Page 2 / 4 1ページ目から読む

すみだトリフォニーホールとともに歩んできた、20年――

 「一緒に音楽をやろう!」1972年、指揮者・小澤征爾のもと、オーナーを持たない、楽員による自主運営のオーケストラとして創立された。創立当初は“ヒゲの指揮者”山本直純が活躍し、ポップス・コンサートやテレビ番組「オーケストラがやって来た」などで人気を博した。

 1975年、初代音楽監督に弱冠25歳の小泉和裕が就任、1983年には第2代音楽監督に36歳の井上道義が就任するなど、若手の才能ある指揮者を積極的に登用。同時に、朝比奈隆、シモン・ゴールドベルク、ムスティスラフ・ロストロポーヴィチなど国内外の巨匠が招かれ、小澤征爾とは幾度もの海外公演を成功させるなど、オーケストラとしての礎が築かれた。

 1997年より墨田区に本拠地を移転、日本でも有数の音響効果を誇る「すみだトリフォニーホール」で日常の練習と公演という日本初の本格的フランチャイズを導入。本拠地をもったことによる音楽面その他でのプラス・アルファは計り知れず、同時に地元の学校、各種施設での地域に根ざした演奏活動を開始した。

 2003年には32歳のウィーンの指揮者クリスティアン・アルミンクが第3代音楽監督に就任。意欲的なプログラミングは常に大きな話題を呼び、2006年『火刑台上のジャンヌ・ダルク』で第3回三菱信託音楽賞奨励賞受賞、2009年『七つの封印を有する書』で第18回三菱UFJ信託音楽賞を受賞した。2010~2016年はダニエル・ハーディングが“Music Partner of NJP”を務めたが、東日本大震災当日に105人の聴衆の前に決行されたマーラー:交響曲第5番は、後にドキュメンタリー番組となるなど大きな反響を呼んだ。

 2016年9月よりドイツの歌劇場で研鑽を積んだ指揮者・上岡敏之が第4代音楽監督に就任。「後に残る、考えさせられる、みなさんが色々な思いを託せるプログラム」、「楽譜に虚心に向かい合って、音楽の中身を一丸となって伝える」(2017/2018シーズン・プログラム発表記者会見より)という取り組みに期待が集まっている。
[text:板倉重雄]

 

上岡敏之,新日本フィルハーモニー交響楽団 R.シュトラウス:交響詩《ツァラトゥストラはかく語りき》、交響詩《英雄の生涯》 EXTON(2017)

2016年9月ライヴ。「トラディション的な演奏はしない」と明言する上岡が、両作品に纏わりついていた「ハリウッド音楽的」な解釈を払拭し、作品に内在する後期ロマン派的な情感や官能性を見事に引き出した演奏。

 

上岡敏之,新日本フィルハーモニー交響楽団 マーラー:交響曲第1番《巨人》 EXTON(2016)

2016年3月ライヴ。とらわれのない楽譜の読みが、この名作の新たな美を次々に解き明かしてゆく、聴いていてワクワクするような演奏。弦のグリッサンドの処理など衝撃的だが、複雑な味わいに病みつきになること必至!

 

GERHARD BOSSE,新日本フィルハーモニー交響楽団 ベートーヴェン:交響曲第5番、モーツァルト:同第39番、ほか ALTUS(2012)

2010年4月、2011年5月ライヴ。1990年以来、ボッセは度々新日本フィルに登場し、質実剛健、かつ細部まで目配りの行き届いた名演を聴かせた。探究心と好奇心を終生失わなかった巨匠による晴朗な音楽世界が感動的だ。