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いま聴いておくべきネクスト・ブレイクな次世代トラックメイカーを紹介!

世帯別に見ると地球人口の約7割が所有するPCの圧倒的な普及率を背景に、近年音楽シーンに続々と登場するDTM系のトラックメイカーたち。なかには自宅PCのフリー・ソフトやスマートフォンのアプリをきっかけに楽曲制作を始めたアーティストも存在するなど、新たな音楽制作のスタンダードとして若者を中心に認知を拡大している。それはここ日本も同じ。2010年代に入ると、日本のネット・レーベルの草分け的な存在であるMaltine周辺からtofubeats、SeihoとAvec AvecによるSugar's Campaign、banvoxらが舞台をメジャーへと移し、PARKGOLFがSeiho主宰のDay Tripperからアルバムを発表すると、2016年にはPa's Lam Systemもメジャー・デビュー。さらに近年では、Maltineをお手本にレーベルを立ち上げたというTREKKIE TRAXが海外での動きを活発化させ、独自の路線を開拓している。ここでは、そんな面々の活躍に続くであろう注目の若手アーティストを紹介したい。

 

Pa's Lam System

Maltineからリリースを重ね、その名を知らしめたアノニマスな3人組トラックメイカー集団。作品ごとに多様なビートを展開しているが、近年はフューチャー・ベースをアップリフティングにカスタマイズしたような、高密度かつド派手なスタイルを強く打ち出している。ポップなアプローチも魅力的で、特に2014年に配信リリースしたバレアリックなヴォーカル・トラック“I'm Coming”は海外のメディアやDJにも波及するクロスオーヴァーな人気を得た。2016年にはアグレッシヴ&アーバンな表題曲などを収めた配信EP『TWISTSTEP』でメジャー・デビュー。この環境を得た彼らが2017年、何をカマしてくれるのかに注目したい。 *澤田

 

Hyper Juice

fazerockharaによるデュオ・ユニット。2014年に発表したPa's Lam SystemとのスプリットEP『Hypa'slam EP』とデビューEP『TRAPPIN RIDDIM』ではベース・ミュージックのルーディーなグルーヴを追求していたが、翌2015年の初フィジカル作『Lights』では、EVO+Jinmenusagiをフィーチャーしたメロウ・チューン“City Lights”でメロディアスなスタイルを提示。同曲は、ダンス・ミュージック・フリーク以外の層にも彼らの名を届ける契機となった。2016年には、ダンスホール・ベースとでも言うべきHABANERO POSSEとのコラボ曲“Fiyahhhh”を発表。そろそろまとまったヴォリュームの作品を届けてほしいところだが……ドープにもポップにも行ける彼らの次なる一手は? *澤田

 

Qrion

高校時代にSenSeより2枚のEPを配信し、シーンに登場した女性プロデューサー。エレクトロニカやジェイムズ・ブレイクハウ・トゥ・ドレス・ウェルあたりを彷彿とさせるメランコリックなサウンドを紡ぎ、2014年にアイ・アム・ロボット・アンド・プラウドがリミックスで参加したミニ・アルバム『sink』と、ライアン・ヘムズワースとの共作曲“Every Square Inch”を発表。これらが国内外で大きな反響を呼び、海外でライヴ活動を展開する布石となった。2015年には初のフィジカル作『Q』をリリースしたほか、サカナクション泉まくらなど多数のリミックスも手掛けている。彼女は現在、活動拠点をサンフランシスコに移しており、次作はかの地から届けられることだろう。 *澤田

Qrion『sink』収録曲“nothing”

 

Carpainter

TREKKIE TRAXの主宰の一人であり、このレーベルを代表するトラックメイカー。90sレイヴや現行のベース・ミュージックを消化したビートにデトロイト・テクノ経由のウワモノを絡めた、ロマンティックな楽曲群をウェブを通じて送り出し、2015年には初のフィジカル作『Out Of Resistance』を発表。2016年にはフィンランドのトップ・ビリンからもEPをリリースし、〈BOILER ROOM〉にも登場するなど海外からの支持も厚い。また、東京女子流Yun*chiといったポップ・アクトのリミックスも手掛けており、三浦大知の最新シングル“EXCITE”では作曲を担当(オリコン週間シングル・ランキングで1位を獲得!)。メジャーなフィールドでのさらなる活躍も期待できそうだ。 *澤田

【参考記事】
★TREKKIE TRAXの勢いは止まらない! US侵攻、アジア開拓……規模を拡大して成長続けるレーベルのこれまでとこれから

★TREKKIE TRAXが踏み出したジャパニーズ・ダンス・シーンにとっての大きな一歩、熱狂と感動に溢れた初USツアーをレポ!

