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ルーツ回帰3作目、新作『Out Of The Blues』

80年代、しばしのブランクを経たボズは、AORに偏らず、ブルースやジャズ・スタンダードに傾倒した作品を出して賛否を分けてきた。しかし前述した『Memphis』で一気にルーツへ戻り、その大らかな表現が高評価を得た。ブルース・アルバムの発表は初めてではなかったのに、ある種の円熟味、懐の深さが馴染みやすかったのだろう。

そしてこの新作『Out Of The Blues』で、ルーツ回帰も3作目を数えることに。でもコレは予め計画された作品ではなく、ボズにもそうした意図はなかったそうだ。

「アプローチが前の2作と似ていたから、3部作にしようと思っただけなんだ。自分がおもしろいと思う音楽に直感的に従っていく過程でこうなった。だから3部作にする必要性はなかったんだよ。でも自然に流れができたし、そのほうが良いと思った。前2作との違いは、自分が音楽を始めた頃に影響を受けた音楽に、より近づいたこと。こうしたアプローチは今回が初めてだったね」

『Out Of The Blues』収録曲“Rock And Stick”

収録曲にはボビー“ブルー”ブランドのカヴァーが2曲、『Memphis』でも取り上げたジミー・リードのレパーリーが再び。マジック・サムにも挑戦している。

「ボビー“ブルー”ブランドは、確実に自分が興味深いと思った音楽のひとつだったから、この3部作にちゃんと収録しておきたかった。ジミー・リードも自分の音楽スタイルにとってすごく重要なアーティストだね」

対してマジック・サムは、それほど詳しくなかったとか。ここ数年、よくロス・ロボスのライヴに飛び入り参加するそうだが、そのときにデイヴィッド・イダルゴから提案され、いつしか懐かしさを感じるようになったマテリアルだという。

『Out Of The Blues』収録曲“I’ve Just Got To Forget You”。作曲はドン・ロビーで、ボビー“ブルー”ブランドのレパートリーだった

 

LA録音、クセ者ギタリスト2人を含む参加メンバー

プロデュースは、キース・リチャーズやジョン・メイヤーを手掛けたスティーヴ・ジョーダンから、ボズのセルフ・プロデュースにスイッチ。

「前2作を作る過程で、自分が何をしたいか、という強いアイデアを持つようになった。だからそれを自分でコントロールしたかったんだ。スティーヴはドラマーだからそこは交代したけど、それ以外は何も変わらなかったよ。音楽へのアプローチも、ほぼ同じだった。音楽は心地良かったし、共演したミュージシャンたちも居心地が良かった。簡単ではなかったけど、自然な流れでスムーズに作業を進めることができたと思っている」

ではこの3部作で、メンフィス〜ナッシュヴィル〜LAと制作場所を移していったのは何故か?

「最初はメンフィスでレコーディングし、次は少し違うサウンドを求めて、実験的になれるナッシュヴィルのスタジオを見つけた。もうひとつの理由は、協力してくれるミュージシャンたちがナッシュヴィルにいたから。

今回はサンフランシスコでセッションがスタートしたけど、必要なミュージシャンはみんなLAに住んでいた。だからそのほうがやりやすかったんだ。シスコには良いスタジオが少ないしね」

参加メンバーの多くは前2作と重複していて、レイ・パーカーJr.(ギター)、ウィリー・ウィークス(ベース)、ジム・コックス(キーボード)が連続組。ドラムは旧知の重鎮ジム・ケルトナー。ホーンにはタワー・オブ・パワーのメンバーが参加している。

そしてエリック・クラプトンやロジャー・ウォーターズ、テデスキ・トラックス・バンドらと縁深いドイル・ブラムホールII、ボブ・ディランのサポートで知られるチャーリー・セクストンという2人のクセ者ギター弾きの名が新たに連なることになった。

「曲のいくつかに、特別なテキサスのフィーリングを持った作品があってね。テキサス・サウンドといえば、いまの私にはドイルとチャーリーだった。最近彼らと共演したことがあって、それを機に、もっと彼らと演奏したいと思っていたんだ。音楽的にも似ているしね。彼らはそれぞれに唯一無二のユニークなスタイルを持っていて、何よりエナジーがスゴイ。それが私には、とても美しいサウンドに聴こえるんだ」