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離婚されちゃう!

――ソロ・ワークや他のバンドを掛け持ちする活動スタイルは、クラクラにとっては普通のことなのでしょうか? 先ほどのお話のように深夜に作業するのは大変そうですが。

小田実は、深夜作業は通常営業なので余裕なんですが(笑)、色々な活動をしているということについては、少し罪悪感があるような……罪悪感まではいかないか、ひとつの価値観だし。でも、例えば近いところでいうと、ceroのようにひとつのバンドでがっつり一蓮托生という感じでやっていくことへの憧れはあります。結局気質としてそうはなれないんですけどね(笑)」

小西「ceroのメンバーは学生の時からの付き合いだからかな。俺たちはみんな大人になってから出会ったから、結成当初から、みんな何足わらじも履くものだと思ってましたね。〈お前らの人生、俺にくれ!〉なんて絶対言えないですよ(笑)」

小田「ソロや他のバンドで活動ができるメリットはありますね」

小西「そう。個別で活動しているからこそ、結果的にクラクラに還元されてることって、すごく大きい。クラクラというバンドだけやって内側に向かっていくよりもオープンだし、広がっていく感じがあるんです」

小田「今作に、ソロ・ワークの中で出会った繋がりで生まれた曲があって。俳人の佐藤文香さんに詩を書いていただいた“O.K.”と“たとえ・ばさ”です。

彼女とは、俳句朗読と音楽を合わせたライヴをやりたいと持ちかけてくださったことで初めてちゃんとお話しして。その時ほぼ初対面なのに、お互いの恋愛観の深いところまで話し込みまして(笑)。その後に彼女から“たとえ・ばさ”の詩が送られてきたんです。この曲はもともとクラクラのためじゃなくて、そのイヴェントのため、自分のための曲として作っていたんですけど、だんだんバンドでやりたいという気持ちが芽生えてきて、去年の12月のライヴで演奏したんです」

小西「すごくいいライヴになったよね」

小田「クラクラでは主に自分で詩を書いてきたんですけど、今回は違う言葉を入れてもいいじゃないか、という気持ちになって。違う景色が見れられるといいなって思ったんですね。実はこの2曲以外にも、佐藤さんからいただいた詞はまだまだあります」

小西「まじ? 他にもあったんだ」

小田「ある。今後また曲にしていきます。でも、こうやって自分が外で吸収してきたものを活かせるのがクラクラだなと思っていて。いろんなことをやるけど、クラクラのことはいつも大切に思っている。だからみんなもそうなんじゃないかという信頼がなぜかありますね」

――夫婦みたいですね。

小田「そうなんです。でも、メンバーそれぞれがいろんな所でレヴェル・アップしてるから、自分が立ち止まっていると置いていかれるかもっていう感覚はあって。離婚されちゃう、みたいな(笑)」

小西「すごくいい刺激になってるよね。みんなそれぞれの仕事を持ちつつ、ここが一つのホーム、みたいな感じがあります。5人で顔合わせて音出してライヴをやるとどんな場所でもすっげー温かい気持ちになれるし、めっちゃ楽しくて幸せになれる。他の現場でやるのと全然違う感じがあるんですよ。それがあるから、〈浮気してもバレなかったらいいよ〉みたいな感じかな(笑)」

小田「バレバレだけどね(笑)」

小西「〈このバンドしかないんです〉みたいなのがない。それがクラクラらしさかもしれないですね」

小田「さっき〈罪悪感がある〉って話をしましたけど、罪悪感っていうよりも、そういうものをどう捉えるのかってところに行き着きますね」

――〈そういうもの〉? 各々がクラクラ以外でも仕事をしていることですか?

小田「そう。そういうクラクラのバンドとしての繋がりを〈弱い〉と捉えることもできるし、逆にみんなで団結して生きていく、一つの船に乗っているようなバンドを〈強い〉とする価値観もわかる。でもいろんな音楽とか、いろんなやり方があってよくて、そうじゃないあり方も豊かさがあると最近思うようになりましたね」

小西「俺も思う。凝り固まりにくいというか、常に何処かの窓が解放されてる感じだよね」

小田「かといって一年に1、2回しかライヴができなくなったら寂しいんですけど。でも、今のこのやり方でずっと続けていきたいと思ってるんです」