 Carpainterの2016年のEP『Noble Arts』

 

Masayoshi Iimori

2015年にTREKKIE TRAXより初のEP『Break It EP』をリリース。ベース・ミュージックを軸にしつつ、破壊力抜群の無礼講ビートを轟かせるのが彼の個性で、とりわけブートレグなリミックス音源がスクリレックスなど数多のビッグネームDJの称賛を獲得する。初EPを発表した直後に〈ULTRA JAPAN〉のステージに立ち、2016年にはスクリレックスの主宰するネストHQより“WhirlWind”を発表した。また、根本凪虹のコンキスタドール)を迎えた三毛猫ホームレスとの共作曲“America”やDOTAMAのベスト盤収録ナンバー“本音”のプロデュースを手掛けるなど、ジャンルを跨いだコラボでも目覚ましい活躍を見せている。EDM文脈でのどデカいブレイクも全然あり得そう。 *澤田

 MASAYOSHI IIMORIの2017年のEP『TAP EP』

 

Yunomi

一度聴いたら忘れられない和テイストのシンセ・リフや物語性の高い歌詞で人気を集める北海道出身のトラックメイカー。2015年にシンガーのnicamoqを招いた“ゆのみっくにお茶して”などが(イラストレイターのきあとによるジャケも含めて)Soundcloud上で話題を呼び、同年末にはMaltineからプロデューサーのAiobahnとのコラボで“枕元にゴースト”を発表。続く“銀河鉄道のペンギン”はネストHQでも紹介された。若手アイドル・グループのハッピーくるくる天晴れ!原宿といった面々への楽曲提供も行うほか、2016年にはクラムボンミトが監修した花澤香菜のベスト盤にリミキサーとして参加。チップチューン・アーティストのTRIENAを迎えた2枚目のCD作品『大江戸コントローラーEP』を発表したばかり。 *杉山

 

Snail's House

フューチャー・ベースにkawaii要素を加えた〈kawaii future base〉の第一人者として知られ、18歳でTREKKIE TRAXから発表した『Kirara EP』(2015年)も話題になった東京のUjico*によるプロジェクト。高い技術を駆使してハウス、ドラムンベース、ベッドルーム・エレクトロニカなどを行き来する幅広い音楽性で、KONAMIの「Beatmania IIDX 24 SINOBUZ」などゲーム作品に楽曲を提供しているほか、☆Taku Takahashi主宰のネット・ラジオ=block.fmでも注目の若手として紹介されている。中田ヤスタカkzlivetune)、tofubeatsら極上のメロディーが書けるトラックメイカーの系譜に連なる若手だ。 *杉山

 

Relect

2012年に15歳で作曲を始め、横浜~東京を中心に活動するDJ/トラックメイカー。活動開始から間もなくアーケイド用音楽ゲームに楽曲が採用されるなど、当初から話題性の高い彼は、banvoxにも通じるメロディー・センスをハードコア・レイヴのビートと融合させたスケール感のあるサウンドが特徴で、2014年にはPa’s Lam Systemらもリリース経験があるLAのアタック・ザ・ミュージックから『Chasing The Day EP』を発表している。2016年には米シカゴで開催された〈アニメ・セントラル〉に出演。アタック・ザ・ミュージックでのレーベルメイトでもあるビートメイカー・KO3とのコンビでも活動している。 *杉山

 

YUC'e

作詞/作曲/編曲からミックスまでみずから手掛ける、東京を拠点に活動する女性トラックメイカー/シンガー。フューチャー・ベースやグリッチ・ホップを基調にした楽曲と鼻にかかったキュートな歌声が話題となり、2016年の“Future Cαndy”で一気に認知を拡大した。トラックのクォリティーはもちろんだが、BABYMETAL作品でも知られるボカロP・ゆよゆっぺの別名義=DJ'TEKINA//SOMETHINGのアルバムにヴォーカリストとして参加したりなど、曲ごとに表情を変える歌声も素晴らしい。みずからステージでマイクを取る姿にはポップ・シンガーとしてのポテンシャルを感じる。 *杉山

 

青田買いならcommune310を押さえておくべき!

都内を中心に活動するトラックメイカー/DJのbassmicrobeと、アニクラ系のイラストなどを手掛けるroonyanが始めたレーベル/プロジェクト=commune310。2015年の同人イヴェント〈M3秋〉で初作を発表して以降、数々のコンピを通じてSnail’s HouseやYunomiといった10代~20代の若手トラックメイカーをフックアップ。2016年のStereoman & Yunomiによる“シンデレラベイビー”やKOTONOHOUSE“sea grapes”、KOTONOHOUSEが男女DJユニット・MentalMilkぜらと共作した“eat dream”などはレーベルの認知を拡げるきっかけとなった。音楽性はフューチャー・ベースやドラムンベース、ハウス、エレクトロニカ、ヒップホップなど多岐に渡るものの、共通するのはアニメ・カルチャーとの親和性。最先端のビート・ミュージックとアニメなどジャパン・カルチャーとの魅力的なハイブリッドを聴かせてくれる。 *杉山

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