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誰よりも僕たちが自由に振る舞うことで、楽曲も自由になったらいい

――実際に出来上がった、デジタルに還元できない、数値に還元できないサウンドに軸を置いたレコードという意味で、同じフォルダに入れられるような同時代的作品、もしくは、既存の作品の名前を挙げることはできますか。実際、いい意味で、かなり奇妙なレコードなんだけど(笑)。

「それに関しては本当にわからないですね。難しい(笑)。普通そこは混ぜないだろうということも混ぜちゃった気がするし。レコーディングしている最中はブライアン・イーノや、クリスのソロ・アルバム(2015年作『Tape Loops』)を聴いていて。このアルバムを録り終わったあとは、自分のソロでもノイズがすごく楽しくなっちゃったり、そういう変化はあったけど。ただ結果としては、まったく流行ってもいないようなものを作ったなという実感もあって(笑)」

クリス・ウォラの2015年作『Tape Loops』収録曲“I Believe In The Night”
 
ブライアン・イーノの78年作『Music For Airports』収録曲“1/1”
 

――そうかもしれない(笑)。

「自分のスケベ心に沿っていくなら、もう少しファンク寄りなものとか、音数の少ないもので、歌が立っているものとか、それこそ若い子たちがやっているような音楽への目配せがあってもいいと思うんですよ。だって、アジカンですら、USインディーへの目配せがあったわけで。でも今回は、まったく関係ないところで何かを作ったなという感じ(笑)」

――実際のところ、この新作に歴史的な横軸と同時代的な縦軸、それぞれの文脈を引くのはすごく難しい。

「だから、どういうものが出来上がったのか、自分でも何だかよくわからないところがあるんですよね。音楽以外のものから引っ張ってきているところもあるし。(新作のCDを手に取って)例えば、このジャケットは生け花なんですけど、普段は能楽というか、能にまつわる音楽とセッションする形でお花を生けたり、そういうことをしている人たちに作ってもらったものなんです。既存の音楽作品というよりはむしろ、そういう日本的なメンタリティーとの繋がりのほうが大きいのかもしれない、と思っていて。例えば、尺八の倍音みたいな平均律で捉えられないものについて、それをそのまま受け止めるやり方というか。複雑なものを複雑なまま捉えるやり方というか」

――なるほど。そういう視点が、デジタルな数値に還元できないノイズやアンビエンスを軸に置いたプロダクションとシンクロしてるのかもしれない、という実感がある?

「たぶん、禅や大乗仏教とか、そのあたりにまつわる能だとか、そういうものと関係性はあるんだなと思ったりしてるんです」

――音楽的な参照点が最初にあったというよりは、そういった〈現実をどう切り取るか?〉という視点そのものが全体をたぐり寄せていった?

「でも、自分ではこの因果関係を、どんなにがんばってフォーカスしようとしても、相応しい言語が出てこないんですよ(笑)。だから、これから何年かかけて本を読んだり、いろいろなところに行ったりして、文章や言葉にするなり、新しい音楽にするなりしなくてはいけない。そういう感じなんです(笑)」

華道家の辻雄貴が手掛けた『Good New Times』のアートワーク
 

――当初はソングライティングの広がりに統一感を与えるため、という発想で始まったアンビエンスの使い方だったり、揺らぎや数値化できないものに向かうという具体的な方向性が、一枚レコードを作ることで、後藤くんやバンドのなかで、何かしらポジティヴな意味での問題意識を解きほぐしていく課題として大きく浮上していった?

「そうですね。いま長々と話してしまったのは、自分の本能的なもの、文化とか、文脈に対する〈探究しなさい〉という一つのきっかけというかトリガーについての話ではあるんですけど。でも、バンドとしては……〈最近、やる場所なくね?〉という(笑)」

――それ、フェスとか、対バンとかの話(笑)?

「そうですね。いわゆるJ-Rockのフェスとは完全にノリが違うので。だから、なんというか……〈これどう?〉みたいな(笑)。でも、〈こういう音楽があたりまえになったら良くない? それをどうやってやるかだよね〉という話はよくしていて。(Gotchバンドには)手を真っ直ぐに振り上げたりするような曲がないので」

――ないよね。

「じゃあ、どうしようか、と。最近、僕もこのバンドだと、ピン・ヴォーカルになることがあるので、一生懸命自分の思うまま踊っているんですけど、そういうところから始めるしかないような気もしてるんですよね。誰よりも僕たちが自由に振る舞うことで、楽曲も自由になったらいいよね、みたいな。自分たちがすごく自由なものを作ったから、そうじゃないところ、(J-Rock系フェスの)マス・ゲーム的なところとか、スクエアなところがすごく気になっちゃう。でも、それを解きほぐしたいよね、という気持ちは(アルバムを)作ってみて、強まった部分はあるかもしれない。自分たちで作ったものはまさにそうだから。イントロでも間奏でも好きなだけやれる楽曲が多いんですよね。僕が歌い出してから2番、みたいなこともできるし」

――はいはい。

「それこそ、ライヴの現場でも、俺が歌い忘れているのに、みんなずっと演奏していて。メンバーが俺のことを見て笑ってるから〈あ、2番だった!〉みたいな(笑)。すっごく音に没頭しちゃうんですよ。でも、このバンドなら鳴らしていい場所というか、バンドもオーディエンスも両方幸せな気持ちで共有できる場所が増えていくのが、世の中にとっても素敵なことなんじゃないかなと思ったりしてるんですよね」

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SUMMER SONIC 2016
2016年8月20日(土) 大阪・舞洲サマーソニック特設会場
※大阪公演のみの出演
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Gotch & The Good New Times Tour 2016 “Good New Times”
2016年9月6日(火)東京・渋谷CLUB QUATTRO
2016年9月8日(木)大阪・梅田 CLUB QUATTRO
2016年9月13日(火)宮城・仙台 Rensa
2016年9月16日(金) 福岡・DRUM LOGOS
2016年9月17日(土) 広島・CLUB QUATTRO
2016年9月20日(火) 石川・金沢 EIGHT HALL
2016年9月21日(水) 愛知・名古屋 CLUB QUATTRO
2016年9月23日(金) 北海道・札幌 PENNY LANE 24
2016年9月27日(火) 大阪・BIG CAT
2016年9月29日(木) 東京・渋谷 TSUTAYA O-EAST
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