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何かを感じたら、それをやらなきゃいけないんだと思う

――“someday”では鉛筆で何かを書く音が入っていますが、ああいった環境音やフィールド・レコーディングを作品に入れるのは、butajiさんという作家の特徴ではないかと思います。それによってストーリーテリングや情景描写的な側面が強くなっています。

「アルバムの流れというか、全体を通して何が最後に浮かび上がってくるのかというのを強く意識しているんですよね。“someday”ではパーソナルな側面、内面的なところを強調したかったので、実際に鉛筆で歌詞を書いている音を入れています。

手紙を書いているイメージでしたね。鉛筆の音を入れるアイデアについて違和感はなくて。例えば、〈楽音〉と〈騒音〉と分けたりしますけど、僕はそういう音を取り入れることにまったく抵抗がないんです」

――そういう音を入れたくなる理由はなんだと思います?

「やっぱり……音楽的ではないのかもしれない。〈物語〉〈ストーリー〉なのかもしれないですね。〈何が音楽なのか?〉って考えたことがあるんですけど、その線引きってとても難しいんですよね。音楽とそうでない音とを切り離せる場所が曖昧だということを認識したうえで、いろいろな音を取り入れることをよしとしているんだと思います。

例えば、8曲目の“予感”の最後には足音を入れています。ひとりで歩いていく、その孤独感を表現するためにあの音を入れることにためらいはなかった。〈良い感じじゃない?〉みたいな(笑)」

――なるほど。

「その〈良いかも、これ〉っていう予感を説明する術はないんですよ――説明すると消えてしまうものだから。何かを感じたら、それをやらなきゃいけないんだと思う。そこに合理性があるかどうかはわからないんですよ」

――直感的にそういう音を入れているんですか?

「“someday”は直感的に入れましたね」

 

〈わからない〉っていうものを作りたかった

「でも、このアルバムには、いろいろな面がありますよね。僕が解き明かすことができないような、深い何かがあるのかもしれない」

――そう思える作品を作ったということは、すごいことだと思うんです。ご自身でもいまだにわからないところが残っているんですか?

「やっぱり“EYES”ですね。この曲はAIを搭載したドローンが人の立ち入れない場所に入っていって、その景色を人間に見せるっていうイメージで。人間がモノそのものをそのまま見るっていうことは、とても難しいんですよね」

――常に何かしらのバイアスやフィルターがかかってしまいますよね。

「そう。だから、それを機械に教えてもらうっていう。アルバムを通して聴くと、“予感”で何か結論が出たのかなと思うんです。でも、その後に“EYES”があることで結論が揺らぐというか……。

僕が僕自身に対して何か明確な答えを持っているわけじゃないんですよ。だから、〈わからない〉っていうものを作りたかった。それはとても大変な作業でしたね(笑)。わからないことを〈わからないです〉って言うことって大変なんです」

――そうでしょうね。

「どうやって進んでいったらいいのか、どうやって暮らしていったらいいのかがわからないし……。その〈わからなさ〉は、他人と共有できるんじゃないかと思ったんですよね」

 


LIVE INFORMATION
butaji『告白』リリースパーティー

2018年8月29日(水) 東京・渋谷 TSUTAYA O-nest
開場/開演:18:30/19:30
出演:butaji
バンド・メンバー:樺山太地(ギター/Taiko Super Kicks)/山本慶幸(ベース/トリプルファイヤー)/坂口光央(キーボード)/岸田佳也(ドラムス)
ゲスト:七尾旅人
前売り/当日:3,000円/3,500円(ドリンク代別)
チケットぴあ Pコード:118-896/ローソンチケット Lコード:76243
e+:http://sort.eplus.jp/sys/T1U14P0010843P006001P002261742P0030001

butaji『告白』リリースツアー ~弾き語り編~
2018年9月22日(土) 石川・金沢 メロメロポッチ
2018年9月24日(月・祝) 大阪 HOPKEN
2018年9月30日(日) 名古屋・金山 ブラジルコーヒー
2018年10月6日(土)福岡 cafe and bar gigi