Page 2 / 2 1ページ目から読む

 前作と同じく、『Tribalistas』の収録曲は、アコースティック・ギターとパーカッションを軸とした小編成のアンサンブルで奏でられていて、アルバム全体は気心の知れた3人のコラボレーションならではの心地好いヴァイヴに満ちあふれている。もともとトリバリスタスは、何か新しい音楽ムーヴメントを興すことを目的に結成されたグループではなく、前作でもお互いを尊重し、なおかつ触発しながら音楽作りに取り組んでいた。そうした自然体に基づくトライアングルの関係は、少しも変わっていない。ただし、今回はポルトガルの新しい仲間を迎えていることも含めて、間口がより広がった感じで、ポピュラリティーが増している。

 全10曲はすべて3人の共作、もしくは他のミュージシャンも加えた共作である。各曲は、3人の個性が縒り合わされた糸で紡ぎ上げられた音の織物、とでも言おうか。生地の色や素材、柄は多彩だが、どれも普遍的で美しく、それでいて現代性も忍ばせたデザインになっている。だからオルタナティヴなMPBとして、金メダルに値する。

 


Tribalistas(トリバリスタス)
リオデジャネイロ出身でラテン・グラミーも受賞の女性歌手マリーザ・モンチ、元チタンスのアルナルド・アントゥネス、カエターノ・ヴェローゾのバック・バンドにパーカッショニストとして参加し、ソングライター/制作者としても活躍するカルリーニョス・ブラウンの3人からなるユニット。2002年、ファースト・アルバム『トリバリスタス』が大ヒット。再結成を待ち望む人の熱は冷めやらず、2017年8月に15年ぶりとなる新作CD、DVDを発表。

 


寄稿者プロフィール
渡辺亨(Toru Watanabe)

音楽評論家。雑誌等での執筆活動に加えて、NHK-FM「世界の快適音楽セレクション」の選曲と構成をレギュラーで担当および自己のコーナーに出演。著書に「音楽の架け橋 快適音楽ディスコガイド」(シンコーミュージック)、「プリファブ・スプラウトの音楽 永遠のポップ・ミュージックを求めて」(DU BOOKS)。今年も毎年恒例のトーク・イベントを、愛知・名古屋Out Record(2017年10月12日)と岐阜市のsongs(2017年10月13日)で開催予定。
Twitter:https://twitter.com/watanabe19toru