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すごい〈こんにゃろー〉

――山嵐のお二人は〈ヒプノシスマイク〉作品へ今回初めて参加されてますが、第一印象はいかがでした?

KAI_SHiNE「ラッパ我リヤとかサイプレス(上野)、KENくん(KEN THE 390)みたいに僕らも知ってる連中が参加してるということもあると思うんですけど、楽曲提供のお話をいただいてから初めて何曲か聴かせてもらったときに、どの曲もちゃんとそれぞれの街で実際に活動してるラッパーとかクラブの雰囲気、そこで起こってることの空気がどこかに感じられたんですよね。作り手側も自分たちらしさを出して曲を作ってると思ったし」

KOJIMA「だから楽しそうだし、僕らもやってみたいと思ったんです」

KAI_SHiNE「ぶっちゃけ最初は〈なんで俺たちへ話がきたんだろう?〉という気持ちがあったんですよ(笑)。山嵐の名義で誰かに楽曲を提供すること自体が初めてのことだったし。でも、曲を聴いたらラップというカルチャーの背景がちゃんと見えたし、2次元の絵はキラキラした感じだけど、それを2.5次元として解釈したら人っぽさも見えてきて、〈俺たちが参加してもいいのかも〉と思えたんです」

――そこから“DEATH RESPECT”の制作はどのように進めたんですか?

KAI_SHiNE「トラックはギターのKAZIと僕が中心になって作ったんですけど、その段階ではどのディビジョンが決勝戦に残るか決まってなかったので、オケも〈決戦〉というイメージだけで制作を進めました。(作詞を担当した)KOJIMAさんにはその間に4チームぶん全員のキャラクターを把握してもらって(笑)」

KOJIMA「今まで自分の生活の中でアニメを観る機会もなかったので、最初は焦りましたね(笑)。でも音源を聴いてるうちにスッと入ってきたんですよ。そこからは、キャラクターそれぞれの関係性に合わせて、そいつらがディスり合うときに自分ならどこをついてラップするかを考えるのが楽しかったし、一気にバッと書けました」

KAI_SHiNE「最初はうちらの要素を削らなくてはいけないことになったら嫌だなあと思ってたんですよ。でも、今までの曲を聴いたら、いつものヤマ(山嵐)らしくゴリッといけば、決勝らしい白熱したものになるだろうと思って。もちろんMCの人数が多いぶん、普段よりも曲の構成を多くしなくちゃいけなかったりはしましたけど、基本的には自分たちの感覚のまま作れましたね」

――伊東さんは今回の曲を聴いてどう思われましたか?

伊東「最終決戦に相応しい曲がドカーンときたので嬉しかったですし、麻天狼の立場からすると、今までストレートに気持ちをぶつけるタイプの曲はあまりなかったので、〈やっとこういう曲ができる!〉という気持ちがありましたね。シンジュクのキャラクターは3人ともクセがあるので、こういう曲はイケブクロが担当することが多いんです」

KAI_SHiNE「トレーラーが出た後のファンの反応を見てると、特に(伊弉冉)一二三と独歩に関しては〈今までとは違う〉というコメントが多くて。そこはしてやったりと思いました(笑)」

伊東「もうほんとに〈よくぞ!〉という感じで、この曲がシンジュクに足りなかったものを引き出してくれたと思っています」

KOJIMA「声優の皆さんには、自分がデモ・トラックに入れた仮歌を覚えていただいてレコーディングしてもらったんですけど、その音源を聴いたらクォリティーが半端なくて、僕らの想像してたものをスコーンと超えていってくれたんですよ。僕が〈こうしてほしい〉と思ってたところはそのままやってくれるし、なおかつ声優さんならではの感情の起伏とか強弱のつけ方がすごくて。独歩も最初聴いた時にヤバいと思ったよね?」

KAI_SHiNE「僕ら二人だけじゃなくて、キャラのことを把握しきってない他のメンバーも、みんな『この〈こんにゃろー〉はヤバいね』って言ってたんで(笑)」

伊東「恐縮です。でも、僕はラップをしたのが〈ヒプノシスマイク〉でほぼ初めてだったので、まだ本当に見様見真似なんですよ。仮歌を繰り返し聴いて、そのニュアンスを意識しながら正解を導き出していくんです」

