私たちはいつもゴールデン

 “Dancing”以外の曲に関しても、アメリカーナ的なフレイヴァーが散りばめられているものの、決して説教じみたり、ジメジメ重苦しくならないのは、彼女流のポップソングに対する強いこだわりがあってのことだろう。アルバム全体を彩るアコースティック・ギターやバンジョー、ぺダル・スティールといった生楽器の音色が何とも軽やかで華やか。いつものカイリーのゴージャスなエレクトロニック系とはひと味違う、活き活きした快活なサウンドがカラフルに弾けている。

 表題曲“Golden”には、こちらもテイラー・スウィフトの初期コラボレーターであるリズ・ローズが共作者としてサポート。ヒルビリーなムードを湛えたこのナンバーのなかで、カイリーは〈私たちはゴールデン、星のように燃えている/黄金の輝きをいつまでも決して諦めない/それが私たちの声/叩きのめされたらまた立ち上がる〉と自信に満ちた美声を響き渡らせる。これをアルバムのタイトルに持ってきた理由について、本人はこう説明している。

 「私たちは、他の何者にもなれない。いまの自分より若くも年上にもなれない。私たちは私たちの年齢でしかいられない。それが〈私たちはゴールデン〉という意味よ。アルバムのタイトルは、そういったすべてを反映しているの。すべての人が皆それぞれゴールデンであり、自分の道を明るく照らしている――そういう考え方が私はとっても好き。人生を歩んでいる限り、私たちはいつもゴールデンなのよ」。

 2016年末、カイリーはLAのハリウッド・ボウルでドリー・パートンのライヴを初めて鑑賞したという。目から鱗な体験だったそうで、そんな刺激をいまも素直に受けられているのだから素晴らしい。今年5月には50歳を迎えるが、決してチャレンジの手綱を緩めないどころか、心機一転気分に溢れる彼女。今後もこのカントリー路線を続けるのかどうかは不明ながら、カイリーのコレクションにまたひとつ新たな魅力が付け加わったのは間違いない。こんなステキなイメチェンなら大いに歓迎だ。 *村上ひさし

関連盤を紹介。

 

『Golden』に客演したジャック・セイヴォレッティの2017年作『Songs From Different Times』(De Angelis)