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どこもめざさなくて大丈夫

――そして次は、石井さんの“マシンガンララバイ”。こちらは速いハードコア調で。

石井「これ、最初はダムドみたいな感じだったんですけど、青さんの“火葬遊戯”と結構似ちゃったんで、作り直したんです。イントロのチョーキングの部分以外はほとんど変えましたね。もっとストレートなパンク・ソングみたいなのを作りたかったんですよ。でも“火葬遊戯”がカッコ良かったからちょっとメロディアスなほうに変えたんですけど。あと、全然知らなかったんだけど、タイトルもヘクトウ(桜井の別バンド)の曲とかぶってたんで、おおっと思って(笑)。いま〈ララバイ〉はねえだろって思ってたら、思いっきりありましたね(笑)」

――そして3曲目は“天国で待ってる”。もともと、この曲でキュアーの“Why Can’t I Be you?”風のMVを作ろうとしていらっしゃったとか。

石井「はい。MVありきみたいな企画があったんですよ。着ぐるみを着てフィットネスで踊ろうみたいなことを青さんが話してて。で、そういう馬鹿馬鹿しい曲をあえて作ってたんですね。ただ、バップを離れてその企画がなくなったときに、MVがない状態だとあまりにも馬鹿馬鹿しくて、このまま出すのはちょっと恥ずかしいなと思ってかなり変えたんです。最終的にはサビの部分しか残ってない」

――着ぐるみを着て、フィットネスで踊るっていうのはアリだったんですか?

石井「むしろ、そういう衝撃的なものを作りたいっていうのがあったんですよ。シュールって言い方もあれだけど、突き抜けることができるだろうと思って、おもしろいなって。あと、まず先にこういう画を撮りたいっていうのがあって、それに向けて曲を作るっていうやり方をしたこともなかったから、ちょっとワクワクする感じで作ってたんです。だけど、それがなくなったから、俺が『14』を作りはじめるときのモチベーションもずいぶん変わっちゃったんですよね。俺は何をめざしたらいいんだろう?って。それで制作のスタートがちょっと遅れたってことなんですけど、青さんの曲が先に上がってきてたから聴いてみたら、ああ、俺は別にどこもめざさなくても大丈夫だと」

桜井「それはどうして!?」

石井「アルバムの押さえになるピースはもうあるなと思って。自分のなかで、この曲が1曲目でこの曲が最後でっていうのがあったから、俺は別に何かをめざしたり、考えたりする必要はないなと思って、いつも通りに新曲を作ろうってところに落ち着いたんですね」

――そして“天国で待ってる”もこの形になったと。

石井「MVありきだったときは、めざす天国は一個、〈どんちゃん騒ぎ〉とかそういう意味での〈天国〉だったんですけど、映像がなくなるとそれは結構しんどくて、天国の解釈をいくつか散りばめました、っていう感じですかね。サビで言ってる〈天国〉はさっきの天国なんだけど、最後のほうで〈待ってる〉のは確実に地獄だなっていう」

――サウンドは、ちょっとショウやミュージカルのほうのレヴューを思わせるような、賑々しいシャッフル・ビートの曲で。

石井「初期のcali≠gariには、そういうイメージの曲がありますよね? 俺は、この曲調だったら普通は跳ねるけど、あえて跳ねないでいこうっていうパターンのほうが多いんですけど、今回は自然とこうなりました」

――次の4曲目“拝啓=BGM”も石井さんの曲ですね。こちらは本当に石井さんっぽいエレポップで。

石井「そういうつもりはなかったんです。ドラムが打ち込みだからそういうふうに聴こえるんだと思いますよ。俺は普通に、(渡辺美里の)“My Revolution”とか、そういう気持ちで作ってて。TM NETWORKとか、小室サウンドみたいな感じですね」