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舞曲やリズムに焦点を当てる今年のテーマにあわせ、ジャズ作曲家の挾間美帆が初登場!

 クラシックを出自に持つジャズ作曲の挾間が2017年にニューヨークのシティ・バレエのプリマドンナであるアシュリー・ボーダー率いるダンサーたちのために書いたビッグバンド用のバレエ組曲“The DANCE”をシエナ・ウィンド・オーケストラのために新たに編曲し直した吹奏楽版を日本で初演する。

 「まず、私が世界中のトラディショナルなダンスとそのダンスのための音楽をいくつかリストアップして、その中からアシュリーが4つ選びました。それをそのまま使わずに要素を抽出して、それをインスピレーションの一部として活用して、アシュリーがダンスを、私が音楽を作りました。例えば、“Warrior”はアフリカのマサイ族の踊りがインスピレーションとなりました。ジャンプのコンテストなので踊りというよりジャンプしているだけみたいな感じで、音楽はメロディもなくて、太鼓だけ。かなり限られた要素しかないものなんですけど、それを私は勇ましくて緊張感があるバトルっぽい音楽にしました。“Harvest”では韓国の楊口郡の収穫祭の音楽。コード進行を分析したら、普段の私は絶対に使わない、新鮮なものだったんですけど、それが意外とジャズにぴったりだったんです」

 そんなやり方で作り上げたビッグバンドを演奏したのはジェイソン・リグビーやアラン・ファーバーなどNY屈指のジャズミュージシャンたちによるビッグバンドだった。それを日本ではクラシックのミュージシャンたちの吹奏楽団にために書き換える。クラシック出身のジャズ作曲家の腕の見せ所だ。

 「吹奏楽にドラマーを入れるということが好きではないので、ドラマーは入れません。NYでドラマーがやっていたことを、日本ではパーカッション6人がかりでやってもらいます。6人併せてドラマーの音にする感じです。クラシックの中の打楽器の役割はグルーヴだけじゃなくて、そのオーケストラを引き締める役割なので、そんな演奏もしてもらおうと思っています。あと、ビッグバンドの時はジャズミュージシャンに合わせて即興部分をかなり用意したんですけど、それをどういう風に処理するかですよね」(interview & text:柳樂光隆)

 


PROFILE: 挾間美帆
1986年生まれ。国立音楽大学(クラシック作曲専攻)在学中より作編曲活動を行ない、これまでに山下洋輔、モルゴーア・クァルテット、東京フィルハーモニー交響楽団、シエナ・ウインド・オーケストラなどに作曲作品を提供。また、坂本龍一、鷺巣詩郎、ヴィンス・メンドーサ、メトロポールオーケストラ、NHK「歌謡チャリティコンサート」など多岐にわたり編曲作品を提供。ニューヨーク・ジャズハーモニックのアシスタント・アーティスティック・ディレクター就任など、国内外を問わず幅広く活動。2012年、マンハッタン音楽院大学院(ジャズ作曲専攻)への留学を経て、メジャーデビュー・アルバム『ジャー ニー・トゥ・ジャーニー』(ユニバーサル)リリースによりジャズ作曲家として世界デビューを果たす。2016年米ダウンビート誌にて〈ジャズの未来を担う25人〉にアジア人としてただひとり選出される。

 


LIVE INFORMATION
公演番号:142
2017年5月4日(木・祝)11:45~12:45 HallC(バランシン)
シエナ・ウインド・オーケストラ/挾間美帆(指揮)* 組曲“The DANCE”(日本初演) ほか