CAR10
メロディーの美しさがさらに開花。深いリヴァーブに光を見い出したローファイ・パンクでシーンの台風の目になりつつある3人組!

 

 2016年の現在、日本では何度目かの盛り上がりを見せているパンク。各所でたくさんの潮流が生まれており、なかでも安孫子真哉(元・銀杏BOYZ)率いるKiliKiliVilla周辺は新しい刺激に事欠かない。そして、NOT WONKと共に同レーベルの台風の目と言えるのが、栃木は足利を拠点とする3人組のCAR10だ。

 結成は2008年。メロコアに憧れ、活動初期こそ激ジャンクなファスト・チューン一辺倒だった彼らだが、リヴァーブ深めのローファイ・サウンドに光を見い出した2012年頃からは、パンクを下地にパワー・ポップやサイケなどの様相も呈しはじめる。インディー・ロック畑の支持を得たここ2年ほどで、その疾走感と煌めきは徐々に確固たる自信へ結び付いていったのだと思う。当の本人たちが〈好きなことをやっているだけ〉って感じなのがまたイイ! CAR10の最大の魅力は、そんなオルタナティヴなスタンスだ。〈シーン〉なんて堅苦しい考えがなく、場所にも縛られず、内輪な活動でもない。自分たちが惹かれるアーティストを地元に呼んだり、逆に誘われたらどこへでも飛び込んでいったりしながら、苦労を重ねつつもピュアにワイワイやってきた。肩を組める友達を少しずつ増やして。

CAR10 Best Space. EP KiliKiliVilla(2016)

 上記を踏まえて、新曲“Best Space”の青くキラキラしたシャウト、ギターの歪みに耳を傾けてほしい。特に声。雄叫びとため息が混じったような高音/低音の揺らぎ、その起伏には喜怒哀楽が詰まっていて、一瞬でピュアな気持ちを聴き手に思い出させてくれる。こらえ切れずに溢れてしまった涙にも近く、新たな扉を開いた産声とも取れそう。いずれにしろ、“海物語”(初出は2012年に発表されたPSYKICK UNDERAGEとのスプリット。その後、2014年作『Everything Starts From This Town』にも収録)あたりで芽生えたメロディーの美しさがいよいよ開花! また、今作は日本語詞が全体的に増えた。スカ調のリズムを採り入れた“ミルクティー”では、変わっていく喜びを歌っていたりもして素敵。『C16』を作るなら、CAR10は外せません!* 田山雄士