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Mikiki編集部・天野龍太郎が選ぶ10曲

〈PSN〉の上半期ベスト・ソング10は、洋楽シーン(そんなものがあるとすれば、ですが)全体を見渡しつつ、バランスを考えて選んだつもりです。そこで取り上げていないものを優先しながら、外しちゃったら嘘になる、と感じた曲だけはあえて重ねて選んでいます。ただブラック・ミディは特別すぎるので、選外としました。ラテンもK-POPも選べなかった……。

1. ドクター・ジョンのセカンド・ライン
自分でスタッフのみなさんに〈今年の洋楽ソングを選んでください〉と頼んでおきながら、いきなりルールを無視しました。ごめんなさい。ただこれが今年聴いた音楽のなかで、いちばんよかったものなので。6月6日にこの世を去ったドクター・ジョンの、ニューオーリンズでの葬儀のパレードの様子です。底抜けに明るくて楽しげなのに、観ているとなんだかうるっときちゃいます。

2. 21 Savage feat. J. Cole “a lot”
2018年末の曲(ビデオは2月に公開)なので、これもちょっとルール違反なんですが、今年繰り返し聴いたラップ・ソングがこれ。リリックがすばらしいんです。〈何人の黒人が死んだ?(たくさん)〉。痛ましい一曲です。

3. Lil Uzi Vert “Free Uzi”
4位のビヨンセがメイズのカヴァーで、3位のこれはG・ハーボのビートジャッキング。ポップ・ミュージックのダイナミズムを感じます。ここでのウージーのラップは、間違いなく2019年のベスト。

4. Beyoncé “Before I Let Go”
詳しくは〈PSN〉の上半期ベスト・ソング10のテキストをお読みください。忘れられない一曲ですが、太すぎる声と遅れ気味なノリのラップがビヨンセらしくて、ちょっとおもしろいんですよね。

5. slowthai “Nothing Great About Britain”
4位に同じですが、ロンドンのアンダーグラウンドの音をまるごと飲み込みながら、パンクとしか言いようのないスピ(リ)ットを2019年の英国に吐きかけたのがスロウタイだと思います。

6. Big K.R.I.T. “K.R.I.T. HERE”
〈PSN〉でも取り上げました。伝統と革新がせめぎ合ったビートがすべてで、〈K.R.I.T.こそがサザン・ヒップホップのキング!〉って言いたくなります。

7. T.I. “Fuck Nigga”
ブラックフェイス・セーター〉を売り出して、レイシズムだ、と糾弾され、不買運動が起きたグッチ。にもかかわらず、元ボクサーのフロイド・メイウェザーは〈俺はグッチを買うぜ〉とガン無視。T.I.が〈ふざけんじゃねえよ〉とキレたのがこの曲です。ザ・ゲームの“West Side”もそうなんですが、中堅どころのラッパーが気を吐いている曲を聴くと、最高な気分になりますね。

8. SOPHIE “Is It Cold In The Water? (Flume & Eprom Remix)”
ミックステープ『Hi This Is Flume』から。ラスティの『Glass Swords』(2011年)を初めて聴いたときの興奮を思い出させてくれました。音こそがすべて。

9. Weyes Blood “Andromeda”
10曲中唯一のインディー・ロックです。これも連載で取り上げましたが、ベストのほうには入れられませんでした。じわっと広がるサウンドスケープに、聴き手を誘惑するような歌とメロディー。うっとりします。

10. Polo G feat. Lil Tjay “Pop Out”
最後にヤングなラッパーの曲を。シカゴのポロ・Gとブロンクスのリル・ティージェイのヒット・ソングです(ビルボード・ホット100で11位)。最近はNBA・ヤングボーイの“4 Sons Of A King”YBN・オールマイティ・ジェイの“Disappear”をよくYouTubeで聴いています。

 

TOWER RECORDS ONLINE・青木正之が選ぶ10曲

1. Peggy Gou - Starry Night
2. Johnny Utah - Honeypie
3. Tame Impala - Borderline
4. Nightmares On Wax feat. Kuauhtli Vasquez & Wixarika Tribe “Back To Nature (Ricardo Villalobos Back To Earth Mix)”
5. Moodymann “I'll Provide”
6. YG feat. Tyga & Jon Z “Go Loko”
7. Flava D “Return To Me”
8. Toro Y Moi “Ordinary Pleasure”
9. Baltra & 박혜진 Park Hye Jin “Ahead Of Time”
10. Denzel Curry “RICKY”

2019年上半期、印象に残ってよく聴いたのがこちら。アジアのアーティストや女性アーティストの活躍が目につきましたが、その中で抜きん出ていたのがペギー・グー。オーソドックスで伝統的なハウス・トラックながら、彼女のヴォーカルが入った途端マジックが起こり魅力が倍増。決して歌が上手い訳ではありませんが、気負いのない歌唱がなんとハマることか! そして何気なくYouTubeで再生して病みつきになったのがジョニー・ユタ。マック・デマルコに通じるこの2分半の脱力ポップ・ソングはサビの中毒性がヤバイです。続くテーム・インパラは空間に広がるシンセに、ケヴィン・パーカーのファルセットが溶け込む桃源郷のような曲。音の響きだけなら気持ちいいけど、歌詞は成功からくる代償なのか辛い状態が推し量れる内容で切ないんです……と、ここまでが頻繁に再生した3曲です。

残す7曲も素晴らしく、ナイトメアズ・オン・ワックスを淡々としながら15分の呪術的なミニマル・ハウスへと料理したリカルド・ヴィラロボス、ぶっ飛んだキックの音と曲構成にらしさを発揮したムーディーマン、マリアッチ要素を入れつつどこかクールで凄みを効かせるYG、初公式ドラムンベース曲となったUGKの女帝フレイヴァ・D、ディスコ/ブギーにシフトして開放的になったトロイ・モア、ニューヨークを拠点とするバルトラと韓国ソウルで活躍する才女Park Hye Jinのコラボによる内省的なハウス、父親から教えを力強くラップするデンゼル・カリー、どれも病みつきになるイイ曲で甲乙つけ難い!

 

Mikiki編集部・田中亮太が選ぶ10曲

1. Powder “New Tribe”
2. Kasper Marott “Drømmen Om Ø (Forever Mix '19)”
3. New Jackson “The Night Mail”
4. Peggy Gou “Starry Night”
5. Bambounou “Temple”
6. Cherushi “Nobody's Fool (Vocal Version)”
7. Sascha Funke & Niklas Wandt “Lobotomie”
8. K-Lone “Sine Language”
9. Octa Octa “Loops For Healing”
10. Agrippa “Spice Raiders”

この半年、そういや夢中になって聴いていたのはエレクトロニック・ミュージックばかり。というわけで、自分がいたダンスフロアに良い瞬間を作ってくれた曲や、一緒に夜遊びしてくれる友だちがオススメしてくれた曲を中心に選びました。上位はテクノ/ハウスの〈THE アンセム〉といった感じですが、リスナーとして熱心に追っているのは、いわゆるベースと言われるようなサウンド。特に5位にチョイスしたバンブーヌーをリリースしているXL傘下のレーベル、ホワイティーズのカタログには、昨年からやられっぱなしでした。エクスペリメンタルでパンキッシュで、インディー耳で聴いても最高です。クラブ・ミュージックの新たな潮流を追っていく連載をMikikiで企画できないかな……とは考えているところ。