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アルバムの全曲再現ライヴから透けて見える送り手側の思い

 今年の〈グラストンベリー〉でレディオヘッドが97年作『OK Computer』を丸ごと演奏するのでは?と、開催直前までネット上がザワついていましたが(残念ながら実現しなかったですけど……)、思い返してみると、フェスの目玉として、あるいはリリースからの周年を飾る企画として、名盤の再現ライヴが年々増えているように感じます。例えば〈サマソニ〉や〈フジロック〉ではメタリカや佐野元春、マニック・ストリート・プリーチャーズらがそれを行っていますし、いま現在もU2による『Joshua Tree』の30周年を記念した世界ツアーの真っ最中ですよね。

 そうした特別なショウが、音盤や映像作品を通じて追体験できるのは嬉しい限り。過去に舞台上で演奏されたことのない“Slip Inside This House”を含むプライマル・スクリームの『Screamadelica』公演や、初めてLP4枚分の全曲をセットリストに組み込んだザ・フーの『Tommy』など、再現性の高さに重きを置く例もあれば、2012年から4年間かけて最新のエフェクターや3D映像と共にカタログ8作品を順に生披露したクラフトワーク、サニーデイ・サービスを従えて71年作『満足できるかな』に新たなアレンジを加えた遠藤賢司ほか、現代的な視点から再解釈を試みるケースもあり、一言で〈アルバムの再現ライヴ〉といってもやり方はそれぞれ。いずれにせよ、名盤を曲順通り演奏するステージとそのパッケージ化が増加している背景には、〈曲単位じゃなくアルバム全体を楽しんでもらいたい〉という送り手側の思いも少なからず関係しているような気がして。そんなわけで、受け手の私たちはこれらの作品とじっくり対峙することでその思いに応えたいものです。 *山西絵美

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