表題曲にはマイケルも参加しているが、世界的なヒットになったのはチャス・ジャンケル曲をディスコ・カヴァーした“Ai No Corrida”だった。
チャカ・カーンを擁するファンク・バンドがクインシー軍団に制作を仰いだ転機の一作。並走して録音されていた『Off The Wall』とは演奏メンバーの相互乗り入れもあって、兄弟作品のように捉えられる部分も多い。“Do You Love What You Feel”がR&Bチャート1位を獲得してクインシーの勢いを見せつけた。
ちょうどこちらの〈処女航海〉が久々にリイシューされるこの鍵盤奏者は、ジャクソンズ時代から後年に至るまでマイケルと関わりが深かった最重要プレイヤーのひとり。都会的に歌うフュージョン佳品となった本作はもちろん、マイケルやジャッキー・ジャクソンのサポートを得た次作『Pulse』(85年)も必聴だ。
後に“You Are My Life”(2001年)を共作もする売れっ子ソングライターの人気作で、マイケルは“It's The Falling In Love”のお礼に“Just Friends”で声を重ねている(バート・バカラックと共同制作も)。デヴィッド・フォスターやジェリー・ヘイも交えた出来映えは『Off The Wall』のAORサイドのようだ。
コンテンポラリーな仕事ではEW&F方面での活躍が目立っていた西海岸きっての多才な鍵盤奏者。キーボードで“Off The Wall”と“Girlfriend”に貢献した後はよりブラコン的なフュージョン作風に傾注し、本作ではルイス・ジョンソンやジェリー・ヘイらを従えて我流のダンサブルな常識破りに挑んでみせた。
グラミー結果はともかく『Off The Wall』がこの70年代の王者をビビらせたのは明白だった。絶頂期を支えたトム・トム84からホーン・アレンジを完全にジェリー・ヘイ体制に切り替えて空間デザインを一新。マイケルっぽさを狙った(?)パーカッシヴな“I've Had Enough”はグレッグ・フィリンゲインズとの共作だ。
マイケルの『Off The Wall』に提供したものの先にウイングス版で出ることになった“Girlfriend”を含む『London Town』(78年)も、『Off The Wall』と同年にウイングスで放ったラヴリーなディスコ・チューン“Good Night Tonight”も入手困難につき……マイケルとの蜜月を象徴する本作をひとまず紹介しときます。
LAの男女デュオがボビー・ワトソン制作で出した80+81年作。ルイス・ジョンソンにジョン・ロビンソン、ベンジャミン・ライトやジェリー・ヘイらが背後を固めた作りは典型的な『Off The Wall』以降の躍動感だ。ジャネットの処女作をコンビでプロデュースした後、レネ・ムーアはマイケルの“Jam”などに関与。