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暗い中での希望を感じられたらいいな

――歌詞はManamiさんがすべて手がけていますが、MASUMIさんから届いた楽曲のイメージを受けて書くことが多いですか?

Manami「そうですね。MASUMIさんのデモにはいつも仮タイトルがついているんですけど、そこからイメージして書くことも多いです」

――本作でいうとどの曲ですか?

Manami「“Acid ~Until the End of Time~”“EX-tatic Trap”“Falling”“UTSURO”“は、仮タイトルそのままですね。あと、“The Final Count Down”が……」

MASUMI「“The Final Count Down”の仮タイトルは、“The Final Count Up”だったんですよ(笑)。80年代メタルが好きなので、ヨーロッパの曲をもじったものにしようと思って。そしたら結局元ネタのタイトルに戻ってた」

ヨーロッパの86年作『The Final Countdown』収録曲“The Final Countdown”

Manami「歌詞を書いた後に、何か別のタイトルにしようかなとは思うんですけど、なかなか変えるのが難しいんです。“UTSURO”だったら、曲を流した瞬間に〈虚ろげに〉という言葉が聴こえてきてしまったので歌詞にしてしまいましたし、“Falling”もそうで、サビに〈Falling〉と入れてしまったから、もう変えようがなくて(笑)」

――それぐらい曲のイメージに仮タイトルがハマっていると。

Manami「でも、仮タイトルがついているものと、私が書きたい内容や曲を聴いたイメージとちぐはぐだったりすると、すごく悩みます。MASUMIさん的に、そういう内容で書いてもらいたくなかったと思われたらどうしようって」

――歌詞を書くのであれば、作曲されたほうも満足のいくものにしたいという、いい意味でのプレッシャーというか。

Manami「そうです。それに、仮タイトルって別にそういう歌詞にしたいわけでもなくついているときがあるじゃないですか。たとえば“眠れる森のロザリア”は、仮タイトルが〈マッスルミュージアム〉だったんですよ(笑)」

――インパクトがすごいですね(笑)。確かに、“眠れる森のロザリア”は全パートが超攻撃的な演奏ですけど、そのイメージを受けて〈マッスルミュージアム〉にしたんですか?

MASUMI「いや、仮タイトルをつけるときって、実は曲の雰囲気とかを全然考えていないんですよ。iTunesをザーッと見たり、〈中二病 単語〉とかで検索したりしてつけているので、適当と言えば適当ですね(苦笑)。この曲は……3〜4年前ぐらいだったかな、池谷(直樹)が地方のお祭りとかで跳び箱を飛ぶ営業をしているのを、たまたまTVで見たんです。それで、なんとなく〈マッスルミュージアム〉かなって(笑)。で、つけたらつけたで(曲の雰囲気に)合ってたし」

――謎に馴染んでしまったと(笑)。歌詞は〈出会いと別れ〉を描いていることもあって、どれも切なげな雰囲気がありますね。

Manami「小説や漫画、映画、アニメもすべてそうなんですけど、私はただ明るいだけの話、ただ暗いだけの話よりも、その両方があるものが好きなんです。ずっと安定感があるとあまり物語性を感じないなと思っているので、そうならないように、全体的には明るいんだけど、ちょっと儚げな言葉を入れてみたりはしていますね」

――暗いムードの作品が好きな人の嗜好として、暗さの中に明るいものはいらないと思われる方も多いのかなと思うんですが。

Manami「ちょっと希望が見え隠れするようなものが好きなんです。Innocent Materialというぐらいなので、光というか、暗い中での希望を感じられたらいいなと思っていますし、MASUMIさんが作ってくれる曲も、明るいけどメロディーは儚い感じだったりするので、そういうところにテンションを合わせられたらなと思って書いています」

――また今作は、作品を通して、ひとりの女性が出会いと別れを経験して強くなっていくようなイメージもありました。

Manami「歌詞に〈私〉という単語は出てくるんですが、Innocent Materialでは性別を設定していない曲も多いんです。収録曲の中で女性目線で書いたものというと、“With You”と“EX-tatic Trap”ぐらい。

“眠れる森のロザリア”は男性視点なんですけど、この歌詞は実在のモデルがいて、ロザリア・ロンバルドちゃんをミイラにした彼女のお父さんのことを歌詞にしているんです。このお話、有名ではありますけど、ロザリアちゃんのことを知ったときに、もっとみんなに知ってほしいと思ったんですよね。だからもう泣きながら〈これは絶対に書きたい!〉と思っていたところに来たのが、〈マッスルミュージアム〉で(苦笑)」

※イタリア・パレルモのカプチン・フランシスコ修道会の地下納骨堂内にある聖ロザリア礼拝堂にミイラの状態で葬られている、1920年に肺炎によって2歳未満で亡くなった少女。死後1世紀近くたっても生前と変わらぬ姿が神秘的であると〈世界一美しい少女のミイラ〉〈眠れる森の美女〉とも呼ばれる

MASUMI「そう考えると仮タイトルって大事ですよね……今後は気をつけます(笑)」

Manami「いえ(笑)、すごく楽しいので全然大丈夫です! それに、〈マッスルミュージアム〉を超えるものはそんなに出てこないと思うので(笑)」