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バンドとDTMを融合させる日本最高峰・80KIDZ、初のライヴ編成に挑むTAAR

TAAR「僕の印象では、〈8Oシリーズ〉に関してはドラム・マシーンをずっと走らせて、その上で何かを作っていった雰囲気を感じたんです。80KIDZって、メロディーや展開の入り方からDTM上で編集していく感じがあったんですけど、今回はそことの棲み分けを強く感じたし、だからこそ、すごく良いと思った。今はやろうと思えば、どんなふうにでもできるけど、〈制限することも表現すること〉ですよね。これは黒澤明の言葉なんですけど(笑)。80KIDZは決められた画角に押し込める表現方法もできるということをあらためて感じさせてもらった一枚でした」

JUN「実際のやり方は違うけど、感覚としてはそういうことかもね。でもTAARはアルバムのコンセプトを最初とか製作の最中に考えるじゃん? 僕らはあんまり考えないから」

TAAR「でも2人とも長くやっているからバランスを無意識的に取れていると思うし、僕はコンセプトを毎回アルバム単位で決めてやっているけど、80KIDZはアーティストとしてやりぬいている気がする。だから、(どの作品でも)ちゃんと80KIDZになっている」

ALI&「TAARの『Astronotes in Disco』では制限を設けたの?」

TAAR「いや全然ないかな。辻褄が合えば良いやみたいな感じ(笑)」

――コンセプトとしてではなくとも、例えば、TAARさんが東京・渋谷のクラブ、SOUND MUSEUM VISIONで開催しているイヴェント〈MODERN DISCO〉からのフィードバックなどはアルバムに反映されているんですか?

TAAR「もちろん。あの規模のパーティーを作ったことはそれまでなかったし、やっぱり自分が曲を作るときに、〈あのフロアでこれが鳴ったら、こういう反応だろう〉という物差しとして最初に浮かぶのが〈MODERN DISCO〉ですね。でも、〈MODERN DISCO〉自体は音楽のジャンルを指してないんですよ。僕だけじゃなく、(レジデントDJの)YOSAや箱の人みんなの〈MODERN DISCO〉観がありますし。僕から強いて言うなら〈BPMは遅いほうがいい〉ってことくらい。ベストは115ぐらいで、115以下だったらいくつでもいいな」

ALI&「『Astronotes in Disco』でいうと“Come Together”くらい?」

TAAR「あの曲のBPMは、82だから遅すぎるかな。“Come Together”は〈MODERN DISCO〉でやっている遅いダンス・ミュージックとしての遅さじゃなくて、Yogee New WavesとかD.A.N.っぽい遅さだと思うんですよ」

――iriさんの歌声ありきでアプローチした結果ということですよね。6月には『Come Together Remixes』としてシングル・カットされましたが、各リミックスの印象はいかがでしたか?

TAAR「80KIDZのリミックスに関しては流石としか言いようがない。TAARの曲を80KIDZがリミックスしたらこうなるだろうという予想を、さらに超えてきてくれた感じ。これに関してはJUNくんからアプローチをいただいたんですよ」

JUN「良い曲だから僕らのセットに組み込みたかったんだけど、オリジナルではクラブで使うには遅すぎるなって」

ALI&「俺が1回ageHaで原曲をかけたら、JUNくんからむっちゃ睨まれた(笑)」

JUN「〈このあと、どうしたらいいんだよ〉ってね(笑)。でも、このiriちゃんってシンガー、すごくいいじゃないですか」

iriの2017年のシングル“Watashi”
 

ALI&「今回のリミックス、みんなヴォーカルを綺麗に全部使っているね。1組ぐらいエディットしてもいいと思うのに、それはiriちゃんの力がそうさせたんだろうね。メロディーやヴォーカルが良くなかったら、好きなように切ったり並び替えたりとか考えるはずだけど、そうしていないもんね。だから、TAARは良い曲を作ったってことだよ! リミキサー全員がBメロとかまで使っているでしょ?」

TAAR「僕の作る歌メロはBメロがサビっぽくなるんですよ。サビはフックとして、ただ耳に残ればいいと思って作っているし、僕のダンス・ミュージックにおけるメロディーの捉え方はそうだから。サビはフックで、フックは循環なんです。循環にしておくと他のリフとの噛み合わせがいいんですよ」

