予定どおり11時40分に開場すると、お客さんはどんどん来場。この日の主役である川床のメンバーにリリース祝いの言葉をかける人や、昼からオリオンビールに〈晴れ豆〉オリジナルの美味しいフードを楽しむ人など、会場は賑わいを見せる。石指はというと、観客として遊びに来ていた旧友の音楽家・平賀レオ(クマに鈴)との10年ぶりの再会に盛り上がり、先ほどの緊張はいずこへ。そして、頃合いを見てスタンバイ。いよいよ石指拓朗のステージが始まった。

石指オン・ステージ
 

「やっぱり歌って声が命だと思うんです。自分のめざす歌い方や出したい声像に近づけられるように、毎回がんばるんですよ」と、後で語ってくれたが、爪弾かれる繊細かつ大胆なギターに乗せた芯の太いブルージーな歌声と節回しで、初っ端から観客を一気に惹きつける石指。“”から始まり、大好きで大嫌いだよ”“あなたの悪口、言うのやめます”“大人は損得、子どもは気楽と、人気曲を畳みかけていく。

川床のレコ発ということで石指目当ての観客はそこまで多くないなか、その普遍的な魅力を持つ楽曲やパワフルな歌唱に後列のオーディエンスも釘づけだ。それは「ライヴはいつも精一杯です。良いものにしたい。その日一回きりの人……もう二度と観てもらえない人ももちろんたくさんいるわけで。だったら尚更、いつかまた思い出してほしいし、また聴きたいと思ってほしい」という本人の発言のとおり、観客の一人一人と向き合うように真摯で、エンターテイメント性の高いステージ、そして屈託のない石指スマイルによるものだろう。全9曲を演奏し、トップバッターとして、間違いなく鮮烈な印象を残していった。

★Mikikiエクスクルーシヴ!! この日演奏した“大人は損得、子どもは気楽”のライヴ映像★

なお、この日のセットリストは以下のとおり。

1. 朝
2. 大好きで大嫌いだよ
3. 春と夏と秋と冬について
4. バカみたい
5. 武蔵野
6. りんごのようなかわいい子
7. あなたの悪口、言うのやめます
8. 大人は損得、子どもは気楽
9. あの娘にちょっと

この日の2番手・あだち麗三郎クワルテッット改めあだち麗三郎と美味しい水、そしてトリの川床に至るまで常に会場は賑わい、大盛況のレコ発イヴェントとなった。

ちなみに、会場で出会った何人かのファンに石指の音楽の魅力について訊いたので、ここでその一部をご紹介しよう。

「初めてライヴを観たときに〈音源よりスゴイ人っているんだ!〉とビックリして、すぐにファンになりました。曲はレトロな感じがありつつ、でも絶対に石指さんにしか書けないものばかりですよね。音源も最高だけど、笑っちゃうくらいチャーミングなキャラクターやライヴ・パフォーマンスも魅力なので、まずはライヴを観るのがオススメです」(Yさん/20代女性)

「言葉を大事にしてる人だと思うんですが、別に言葉がなくても伝わる音楽だとも思います。それくらい、一人一人に向き合っているのがすごく伝わってくる」(Tさん/20代男性)

「全盛期の日本のフォークからの影響を感じさせつつも、コピーじゃなく、古くも聴こえない理由は当時の人たちにはなかった〈愛嬌〉。アプローチは当時のアングラ・フォークとも言えるけど、世界観や歌っている内容は完全に〈今〉のこと」(Mさん/20代男性)

何年か前、スゴイ人を発見してしまった!とハマっていた折坂悠太さんのライヴで、もう一人スゴイ人がいた!と一瞬で虜になってしまったのが、その対バンで出演していた石指さんでした。私は平成生まれなので、昔のフォークを聴いても、その時代に生きてないからピンとこない部分がどうしてもあって。だけど、石指さんの音楽は今の時代の音楽として共感できるんです。そもそもフォークってそういう音楽だとも思うんですが」(Mさん/20代女性、晴れ豆ブッキング・スタッフ)

石指ファンは本人同様アツい人が多いようで、それぞれに強い石指愛をもって、熱心に答えてくれた。

終演後、出演陣とゴキゲン石指