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BiSHサウンドに感受性が応答する理由

 パンクやメタルコアなど広い意味での国内外ラウド系サウンドとJ-Pop感覚を巧みに接合した、松隈ケンタのプロデュースするBiSHサウンドのクォリティーについてはいまさら言うまでもない。さらに今回のメジャー・デビュー・シングルでは、セックス・ピストルズのリマスターなどを手掛けるメトロポリス・マスタリングの元締ティム・ヤングに委ね、ある種のお墨付きを得てもいる。が、それでも“DEADMAN”を聴いてファストコアな諸々より先にブルーハーツの“ダンス・ナンバー”(90秒弱!)あたりを思い出してしまうのは、BiSHの楽曲が結成時から纏ってきたフィーリングゆえだろう。

セックス・ピストルズの77年作『Never Mind the Bollocks Here's the Sex Pistols』収録曲“God Save The Queen”

 eastern youthのモロなオマージュがあったり、THE STALINをSEで用いていた点からもわかるように、BiSHの楽曲は一貫して〈日本のロック〉〈日本語パンク〉をストレートに表現することに意識的である。そこから窺えるのは、人間臭いエモーションを引き出す機能や、その親しみやすさ/間口の広さへの意識だ。マニアックなパスティーシュや翻訳ぶりも〈アイドル音楽〉のおもしろさの一つだが、少なくともBiSHの志向はそこにないのだろう。〈楽器を持たないパンクバンド〉なるキャッチも、単にエクストリームなイメージだけの話ではないのだ……たぶん。

eastern youthのベスト・アルバム『1996-2001』収録曲“夜明けの歌”、2014年のライヴ映像