――事前の心配はなんだったのかというくらい、やりやすい状況で迎えられたんですね。
コヤマ「そうですね。もう歓声が凄かったんですよ。ソウルでスルタンと2マンをやった時は、400人くらい来ていてソールドアウト。俺らのSEが鳴った瞬間にワー!って歓声があがって、〈オイ、どうなってんだ!?〉って(笑)」
――まさかの(笑)。
マツキ「日本でもあんまりないんで」
――アハハ、またまた。
コヤマ「〈スゲーな!〉ってなりましたよ」
――スルタンのファンはもちろんですけど、やっぱりスクービーのことを知っている人も結構いらっしゃったんじゃないですか?
マツキ「あ、いましたね」
コヤマ「チェジュ島では写真をすごい撮ってる男性がいて、その人から〈僕は2002年にもうSCOOBIE DOを知っていて、それからずっとファンだよ〉と言われました。チェジュ島に(スクービーが)来るのを何日か前に知って、〈マジか!〉ってなって、今日家族で来たんだ、みたいな」
――家族で! やっぱりそういう人もいるんですね。
コヤマ「嬉しかった」
――一方でスルタン・オブ・ザ・ディスコは海外公演の経験が豊富だと思うんですが、海外でのライヴで雰囲気に驚いたりしたことはありますか?
ナジャム「韓国で単独公演をやる時は、もちろん自分たちのことを知っているお客さんがほとんどなので、一緒に歌ったり、僕らと同じ振りで踊ってくれたりとか、ある程度予想している反応が返ってきますが、例えば韓国のイヴェントなどに出て、僕たちのことをあまり知らない人たちの前でライヴをする時は、熱狂的な反応というのではなく、ちょっと楽しそうな顔をしてくれたりして、だいたい楽しんでいるな……みたいな、そういう雰囲気になることが多いですね。
でも2014年にUKの〈グラストンベリー〉に出演した時は、観にきているお客さんたちは当然僕たちについて一切予備知識がない状態なんだけど、ライヴが始まるやいなや、物凄く熱狂的な反応が返ってきたんです。曲も知らないはずなのに、一緒になってガンガン歌ったり踊ったりしてくれて。フェスの現場は転換もあるので時間的な制限がより厳しいはずなんだけど、お客さんが〈One more song! One more song!〉と声をあげてくれて、結局アンコールまでやることになったんです。その時はめちゃくちゃ楽しかった」
――私は2014年の〈サマソニ〉でスルタンのライヴを初めて観て、ライヴが始まってすぐは人もまばらだったのが、終わる頃には大盛況でしたね。通りすがりの人も思わず足を止めてしまうパフォーマンスのインパクトは群を抜いていたと思います。
ナジャム「あの時は運も良かったんですよ。ちょうどメイン・ステージの転換タイミングだったから、人が流れてきて(笑)」
一同「ハハハハ」
コヤマ「運も実力のうち(笑)」
――でも足を止めてくれるかどうかは、パフォーマンス次第ですからね! ところで、スルタンの音楽はシックやクール&ザ・ギャングといった70年代のファンクがベースにあると思うんですが、そこに韓国のポップ・ミュージックらしい要素が合わさって独特のサウンドになっているところが独特だなと思います。ご自身ではそういったサウンドを意識的に作っているんですか?
ナジャム「本当は思いっきりルーツに忠実な、オーセンティックなファンクをやりたくて、作っている時もそうしようとしているんです。でも、どうしても韓国人としての要素が出てしまうんですよ。それを否定してるわけではないんですが……」
――無意識的に出てしまうと。
ナジャム「それはそれで良いことだとは思っていますけどね」
――本当にそうだと思います。スクービーは逆に意識的に日本で鳴らすロックンロールを意識して作ってらっしゃいますが、スルタンの音楽を聴いてどういう印象を持たれましたか?
マツキ「僕もまったく同じように感じていて、〈ディスコ〉という言葉のイメージだけで言うと、いまの時代だと古臭かったり、ちょっとギャグっぽいイメージがあったりするじゃないですか。だけど、スルタンはディスコ、ディスコ・ファンクと謳っているけど、ベタベタなディスコじゃないんですよね。韓国へ行った時も呑みながら話したんですけど、メイヤー・ホーソーンやベニー・シングスといった、いわゆるソウル・ミュージックを通過しながらも、自分のフィルターを通して現代のポップスとして鳴らしているアーティストと同列、その韓国代表じゃないかなと思うくらい素晴らしい作曲/アレンジ能力があると思います。ナジャムは歌がめちゃくちゃ上手いし」
コヤマ「めっちゃイイ声してる」
ナジャム「初めてヴォーカルを褒められました」
コヤマ「ホントに!?」
マツキ「めっちゃ上手いよ」
ジ「バンドを始めた時は、ウチの社長さん※が〈ヴォーカル、チェンジしよ〉って」
※スルタン・オブ・ザ・ディスコの所属レーベル、ブンガ・ブンガ・レコードの社長
一同「ハハハハハハ(笑)」
ジ「そう(社長は)言ってたんですけど、メンバーたちが〈ちょっと待って待って〉って……こうなりました」
マツキ「がんばったんだな(笑)。(歌の)練習したの?」
ナジャム「実力はだいぶ上げました」
コヤマ「社長怖いね」
ジ「社長、コワイデス」
マツキ「だから意識せずに出ちゃう韓国ポップスの感覚っていうのが、実は現代的なんじゃないかなと思って。ライヴを観た時もすごく良いと思ったんだけど、その後に彼らのアルバムを聴いたら、より良かったんですよね。これを好きな人は世界中に絶対いるはずだと思いました」
コヤマ「いわゆる〈リヴァイバル・バンド〉といったものではなくて、いま鳴らすソウル・ミュージックになっているんですよね。ソウル・ミュージックが好きで突き詰めてやっていくと、最近は宅録的になっていくものも多い気がするんだけど、でもスルタンはバンドだし、ライヴではお客さんと楽しもうというスタイルでやっている。そもそもソウル・ミュージックはお客さんとのコミュニケーション、コール・アンド・レスポンスみたいなものがあったけど、いまは音楽性の部分での影響はあっても、ライヴをそういう形でやっている人たちは少ないんじゃないかな。でも彼らは同じ振り付けで踊ってみたり、おもしろい話をMCでしているんです。(韓国語だから)俺はひとつもわからないんだけど、みんな笑ってる(笑)」