トラディショナルにして革新的な現行ニューオーリンズ・サウンドを知るための必聴ディスクガイド!

PJ MORTON Gumbo Morton/AGATE(2017)

郷土料理の名を冠したタイトルに地元愛と現地シーンの新たな担い手としての覚悟が滲む一枚。鍵盤を弾いてスティーヴィー・ワンダー節を炸裂させるが、ペルを招いたスムースな“Claustrophobic”、アンジェリカ・ジョセフがハモるオーガニックなファンク“Sticking To My Guns”で現行NOLAの空気を運び込む。

 

WATER SEED Say Yeah!! Live At The Blue Nile Water Seed(Water Seed)

一時はアトランタで活動していた男女混成ジャズ・ファンク・バンド。これはホームでもある地元の名門ヴェニューでのライヴ盤で、古風なソウル・バラードからトライバルなファンクまでをジャム・バンド的なハイブリッド感覚で披露していく。女性フルート奏者を擁するホーン・セクションもNOLA気分を高める。

 

CHRISTIAN SCOTT Ancestral Recall Ropeadope(2019)

マルディグラ・インディアンのビッグ・チーフを祖父に持つ気鋭ジャズ・トランペッターの最新作。サンプリングを含めた打楽器によるポリリズムが醸成する躍動感はコンゴ・スクエアで黒人奴隷が踊っていた太古へ連れ戻すかのようで、ビート・ミュージック以降の視点でNOLAのジャズ前史や祖先を振り返っている。

 

DAWN New Breed Our Dawn/Local Action(2019)

PJやトロンボーン・ショーティが参加した前作に続き、マルディグラ・インディアンの衣装を身に纏ったこの最新作でもハイチ&クレオール・ルーツを強調しながら地元回帰。ハドソン・モホーク関与のトラップ調などのほか、故アラン・トゥーサンと組んだラベルを思わせるバラードも歌い、父譲りの一面も見せる。

 

NEVILLE JACOBS Neville Jacobs Harmonized(2018)

ダンプスタファンクを牽引するアイヴァン・ネヴィルとギタリストのクリス・ジェイコブスによるプロジェクト。ダンプスタの面々もリズム隊に参加した本作は、まさにNOLAファンクとブルース・ロックの合体で、アーロン・ネヴィルとの親子共演も含む。いまならアンジェリカ・ジョセフのヴォーカル参加も話題。

 

HURRAY FOR THE RIFF RAFF The Navigator ATO/HOSTESS(2017)

NOLAを拠点にトラディショナルかつエキゾなフォーク・ブルースを奏でるアリンダ・セガーラのプロジェクト。本項では“The Body Electric”を含む前作も推したいが、名匠ポール・バトラーを迎えた本作も、プエルトリコ・ルーツへの回帰がテーマとはいえ、アメリカーナを感じさせるゴッタ煮感覚が実にNOLA的。

 

GALACTIC Already Ready Already Tchoup-Zilla/Pヴァイン(2019)

骨のある人力グルーヴでNOLA音楽の過去と現在を繋ぐジャム・バンドの最新作。エリカ・フォールズやプリンセス・ショウ、ボーイフレンドら個性豊かな地元勢も交え、“Clap Your Hands”ではファッツ・ドミノ“I'm Walkin'”的なリズムで故人へのオマージュを匂わす。昨年、旧メンバーのセリル・デクロウが他界。

 

ERICA FALLS Homegrown Erica Falls Music(2017)

9thワード地区出身で、ギャラクティックやビッグ・フリーダの最新作にも参加する女性R&Bシンガーの初フル・アルバム。アラン・トゥーサン曲のカヴァーに代表されるNOLA ~サザン・スタイルは当然として、開放感のある美声はネオ・ソウルなどのアーバン路線とも好相性だ。現代のアーマ・トーマス的な存在。