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野性と知性を併せ持った『Fauve』のなかに渦巻く、さまざまな音楽の片鱗
生演奏のダイナミズムと打ち込みのクールネスを両立させた『Fauve』を聴いてまず思い浮かんだのは、金子本人もフェイヴァリットのひとつと語るナイン・インチ・ネイルズ。静謐さのなかに激情を忍ばせたインスト曲はトレント・レズナーのサントラ仕事にも通じるし、何より作品全体から発せられる気高き野性は両雄に共通するものだろう。
さらに曲単位で目を向けると、神秘的に加工された歌声が自然の厳しくも雄大な景色を想起させる“Take me home”には、アウスゲイルやイマジン・ドラゴンズらと同様のスケール感があるし、そこにダンス・ミュージックの熱狂も加えた“Lobo”の昂揚感に、BOOM BOOM SATELLITESやプロディジーを結び付けることも可能だ。
そして幽玄なフォーク調から一転、シューゲイズなギターと煌びやかなシンセが恍惚の光景を生む“The Sun”は、モグワイからエクスプロージョンズ・イン・ザ・スカイにまで連なる轟音ポスト・ロックの系譜を思わせたり。
また、“Icecold”での生音ドラムンベースとも言うべき怒涛のドラム・プレイからは、ヴェネチアン・スネアズを愛聴しているという金子のブレイクコア好きな一面も覗く。その他にも彼は最近のお気に入りとして、仏のエレクトロ・ポップ・デュオ=ドーのアルバムを挙げており、同作に見られる匂い立つように美しいメロディーと冷ややかなエレクトロニクスとの融合は、そのまま『Fauve』の特色と言えるかもしれない。 *北野 創