カヴァーだけど私そのもの

――男声だと温かい感じですけど、チッチさんの〈夜王子〉は清らかな感じというか、何とも言えない儚さがあります。

「生命を吹き込むみたいな気持ちになって歌って、出来てみたら凄い切ない〈夜王子〉になりました。私の良さを活かすなら切なさを出して、でも、まっすぐな感じも私らしいから、そこも表現したくって。リーガルと凄い話して、自分のやりたかった理想通りになりました」

――普段のチームじゃない人とのレコーディングも、なかなかない機会ですね。

「うん、いつもいるチームの人は誰もいなかったので、外国に来たような気持ちで、留学生じゃないけど〈全部吸収して帰ろう〉って。私には初めての経験ばかりで、本当は歌録りの時間がスタジオ入りだったんですけど、お願いして最初のドラム録りからずっと見てて。私がやりたいって言った曲をリーガルの3人が楽しそうに、まっすぐにやってくれて、それにも凄い感動したし。ソロだけど〈全員このチームの人たちで作り上げてるな〉っていうのを凄く感じられました。いままで知らなかったプリプロからTDまで、一曲作るのにこんなに時間がかかるんだなって知れたし」

――リーガルリリーに依頼した経緯は?

「ほのかちゃんと前から仲が良かったんですけど、もともと曲やバンドの世界観も大好きだし、ほのかちゃんの人間としての在り方も凄く尊敬してて、ホントに〈音楽がないと生きていけない〉っていうか、才能でしかないんですよ。今回の編曲を誰にお願いするか考えた時に、同じ世代で、女の子で、自分たちの世界を持ってて、〈夜王子〉に合いそうな人たちって考えたら、もうリーガルだったんです。だから真っ先に連絡して、1対1で会ってお願いしました(笑)。ほのかちゃんは完全にオルタナというか、海外のバンドが凄く好きだから、銀杏BOYZは通ってないけど、逆に通ってこなかった人とやりたいって気持ちがあって。オリジナルに引きずられない、その人たちなりの〈夜王子〉を一新して作ってほしかったから。なので、〈こういうのをやるのは初めてだけど、選んでくれて嬉しかったし、リーガルがやりたいことも全部詰め込むよ〉って、むちゃむちゃ試行錯誤しながら期待を超える素晴らしいものを作ってくれました。うん、ギターとか何度も何度も重ねてくれて、凄かった。ちょうど海ちゃんがサポートから正式メンバーになってすぐぐらいの時に録ったんですけど、スタジオでみんな一緒にやりとりしながら作り上げていくのっていいなと思って。何か私もメンバーになった気分でやらせてもらって(笑)」

――世代の近い人と一緒に何かやる機会もなかなかないですもんね。

「はい。みんなでどんな〈夜王子〉になるのかワクワクしながら作っていけたから、忘れられない体験になりそうです。あと、録ってくれたのも、ゴイステと銀杏の〈夜王子〉を録ったエンジニアさん(近藤圭司)にやってもらったんですよ。そこもこだわりだったんですけど、〈君の声は凄い頭に残るから、俺は凄くいいと思う〉〈良い“夜王子”が出来たね〉って言ってもらえて」

――それは嬉しいですね。

「めっちゃ嬉しかったです(笑)。他にも衣装はゴイステの〈夜王子〉の裏ジャケに描かれてる女の子の着てる服をイメージして、BiSHでもお世話になってるソッティーさん(外林健太)なりに作ってくれたもので。そこもこだわりだし、MVは銀杏を大好きなエリザベス宮地さんがすっごい考えて撮ってくれて。私は宮地さんの映像が凄く好きだし、もう好きが集まってるというか、めっちゃ自信がある曲になりました。演奏も衣装もMVも全部好きな人たちのもので、原曲もそうだし、だから、カヴァーだけど私そのものだと思って聴いてほしいです」

――11月には銀杏BOYZさんのツアーの名古屋でBiSHの出演が発表されましたけど、今回のカヴァーを峯田さんも聴かれたうえでオファーがあったわけですよね。

「そうみたいです。銀杏のスタッフさんに会った時に〈峯田も聴いて、めっちゃ良いって言ってたよ〉みたいなことを言ってくれてて、その後に連絡をいただいたみたいなので。カヴァーも聴いてオファーをいただいたのなら、私からしたらホントに嬉しいことで。その日までに絶対、自分の気持ちを作り上げていこうと思ってます」