KAI_SHiNE「でもそれってものすごい瞬発力ですよね」

伊東「これまでのCDでラップさせていただくなかで学んだことも多いんです。特にラッパ我リヤさんに書いていただいた曲(“Shinjuku Style ~笑わすな~”)は、泣きそうになりながら練習しましたから(笑)。この曲は言葉の乗せ方が拍どおりではなくて、4拍のなかに音が7個あったり、しかもそこに譜面には起こせないような一瞬のモタリとか、スピードが上がるようなニュアンスがあるんです。そこもラッパ我リヤのお二人が仮歌で〈これが正解〉と言えるような完成形を入れてくださってるので、それを真似ることでリズムの崩し方を学ぶことができて。今回の“DEATH RESPECT”は双方が右ストレートで殴り合うような曲なので、泣くほどの苦労はなかったですけど(笑)、これまでの経験を活かしてラップした部分が何か所かあります」

KAI_SHiNE「僕はヤマに加入してからは歌ってないけど(KAI_SHiNEは以前にTHC!!でヴォーカルを担当していた)、山田さん(山田マン)とQくん(Mr.Q)のフロウをコピーしろ、と言われても難しいと思いますもん」

KOJIMA「俺も大変だと思う」

伊東「そうなんですよ(笑)!」

KOJIMA「自分はもう自分自身のフロウとリズム・アプローチに慣れちゃってるからQくんの真似は絶対にできないと思うけど、たぶん伊東さんはまだフラットに近い状態だからそれができるんじゃないかなと思います」

KAI_SHiNE「その瞬発力はすごいなと思ってて。同じ声ではあるもののヴォーカルやMCの技術とは似て非なる部分を感じるんですよ。歌として書いたもの以上の空気感があって」

KOJIMA「一個のセンテンスごとのチェンジがしっかりとできてるというか。今回の独歩に関しては、〈わかるかい?〉のところであえて外して、そこからまた元のフロウに戻ってくるようにしたんですけど、伊東さんのラップはただテクニック的にそうしてるだけでない感情がそこに乗っかってるんですよ。自分が仮歌を録った時は、メンバーのみんなもいるから〈こんにゃろー〉の部分は恥ずかしくて本気でできなかったけど(笑)」

KAI_SHiNE「それがレコーディングされて戻ってきたら、すごい〈こんにゃろー〉が出たなと思って(笑)」

伊東「そこは僕一人というよりも、レコーディングに関わったスタッフの皆さん全員の力だと思います。この部分もスタッフの皆さんと試行錯誤しながら何回か試し録りをしたんですよ。そのなかでバッチリなものを導き出すことができたので」

伊東健人

――伊東さんがラップ・スキルを磨くにあたって、仮歌以外に何か参考にすることはありますか?

伊東「僕も最近はラップ・ミュージックの勉強をするようになったんですけど、キャストのなかでは木村昴さんにオススメを教えてもらうことが多いです。あとはたまにカラオケに誘われると、白井(悠介)さんとか野津山(幸宏)くんがずーっとラップの曲を歌ってるんですよ。カラオケなので歌詞もその場でわかるし、そういうところから仕入れることが多いですね」

――そのなかで印象に残ってる曲は?

伊東「キャスト間で話してるときに、僕が担当している独歩にピッタリの曲ということでオススメされたのが、輪入道さんの“27歳のリアル”(狐火の同名曲のカヴァー)だったんです。今の現実に対する鬱々とした思いとか内面に何かを秘めてる感じに独歩と通じるものがあると思いましたし、そのポエトリー・リーディングみたいな雰囲気は、自分が独歩でラップする際の意識のひとつとしてあるかもしれないです」

KAI_SHiNE「僕の感覚では、独歩はどこか若手のロック・バンド感を感じるキャラクターなんですよ。だから今回の曲では後半にシャウトのパートを入れたりしていて」

KOJIMA「今回の決勝に残ったキャラクターのなかでは、一番身近に感じられる部分が多いですよね。ため込んでバーッと吐き出す感じも気持ちいいし」

伊東「独歩は12人のなかで一番、普通の日本人らしい環境で暮らしてるキャラクターだと思うんですよ。〈満員電車つれえなあ〉みたいな感じなので、ファンタジーの作品なのに現実感がありすぎて逆にファンタジーというか(笑)。全体曲でラップする時は、それこそポエトリー・リーディングみたいに淡々と語って、最後にボーンと爆発する感じなので、鬱々としたところと爆発するところのコントラストは意識してますね」