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リスナーとしての4人は、最近どんな音楽を聴いているの?

 2018年の新たなポップ・スタンダードを切り拓くべく音と言葉を紡ぎ出すPAELLAS。日本の音楽シーンの最前線において、高感度なアンテナを張り巡らせている彼ららしく、ベーシストのbisshiが愛聴しているのは、チャンス・ザ・ラッパー率いるセイヴマネー・クルーにトラックを提供し、ヒップホップとインディー・ロックの垣根を軽々と越えてみせるノックス・フォーチュンだ。

 「ノックス・フォーチュンはシカゴ出身のプロデューサーなんですけど、テンポやローファイな音の質感の時代錯誤なところが今っぽくて、特にMVが作られた“Lil Thing”が特に好きですね」(bisshi)。

 一方、Ryosuke Takahashiは、クラムス・カジノやソンの作品に歌い手/共作者として参加しているシカゴのシンガー・ソングライター、サム・デューの『Damn Sue』をセレクト。ドラマー視点は横に置き、歌モノを好んで聴いているそう。

 「メロディーにブルース感覚を織り込んだサム・デューは、モーゼズ・サムニーやガラントにも通じるところがありますね。僕は音楽を専門的な耳で聴きたくなくて、自分のパートであるドラムに意識が向かないメロディーや歌が強い音楽しか聴かないんです」(Takahashi)。

 MATTON、Satoshi Ananも自分の担当パートとは距離を置いて音楽と付き合っているという。

 「僕もここ最近は歌モノをまったく聴かず、耳にするのはインスト作品ばかり。5月の来日公演にはなんとしてでも行こうと思っているニルス・フラームの新作とか、その前はヴァンゲリスとハンス・ジマーが手掛けた映画〈ブレード・ランナー〉の新旧サントラをずっと聴いていましたね。でも、歌モノをあまりに聴かなすぎるのもどうかと思って、今まで距離を置いていたポリスの作品から自分の好きな曲をセレクトしたパーソナル・ベストを聴いたりしています」(MATTON)。

 「僕はアンビエントの文脈でよく知られているアメリカのアーティスト、ララージをよく聴いてます。アンビエントと言いつつ、歌も入っているし、アリエル・ピンクに通じるローファイなポップさもあるんですよね。僕もここ最近は音楽を聴くと、どうしても作家的な耳になってしまうので、そういう聴き方をしないように、特に意味を持たないローファイでふわふわした作品を好んで聴いています」(Anan)。

 そんな4人のチョイスに共通するのは、PAELLASと同様、じっくり向き合えるリスニング指向の作品であるということ。

 「PAELLASは、結局のところ浸るように聴ける音楽が好きなんでしょうね。音楽を聴く時は独りですから、そういう時に僕らの場合はアガる音楽を選ばないということです」(Takahashi)。

 「でも、僕はつい数か月前、ジュークやジャングルを聴きながらシャワーを浴びるのにハマってたけど」(Anan)。

 「(笑)それどうなの?」(MATTON)。

 「シャワーを浴びる時って急いでるから、そういう音楽を聴いてるといい感じで急ぎたくなるんだよね」(Anan)。

 「俺、風呂はゆっくり入りたいからそれは無理だな(笑)」(bisshi)。

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