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他の奴らとは違う

 本アルバム『GENESIS』はまるで映画のオープニングのように壮大なイントロで幕を開ける。その後に続く“Murasaki”は、〈お前とは違う〉と勢い良く繰り返すフックが印象的だ。これまでにEPを3作リリースしてきたkiLLaだが、そのメッセージは時に排他的でもあり、一貫して〈自分たちの個性的な部分を撒き散らし、セルフ・ボーストすること〉に尽きる。今回のアルバムを通しても、その主張はブレないままだ。〈そこにこだわる理由とは?〉と尋ねると、同じように一貫した答えが返ってきた。

 「リスナーに何も伝わってないんです。だから、俺たちもずっとラップで〈俺たちは他の奴らとは違う〉って、そればっかり言ってる。ライヴでもビデオとかでも、結構、自分たちの理想の反応とは違う反応を(リスナーから)もらうことが多いので。他のトピックを聴きたいって意見もわかるんですけど、まずはそこが伝わって解決しないと、前に進まないから」。

 kiLLaなりのフィロソフィーといったところだろうか。ただ、その自信がkiLLaならではの刹那的なアティチュードに繋がっていることは、誰も否定できないだろう。アルバムには“Like This”“Whole Lotta Gang”など、悪びれずにクルーのボーストに終始する楽曲が多い。「今回のアルバムは、自分たちのタイミングとやり方で、自分たちがやりたいことだけやる、という作品にしたかった」と、意図的な様子を見せた。「周りに合わせるのは簡単だけど、あえてそれはしない」のが、kiLLa流の美学とも言える。

 これまでのEP群でも十分に純度の高いヴァイブスを作品に落とし込んできたkiLLaだが、改めて発表するアルバム作品として意識の違いなどはあった?

 「アルバムを作るとなって、ビートは自分たちだけで完結すると決めて、ちゃんと作品っぽくしなきゃと考えながら作ることに苦労しました」。

 イントロから最後の“Nakama”“Ue Ni Iku”まで、メリハリの効いた個性豊かな楽曲が並ぶ。「去年、IDKのアルバムを聴いて、〈アルバムを通して聴く〉ってことの意味が初めてわかったんです。その楽しさも表現したいなと思って作り上げました。とりあえずビートを作って、ラッパーのメンバーに渡して。ある程度、俺とacuteparanoiaで〈この曲は誰と誰にやってほしい〉ってイメージをつけてみんなに話すんです。あとはラッパーたちが話して、制作を進めてもらう。達成感? めちゃくちゃありますね。タイトルも、みんなで最後の段階で決めたんです」。

 〈創世記〉を表す単語をタイトルに冠した、kiLLaのデビュー・アルバム。渋谷の街から海外へと、自分たちの世界観、そして〈伝えたいこと〉をまっすぐに、かつボーダレスに繋ぐ作品に仕上がっている。個性的なメンバーの実力が発揮されるのは、まさにこれからだ。