Page 3 / 4 1ページ目から読む

別に僕らが〈After Hours〉に出なくてもいい

――ネットに表れた情報や音、そういうのだけを見ていると、なかなか見えにくい部分を〈After Hours〉では体験できるんだと思います。今後は日本だけでなく、海外のいろんなところで〈After Hours〉を開催することが視野にあるんですか?

ロビン「もちろんです」

Goto「やろうと思ったらいつでもできると思うんですけど、いっつも同じバンドで回るわけにはいかないし、毎度同じお客さんが来るんだったら意味がない。僕らがワンマンでやったときと同じお客さんが観に来るんであれば、僕はやらない。僕ら単独だと1,200人しか入らないのに、5バンドいることによって6,000人が入るというならやるべきだと思う」

――フェスって良い機会だから、単独では腰が重くても、これだけ集まっているなら行こうとなる人は確実にいるわけですよね。

ロビン「東京の前回には、それを感じましたね。売り切れて入れないお客さんも多くて、当日券も並んでいたぐらいだった。僕は自分の出る時間以外は全ステージをすべて観たんですけど、お客さんも楽しそうだったんですよ。〈いまは規制で入れないから、次はこれに行こう〉とガヤガヤやっている感じとか」

――わかります。

ロビン「さっき言った裾野を広げる役割は〈After Hours〉に確実にある、続けていくことで、足を運んでくれる人の数がもっと増えていけばいいわけですよ。例えば、誰が出ると言わなくてもチケットが売り切れるぐらいまでになれば、意味がある。僕らが出てなくても良いと思いますよ、全然。そういうふうになっていけば、すごく価値があるんじゃないかなと思います」

downyの2016年作『第六作品集「無題」』収録曲“凍る花”

河合「僕ら以外のバンドにとっても〈場所〉になれたらいいよね。僕らが海外に行ったのは、別に海外で売れるためじゃなくて、日本でやる場所があんまりなかったからなんです。envyはどこにも属していなかったし、たいして相手にもされなかった。たまたま中国から〈ライヴをやってほしい〉という手紙が来たんで、行ってみたんですよ。その初めての海外ツアーがもう21年前。インターネットも携帯もなかった時代に、空港で誰が待っているかもわからず、ただエアメールだけを信じて行った。めっちゃくちゃ怖かったですよ。そのあと、ヨーロッパも自腹を1人20万円切って廻って。ライヴのギャラなんてないですよ」

Goto「だって、誰も知らないんだもん」

河合「そう。2回目にヨーロッパへ行ったときだって、2週間、マーチみたいな車でツアーしたんですよ。マーチですよ(笑)? 12時間車に乗って、降ろされてライヴをやって、それを繰り返して、もらったギャラがひとりたった1,000円。成田で寿司を食おうとしても1,500円かかって食えなかったんだから。そんなのを当たり前のようにやってきた過去を美化してるわけじゃないけど、俺らだって、あれがあるからいまでも(海外で)演奏できる環境があると思うんです。MONOだって、最初大変だったでしょ?」

Goto「地獄でしたよ!」

河合「俺らも苦労したから、みんなも同じ苦労をしろと言ってるわけではなくて、そんな経験を活かして、才能あるバンドが無駄な時間やお金を費やすことなく、音楽に集中できて、正当な評価を受けることができる場所があったらいいと思った。そのために〈After Hours〉という場所を作りたいんです」

――後輩たちのために、自分たちが道を切り開いてあげたいという思いがある。

河合「昔の僕らみたいな若者は〈そんなの要らねーよ〉って言うと思うんです。それで良いと思うんですよ。それをわかったうえでリスペクトを込めて〈こういう場所があるんだけど、出る?〉の一言を伝えるだけだし。そういう言葉にならない言葉というか気持ちを大切にしながら。じゃあ俺らも倒しに行きますよ!みたいな気持ちで出てくれるバンド。そういう奴らを誘いたいですけどね」

Goto「そうだね」

河合「好きだなと思う人に好きだって言いたいですね。このフェスを通じて。普段なかなか言えないじゃないですか。だから、オファーすること自体が、仮に出てもらえなかったとしても、好きって伝える良い機会っていうか」

ロビン「そうですよね。出てくれるのは次の回でも良いわけですからね」

――そこはミュージシャン主導でやっているフェスの良いところですよね。

河合「できるかぎり、手紙でもメールでも自分たちで書けるものは自分たちで書きたい。出て良かったって思えるようなイヴェントにしたいですね」