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SINGING WINDS, CRYING BEASTS
カルロスを支えた歴代の才能豊かなプレイヤーを紹介!

 サンタナを最高のラテン・ロック・バンドたらしめるもの。それはカルロスのエロティックな魅力溢れるギターと、ダイナミックなビートの有機的な融合にあり。つまり、打楽器奏者はこのグループの花形と言えよう。なかでも真っ先に浮かぶメンバーが、ホセ“チェピート”アリアス。“Se A Cabo”(70年)での野性味たっぷりなティンパレスとか、〈土砂降り〉という形容しか思いつかない。そして72年から長きに渡って在籍したアルマンド・ペラーサも重要人物だ。モンゴ・サンタマリアにも認められたこのコンガ奏者は、キューバン・サルサの熱気をバンドに伝授。彼を中心にサンタナのリズム隊が集ったR.O.A.R.作品も、ぜひ一度聴いてみてほしい。

70年作『Abraxas』収録曲“Se A Cabo”
 

 そして、初期4作で強力なラテン・グルーヴを生んだコークとピートのエスコヴェード兄弟も忘れちゃいけない。彼らは脱退後の72年にアステカを結成し、古巣よりも洗練度の高いラテン・ロックを奏でている。そうそう、72年にカルロスとの連名作『Live!』を発表したバディ・マイルスにも触れねば。ジミ・ヘンドリックスのバックを経て、サンタナではドラマーとしてだけでなく、歌い手としても活躍。リード・ヴォーカルを取った87年作『Freedom』は、バディの独壇場とも言える一枚だ。

87年作『Freedom』収録曲“Love Is You”
 

 ベーシストで外せないのは、鈴木茂の75年作『BAND WAGON』でも知られるダグ・ローチ。スラップ奏法を得意とするこの男なくして、72年作『Caravanserai』などでのファンク曲は成立し得なかったんじゃないか。さらに、カルロスのフュージョン志向を煽った元ウェザー・リポートアルフォンソ・ジョンソンの名も、ここに書き加えておきたい。

72年作『Caravanserai』収録曲“Stone Flower”
 

 その他のパートについては、〈哀愁のヨーロッパ〉(76年)ほか数々のヒット曲を書いたトム・コスター(キーボード)、リズミカルな鍵盤プレイで83年から25年以上もカルロスを支えた元タワー・オブ・パワーチェスター・トンプソンファラオ・サンダース作品への客演で名を上げたレオン・トーマス(ヴォーカル)……と枚挙に暇がないが、やはり『Santana IV』の立役者、グレッグ・ローリー(キーボード)とニール・ショーン(ギター)の話はしておくべきだろう。創設メンバーのグレッグはハードなハモンドや渋い歌声を持ち味とした、まさに初期サンタナ作品の〈顔〉。そして71年加入のニールは、当時17歳という若さならではのガッツでロックな勢いをグループにもたらしたプレイヤーである。〈彼とカルロスとのツイン・ギター体制こそ最強!〉なんて声も少なくない。なお、グレッグとニールは73年にジャーニーを結成。精神世界を彷徨うカルロスを横目にキャッチーで風通しの良い音を追求し、大ブレイクするのであった。 *桑原シロー

ジャーニーの80年作『Departure』収録曲“Walk Like A Lady”