いまも綿々と受け継がれる〈UK叙情派ロック〉の心

 トラヴィスをはじめ、コールドプレイミューズなど、メランコリックな美メロを立たせたギター・ロック・バンドが頭角を現し、〈UK叙情派ロック〉なる潮流が生まれたのは、90年代終わりから2000年代初頭にかけてのことだ。その後、2000年代半ばに突入して以降も、スターセイラースノウ・パトロールキーンといったグループが彼らの後を追いかけ、次々とブレイク。そうした動きと同調するようにUSでもエモい歌が支持され、フレイスウィッチフットメイレイらがシーンの最前線に躍り出てきた。この延長上でイマジン・ドラゴンX・アンバサダーズを紹介するのも、あながち的外れではないだろう。

キーンの2004年作『Hopes And Fears』収録曲“Somewhere Only We Know”のパフォーマンス映像
 

 それはさておき、ブリティッシュ・ロック界に話を戻すと、キャットフィッシュ・アンド・ザ・ボトルメン(間もなくリリースされる2作目も楽しみ!)やコーダラインの登場によって、〈叙情派ロック〉の流れはいま新たな盛り上がりを見せようとしている。新人離れしたスケール感を湛えるナッシング・バット・シーヴス、むせび泣くようなヴォーカルが特徴的なアンバー・ランほか、過去1年間も注目株が目白押しだったことは、あえて強調するまでもないか。

ナッシング・バット・シーヴスの2015年作『Nothing But Thieves』収録曲“Excuse Me”
 

 余談だが、トラッドな匂いも漂うアコースティック・サウンドを野暮ったさゼロで聴かせる、いわゆる〈トラヴィス節〉だったり、2001年作『The Invisible Band』で打ち出した〈演奏者のキャラクターじゃなく、音楽の質そのもので勝負する!〉といった哲学が、デビュー作『+』の頃のエド・シーランを筆頭に、ホージアージェイムズ・ベイら、現在のUKシーンで猛威を振るうシンガー・ソングライター勢へと受け継がれているような気がして……、そう感じているのはおそらく筆者だけじゃないはず。デビュー20周年目を迎えたいまなお、トラヴィスの影響力が弱まる気配は見られない。 *山口智男

エド・シーランの2011年作『+』収録曲“The A Team”