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日本と海外、その音楽・文化・制作環境の違い

――ところで、小袋さんといえばロンドンに移住されたことも話題になっていました。それについては話されましたか?

KEIJU「“Summertime”用に3人で写真を撮ったんですけど、そのときに〈ロンドンに行くんだ〉と聞いた気がします。インスタ(Instagram)のDMとかでは結構連絡を取ってますよ。自分がロンドンから来たアーティストと一緒にいたら、〈よろしく言っといて〉って送られてきたりとか。共通の知り合いが元から多いので、投稿に絵文字だけでコメントしてきたり。あとは、作ったビートを送ってくれたりも」

RIRI「私もこの間小袋さんに電話しましたよ。〈最近どうですか?〉みたいな(笑)。向こうの生活は楽しいみたいです。少し前まで仕事の締め切りが迫ってて大変だったみたいなんですけど、〈もう終わったから、これからスタジオに入っていろいろ作りはじめる〉って言ってました。楽しんでいる様子が伝わってきましたね」

RIRI、KEIJU、小袋成彬“Summertime”のアーティスト写真

――対照的に、RIRIさんはアメリカに渡って活動もされています。日本と往復するなかで感じることは?

RIRI「音楽に関しては、やっぱり日本独自のカルチャーというものがあって、それは素敵だなと思っています。でも、私は昔からずっとアメリカやヨーロッパの音楽が好きで聴いてたので、海外で制作をしていると私がやりたい方向性が伝わりやすくて、すっごくやりやすいんです。その日その日によるんですけど、例えばスタジオでメロディーとかアイデアとかがすらすら浮かんでくると、みんなで盛り上がったりとか、海外は空気感やノリの感じでどんどん作っていくので、そういうクリエイティヴな部分は尊敬するところが多いです。

〈SXSW 2017〉に出演したときも、盛り上がる曲を歌ってお客さんを煽ると、〈イエーイ!〉ってすごくアガってくれたんですよ(笑)。そういうところは、やっててすごく楽しいです。MCで〈世界で活躍できるアーティストになりたい〉っていう夢を英語で話したんですけど、それにもみんな拍手してくれて。〈応援してるよ!〉と最前列の人も言ってくれて、すっごくうれしかったです。そこで改めて夢を諦めずにがんばろうと思えたし、燃えましたね」

――KEIJUさんは東京・世田谷を拠点に活動されていますが、ヒップホップの本場であるアメリカのことはどうお考えになりますか?

KEIJU「ヒップホップに関しては、海外とこちらでは全然違う気がしてます。自分のなかでルールみたいなものを履き違えないで、〈日本人〉ということを大事にしたいなと。僕はずっと海外の音楽を聴いてきて、日本の音楽はあまり聴いてなかったんですけど。

ただ、日本ではシリアスな人やキャラが立ってる人はいるけど、その中間があまりいないと思ってて。自分はそういう部分を狙っていたりもするんです。〈メジャー過ぎず、アンダーグラウンド過ぎず〉みたいな」

 

仲間たちとの思い出が詰まったKEIJUの新作『heartbreak e.p. (deluxe edition)』

――KEIJUさんは配信限定だった『heartbreak e.p.』に新曲を足した形で『heartbreak e.p. (deluxe edition)』としてCDリリースされますよね。配信から2か月ほど経ちましたが、改めてこの作品について思うことは?

KEIJU「CD化にあたって、Opus Innのビートの曲(“we all die”)も収録してます。あとはヒューストンにKODYって人がいて、そいつが自分にインスタで〈君と曲作りたい〉ってDMをくれたんですよ。写真を見たら、すっげえいかつい地元の黒人でいいなと思って。それから英語でテレビ電話したりしたんです。で、ビートも送ってきてくれて、歌詞も自分が日本語で言いたいことをいい感じの英語にしてくれて。それで出来たのが“so sorry”ですね。

さらに自分とBAD HOPのYZERRとで客演して配信リリースしたDJ CHARI & DJ TATSUKIの“Right Now feat. KEIJU, YZERR”の、このCDのためだけに施されたニュー・ミックスを含めた3曲をボーナス・トラックとして収録してます。

日本語がほとんど入ってない曲は、外国人には喜んでもらえるですけど、日本の友達に聴かせると〈ちょっとわかんない〉って感じになっちゃうんですよね。あれはソニーに入ってすぐ出来た曲だったんですけど、メジャーでいきなり英語の曲を出すのは違うなと。でも、自分にとっては好きな曲なので、タイミングを見てリリースしたかったんです。

このEPは暗い曲が多かったので、みんなそんなに好きじゃないかなって思ってたんですけど。でも、聴いてくれてる人はちゃんと〈聴いてるよ〉って感想を教えてくれますね」

KEIJUの『heartbreak e.p. (deluxe edition)』収録曲“get paid”

――なるほど。

KEIJU「KANDYTOWNとして活動してそこからソロ活動を始めてから、ポップな曲が多くなったと思うんです。それで去年は結構考えてて、〈ヒップホップがやりたい〉っていう気持ちがあったんです。でも、それは例えばトラップで同じワードをずっと言うような、最近の流行りみたいな感じではなくって――そんなことをずっと考えすぎて、くたばってましたね、去年は。友だち関係でもいろいろあって、ああいう感じの作品になったんです。

(『heartbreak e.p.』は、)ほとんどの曲に友だちがフィーチャリングで入ってくれてるんですよ。東京が嫌で1か月くらい大阪に行ったときにJin DoggとYoung Yujiroと曲を作ったりとか(“alone”“tacit”)。(“too real”に参加している)YDIZZYとは昔から遊んでますね。弟みたいに思ってます。

そういう思い出があのEPのなかにたくさんあるので、仲間に助けられたなっていう感じなんです。いま聴くと、〈あのときこういうことがあったな〉みたいな気持ちになりますね」