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いまはブラック・ミュージックの解釈が昔よりポップ(mabanua)

――mabanuaさんと類家さんは、もう古くからのお知り合いなわけですよね?

類家「そうですね。池袋のマイルス・カフェ(現SOMETHIN’ Jazz Club)ってところでよくジャム・セッションをやってて……2003年、2004年くらいかな」

mabanua「第一次レイドバック・ブームみたいな(笑)」

類家「ロイ・ハーグローヴ・ブームのときですよね、RHファクターの全盛期。昔からジャズのセッションはジャズ・クラブでやってたんですけど、それとはまた違う、グルーヴ系のジャム・セッションを渋谷とかでよくやってたんです」

ロイ・ハーグローヴ率いるRHファクターの2003年作『Hard Groove』収録曲“Hardgroove”

mabanua「Ovallのアルバムでも吹いてもらいましたしね。類家さんはジャズもいけるし、ビート・ミュージックもいけるし、なおかつイケメンじゃないですか。当時から〈非の打ちどころがない人〉というイメージで、〈トランペットをお願いするなら類家さん〉っていう感じでした。最近だと藤原さくらちゃんのアルバムにも参加してもらったり

※2016年作『good morning』(レヴューはこちら)でmabanuaは2曲をプロデュース

――ちなみに、LUCKY TAPESはロイ・ハーグローヴが活躍した2000年前後のネオ・ソウルはどの程度通っていますか?

田口恵人(ベース)「RHファクターは好きですね。ただ、ネットで検索して、〈かっけー〉と思って聴いてる感じなので、時代背景とかはあんまりわかんないです」

健介「僕もそうですね。アーティスト単体では聴いてるんですけど、〈他にもこういうバンドがいて、当時流行ってた〉みたいな、文化を味わった感じではないというか」

類家「じゃあ、青春時代に何を一番聴いてました? いまが青春真っ只中だと思うけど(笑)」

田口「アシッド・ジャズがすごく好きで、ジャミロクワイやインコグニートをコピーしてました」

ジャミロクワイの96年作『Travelling Without Moving』収録曲“Virtual Insanity”

mabanua「うちらがロイ・ハーグローヴやディアンジェロを聴いてたときって、インコグニートとか〈一つ前の(世代の)人たち〉って感じでしたよね?」

類家「そうだよね。ジャミロクワイもそうだった」

mabanua「当時はディアンジェロが好きな友達に〈ジャミロクワイを聴いてる〉と言ったら、〈懐かしいね〉って言われる感じだったけど、そこがまた一周したってことなのかな?」

――ジャミロクワイやインコグニートもLUCKY TAPESからすればリアルタイムじゃないから、RHファクター同様にピンポイントで聴いてる感じだと思うんですよね。ただ、いまのブラック・ミュージックのブームっていうのは、2000年前後のネオ・ソウルのブームから15年が経過して一周したような印象を受けます。

類家「対馬(芳昭)さんもそんなことを言ってました。当時はジャム・バンドが流行っていて、メデスキ(・マーティン&ウッド)、レタス、ソウライヴとか、グルーヴの上でジャズっぽいことをやるのが新しかったときがあって、最近はわりとそういう人たちがまたバンド単位で出てきてる感じはちょっとありますよね」

※mabanuaが所属するorigami PRODUCTIONSの代表

――mabanuaさんはAwesome City Clubや思い出野郎Aチームのような若いバンドとも関わっていますし、日本におけるブームの空気を肌で感じているのではないでしょうか?

mabanua「いま日本で流行っているブラック・ミュージック(の解釈)は、当時よりポップな気がします。RHファクターやディアンジェロはもうちょっとドロドロしてたというか、もっとテンポが遅い感じだったけど、最近はもうちょっとスタイリッシュで、それこそアシッド・ジャズに近い感じなのかなって。いまのブームでブラック・ミュージックに興味を持った人が掘り下げて、RHファクターとかディアンジェロに行き着いてくれたら、すごく嬉しいですね」

mabanuaがプロデュースしたAwesome City Clubの2016年作『Awesome City Tracks 3』収録曲“Vampire”