新作での変化の真っ当さを裏付ける、リヴァース・クオモの多彩な仕事

 〈チャレンジ〉と〈原点回帰〉の繰り返しはコア層の間で賛否両論になるようだが、一歩引いたところからウィーザーを眺めれば、彼らが人脈や方向性を多様に広げる行為はごく自然なことのように思える。その大きな理由となるのが、バンド外におけるリヴァースの多彩な活躍だ。今年に入ってからだけでも、彼はAJRの“Sober Up”やRACの“I Still Wanna Know”に客演。前者はメガネ君も含むNYの3兄弟で、後者は10代の頃にウィーザーに夢中だったというだけあってギター・ソロも委ねている。いずれもその存在をエモーションの象徴として機能させており、実際にEDMブーム以降のダンス音楽の青春ポップ化に彼の歌唱がハマるのは確かだろう。

 その流れに先鞭を付けたのが「ウィーザーは高校時代の俺のヒーローで、『Pinkerton』はいまでも俺にとってベスト10アルバムの一枚だ」(bounce 342号より)と語るスティーヴ・アオキで、“Earthquakey People”(2012年)で初コラボしてからは“Light Years”(2015年)でも手を組んでいる。一見ミスマッチな意外性に反して楽曲での座りは非常にいいため、この界隈においての需要は今後も増していきそうだ。一方、リヴァースがソングライターとして関わっている楽曲も、近年ではパニック! アット・ザ・ディスコやチャーリーXCX、マクバステッド、オール・タイム・ロウなど幅広く、そうした状況を前提とすれば、『Pacific Daydream』でバンドが選んだ変化も当然のように思えてくるのではないだろうか。 *轟ひろみ