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JUJU 『DELICIOUS ~JUJU’s JAZZ 3rd Dish~』 ソニー(2018)

 本作のテーマがNY。「NYに行ってなかったらJUJUになってない」とも語る、かつて自分が住んだNYに立ち戻る意味も込めた。その中でもいつか共演したいと思っていた久保田利伸とのデュエットによる“Englishman In New York”は本作を象徴する1曲だろう。JUJUが働いていたNYの服屋の近所に住んでいた久保田とはNY時代に街でよく顔を合わせた間柄だったというのもこのアルバムのテーマにぴったりだ。ただ何を歌うかはなかなか決まらなかったという。

 「私の中に浮かんだのがスティングの“Englishman In New York”。久保田さんに一番最初に言われたのは〈俺たちイングリッシュマンじゃないじゃん〉だったのですが〈でも、私たちはリーガル・エイリアンだったじゃないですか〉と。それがこの曲の歌詞ととても合ったんです。それにこの曲はジャズではないけど、スティングの後ろは全員ジャズミュージシャンだし、ジャズアルバムに入れていいんじゃないかなと。最後まで“キリング・ミー・ソフトリー”のほうがいいかもって、悩まれてはいたのですが、プリプロで両方の曲を二人でレコーディングしてみたりして。でも、レコーディングをやり始めたら〈この曲、超好きになっちゃった〉って仰ってましたよ」

 そしてもう一つの目玉が松尾潔 × 小林武史によるダブル・プロデュース楽曲の“メトロ”だ。

「“メトロ”は3日に分けて3回も録り直しました。松尾さんから、〈『誰よりいちばんキライ』っていうフレーズをあまり重く聴かせたくないからちょっとライトな感じで歌って〉と言われたので、重くないように重くないように、明るいテンションで歌ったら、最初は軽すぎてしまったんです。

 “メトロ”は松尾さんが詞を先に書かれて、そこに小林さんがメロディをつけられたんです。そのデモとして小林さんが歌ってみたものを最初に私たちに送ってくれたのですが、それがあまりに秀逸だったんです。小林さんの歌がすごくいい塩梅で。最初にホテルのバーでそのデモを聴いたときに、私は号泣してしまいました。それから部屋に帰ってからまた聴いてみて、何回聴いても号泣できた。それがあったから私はすごく難しかったんですね。

 小林さんの歌と比べると私のは明るすぎたから、川口大ちゃんにレコーディング後LINEして〈やっぱ録りなおしたい〉って。それで2回目は私と大ちゃんだけでスタジオに入ったんです。そのラフミックスが送られてきたら、まだ違うなって。〈皆さんが初めて聴いたときに、私が小林さんの歌を聴いたときの感覚に陥っていただけるんだろうか〉って考えると違っていたので、〈ほんとうにすいません、もう一回録りたいです〉って。そうしたら、松尾さんもスタッフも〈こんなストイックに歌に向き合うJUJUは初めて見た〉って。そんなこともあり、“メトロ”はすごく大変だったんですよね」