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ここ最近の中田裕二、その〈シンガー魂〉に火をつけてきたもの

 中田自身が案じる「〈何の人〉なのかっていうことがみんなにちゃんと伝わってるだろうか」ということについては、少なくとも、彼が懐かしの歌謡曲や邦楽ポップスのニュアンスを単に模倣する――〈お若いのによくご存知ですね〉とでも言われそうな類の――ただ歌の上手いお兄さんではないことぐらいは伝わっているはずかと。ヴィンテージな邦楽に影響を受けながら、それ特有の言葉、メロディー、サウンド、ムードなどを丹念にチョイスしながら自身の音楽のなかで機能させ、リヴァイヴァルとはハッキリと異なる作品を仕立ててきた彼。作品を重ねるごとに増してきたその説得力はキャリアの厚み=thicknessとなり……と、そんな彼が、近年刺激をもらっているのは、主に海外のアーティスト。とくに、サム・スミス、リオン・ブリッジズ、ゲイリー・クラークJr、ブルーノ・マーズなど、それぞれソウル、リズム&ブルース、ドゥワップ、ブルース、ファンクなどヴィンテージな音楽を背景に置くアーティストたち。自身と同世代ということ、そしてサウンドのみならず熱量の高い〈シンガー〉としての部分にもシンパシーを感じていて、アルバム制作の意気込みにも大いに反映されたようです。ちなみに、「久々に8ビートをやった」という“リビルド”は、ポリスあたりのビート感もイメージしたらしく……そう聞いて思い出したのが、スティングの最新作。リード曲“I Can't Stop Thinking About You”で久々に8ビートやってますから。

文中に登場したアーティストの作品を紹介。