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いい歌詞だなって気付いた

——意見を素直に聞くことで大衆性みたいなものを吸収しているのかもしれないですね。歌詞についてはどうですか? 〈音の響きで言葉を選ぶから歌詞の意味は特にない〉といつも言うじゃないですか。でも、やっぱり歌詞もいいと思うんですよ。

「ヤッター! 私、4日前くらいから自分の歌詞いいんじゃないかって思うようになったんです。Eテレの番組で歌った歌詞で、〈こころがパーっと 晴れたら君も 大人の一歩〉っていうのがあるんですけど、最初は〈パーっと なれたら〉だったんですよ。結局〈晴れたら〉になったんですけど、〈晴れたら〉は一目瞭然というか想像がつくじゃないですか。でも、心がパーッとなるっていうのは人それぞれだから、そっちのほうが深いと思うんです」

——解釈の余地があると。

「はい。そう考えたら、私はこういうことを考えていたんだな、私って意外と歌詞を考えてるんだと思って。それで『めじゃめじゃもんじゃ』の歌詞を読み直したら、いい歌詞だなって気付きました」

——あとになって気付いた(笑)。“ブラボー”の歌詞だって「金曜ブラボー」(眉村が何度も出演したラジオ番組)のスタッフさんだったら泣きますよ。

「『金曜ブラボー』の最終回でサプライズでやろうって思ってたのに、わぽさんが先に言っちゃってたんですよ。〈眉村がサプライズで『金曜ブラボー』の曲を作りました〉って。言うなよ!っていう。それでやる気なくなっちゃった曲です(笑)」

——やる気はあるでしょう(笑)。こうしてちゃんと完成させて、アルバムに収録して。

「完成させました。でも、みんなの驚く顔が見たいから作ったのに! 歌詞はやっぱり音をいちばん重視していて、最近は音ではめた言葉から膨らませていくパターンが多いんです。英語がわからないけど洋楽聴いてる人って発音が気持ちいいから聴いてるんだろうなと思うんです。私は海外進出もしたいし、日本語でも聴いてて気持ちいい曲を作れると思うから、そういう曲を作りたい。“おじさん”は歌詞がいいって言ってもらえるけど、〈好きと言ったら 何か変わるのかな〉っていうところからおじさんを出して、こういうふうに膨らませたっていう感じです。歌詞か……“ヘチマで体洗ってる”はマジで意味わかんないですけどね。お父さんがヘチマを育ててたことがあって」

——沖縄の人ですもんね。

「それで〈スポンジになるんだぜ〉みたいに体をゴシゴシ洗ってきて、痛かったのがトラウマで(笑)。ヘチマと言えばスポンジという印象があります」

——あの時のことかなという経験談もあちこちに散りばめられてますよね。〈小指の縫い目〉とか。

「そうそう。でも“開国だ”の〈開国〉は経験ないですけど(笑)。〈開国だ 国を建てるぞ〉って歌ってるんですけど、〈国を建てるのは建国だよ〉って言われて」

——ペリーは建国してないですもんね。ただ、この曲の場合〈ケンコク〉より〈カイコク〉のほうが音として気持ちいいと。

「だからもう意味は別にいいやと思って〈開国だ〉のままにしました」

——作るのが大変だった曲はありますか?

「やっぱりテンポを落とした“大丈夫”ですかね。“Teeth of Peace”はライヴで即興トラックメイクしてそのまま完成させた感じだし。レコーディングで大変だったのは“100人眉村の大丈夫”。100トラック声を入れたから(笑)。でも本当に大変だったのは……ない」

——流石ですね。

「“書き下ろし主題歌”はトラックがいちばん複雑だと思うけど、秒で出来ました。(映画『クソみたいな映画』の)脚本がおもしろかったから。主題歌のお話をいただいたときに監督さんから〈眉村さんに任せます〉って言われたから、自由に作ろって思って。ファンを驚かせたいっていういつもの気持ちと一緒で、監督を驚かせたいって気持ちで作りました」

 