――TAARさんのセルフ・リミックスで少しフロア向けですよね。

TAAR「リミックスなんだけど、ビート・ジャックして、今回はラップで新しくストーリーを乗せました。もちろん自分のDJセットに組み込めたらいいな、というのもあった。元ネタは、DEX PISTOLSが彼らの“HOUSE IN MY HOUSE”をセルフでマッシュアップした“NEW JACK HOUSE”で、前からその手法をやってみたいなと思っていたんです。詞に関してはNOSEさんじゃないとわからない部分はあるけど、オリジナルを作っていたときから、曲のイメージを相談していた相手だったので、もとの歌詞に対して寄せてくれたストーリーで、アンサーソングでありつつ、新しい物語にもなっている。あと、手法的には後半でスウィングさせたりと、いろいろとアイデアも入れていて、コード感はiriちゃんっぽい感じにさらに寄せています」

――そして、なかでも毛色が違うのが、PAELLASのヴォーカルMATTONさんとOmitというユニットで活動しているShin Sakiuraさんのリミックスです。これは、原曲に忠実なアレンジになりましたね。

TAAR「リミックスというよりリアレンジに近いかも。オリジナルですと言われてもわからないくらいの完成度ですね」

JUN「これ、今っぽいよね。Suchmosあたりに近い」

TAAR「たまたまShinくんが出るパーティーに行ったら、僕がPAELLASのリミックスをしていたのもあって、〈実はMATTONと曲を作っているんです〉と話しかけてくれて。曲をSoundCloudで聴いたら良かったのでお願いしました。このリミックスは、アルバムが宇宙的だから、もう少し都市的な、地上で感じられる宇宙みたいものを表現したかったと彼は言っていましたね」

――PEALLASを介して2人が繋がったっていうエピソードがしっくりくる仕上がりですね。では、最後にWリリース・パーティーに向けて意気込みを教えてください。

ALI&「TAARは初めてライヴ・セットをやるんですよ」

TAAR「そうです。普段のDJでは自分の曲はほぼかけないので、ライヴではちゃんとアルバムの世界観を構築していこうと思っています」

――アルバム制作中からバンドとしてアウトプットすることは考えていたんですか?

TAAR「今回のアルバムを作る前に、バンドを意識して作った楽曲を別でアルバム1枚分ぐらい作っていたんですよ。でも、結局なんか違うなと思って。それから考えをシフトして制作をし、今回のアルバムが出来たんです。だから、バンドとしてアウトプットすることはほぼ考えてなかったですね」

ALI&「でもTAARはもともとバンドをしていた人だし、DJとライヴは別物という感覚を持っているんですよ」

TAAR「そう。バンドをやっていたし、まったく別だと思っています。そこに関しては、80KIDZの2人を観て、〈自分もやりたいな〉とずっと思っていたし、ライヴをやりたくてPARKに入った面もあるので。今回は3人編成ですけど、今後は規模や思考で編成は流動的に変わっていくと思う。あと、PCライヴにするのはイヤだったんですよ。(生演奏の)ライヴじゃないとハプニングがないと思うので、そういう肉体感をどこに持っていくかを大事に思っています。もともと作っている音楽は生じゃないから、そこの矛盾はあるんですけど、それをどう解決していくかが大前提としてありました」

ALI&「作っている音楽は生じゃないけど、ライヴくらいは生でしたいってことだよね」

TAAR「そう。でも正直、バンドにしておけばライヴになるとも思わなくて、僕のなかではまだライヴに関しては固まり切ってないです。むしろ、アルバムを出しているんだし、〈それを聴けば良いじゃん? なんでライヴでやるの?〉と思う日もあるし……」

ALI&「(あしらうように)はいはい。僕ら80KIDZはこの日、〈8Oシリーズ〉の曲をメインにやります。あと今回は映像のディレクションもして、がっちり音とリンクさせる感じでがんばっているので、ここでセットが一度新しくなると思います」

JUN「今回はツーマンだけどワンマンみたいな気持ちでやれるよね。自主イヴェントだし」

TAAR「僕にとっては初ライヴなのに、バンドとDTMを融合させたライヴを10年もやっている日本のトップ・クリエイターと対バンさせられるんですよ? いきなりトップと対バンさせられる僕の心中も察してほしいです(笑)。でも、記念すべき最初のライヴで80KIDZとやれるのは光栄だし、Wリリパという形で同じ土俵で戦わせてもらえるのは嬉しい」

ALI&「絶対ホームだと思うから大丈夫だよ!」

 


Live Information
"80KIDZ/TAAR 〈『80:XX – 05060708』『Astronotes in Disco』 W RELEASE LIVE〉

2017年6月25日(日)東京・渋谷/代官山SPADE ODD
出演:80KIDZ、TAAR
開場/開演:17:00 /18:00
料金:3,500円 (1D別)
イープラス
ローソンチケット Lコード:71248
チケットぴあ Pコード:331-678
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