全方位に嫉妬する

——眉村さんの創作のモチベーションは人を驚かせたいっていうのと、悔しいっていう思いですもんね。

「そう! 私は全員覚えてますよ。虫ケラのように扱ってきたイヴェントの主催者や、メールをシカトした偉い人は全員覚えてます。Twitterかなんかで〈眉村さん、あのときはすみませんでした〉って言ってくれたら忘れます。でも、悔しさが原動力なんだぜっていうのはダサいと思ってるんです。実際はめちゃめちゃそうなんですけど。私は太陽のような大天使になりたいのに、〈悔しさがガソリンかよ〉って思われたくない。〈みんなをハッピーにさせたいって気持ちだけで動いてないんかい〉って自分でツッコんじゃうんですよ」

——眉村ちあきベイビーズ(眉村のライヴ・バンド)の小林清美さんと仲いいアイドルにすら嫉妬してますもんね。〈私のほうが好きだから〉って。

「私、意外とゲスいですよ。動員が1人とかの人にさえ嫉妬しますよ。あんまり言うとやばいけど」

——僕らの仕事はあまり知られていない人を紹介するという面もあるので、新たな注目株が出てきたら、知名度とかセールス的にはかなり差があったとしても悔しいと思うのかもしれないですね。

「全然思うし、いまでも『アイドル三十六房』に私以外の人間が出てるのがイヤですよ。緊張して喋れなくなっちゃえばいいのにって思うし(笑)」

——そこまでですか!

「思っちゃうんですよ。私はメジャーでアイドルをやるからって思って、見ないフリをします」

——嫉妬をセカオワとかミスチルに向けていきましょうよ。

「嫉妬してますよ! 困ったもんだよ(笑)。ファンもそうですよ。一番そう」

——移り気だし。

「いまは私のところが主現場で結局戻ってきてくれるっていう信頼はあるんですけど、私の現場がない日に他のところに行ったりしてるのを見るとキー!って(笑)」

——現場がない日にTwitterで監視してるんですか。

「だって好きなんだもん。私のスマホの待ち受け画面はファンがみんなで遊んでプリクラ撮ったらしいのを勝手に保存して使ってますし」

——すごい(笑)。その嫉妬心とか独占欲が力になるのはいいことだと思いますよ。

「圧巻の結果を出して全員黙らせるって気分でいます。ビルボードかグラミー賞。それだったら何も言えなくなる。まず(日本の)音楽番組を制覇したい」

——順調にステージが大きくなっていってることも想定内で。

「はい。何にもプレッシャーを感じてないです」

——1月のクアトロ公演で言ってましたもんね。

「私が辞めちゃったら食べていけなくなる人もすでにいるんですよ、会社じゃないもんには。でも、へーって」

——それはそれでプレッシャーがなさすぎな気もしますけど(笑)。

「〈絶対に爪痕を残さなきゃいけない!〉みたいなのもないんですよ。〈VIVA LA ROCK〉に出るけど〈残そーっと〉くらいの感じ」

——頼もしい限りです。そろそろまとめの時間なんですが、アルバムは過去最高作ですよね。

「いまのところの私の中ではいちばんいいアルバム。でも、もうちょっと飽きてる。早く次のアルバム作りたいです」

——シングルは考えてない?

「シングルがわからなくて。なんでちょっとしか入れないのかなって思う」

——音楽業界の慣習なんだと思うんですけど、メディアに顔を出す機会が増えるからじゃないですかね。アルバムよりシングルのほうが短いスパンで出せるので。

「それはよく思うんですけど、じゃあすぐにアルバム作ればいいじゃんって。お前が作曲をサボってるからだろって。アルバムどんどん出したほうがファンも喜ぶじゃん」

——予算の兼ね合いもあるとは思いますよ。眉村さんみたいにひとりで完結できて、しかも短期間でたくさん作れる限りはアルバムのほうがいいですよね。

「じゃあ、私がシングルを出しはじめたら〈あっ……〉って察してください。〈最近調子悪いのかな?〉って(笑)。でもアルバムのほうがお得だからアルバム作ります。私、ケチなんですよ。ケチな消費者の気持ちがわかるのでアルバムがいいです」