ツアーの荷物は少ないほうがいい
松村「ところで、小山田さんはライヴ中、楽器を持ち替えないですよね」
小山田「今回は1本です。めんどくさいから(笑)。楽なんです」
松村「ははは(笑)。“Count 5 or 6”とか“I Hate Hate”とか、アーミングする曲もあるじゃないですか。チューニングはずれないんですか?」
小山田「いまのギター(フェンダー・ムスタング)はチューニングが危ういって言われていたんですけど、すごく調整してくれて、いまバッチリの状態。ほぼ狂わないです」
松村「1本で弾き切っていて、感動を覚えました。大野(由美子)さんのベースはフェンダーのときとミュージックマンのときがありますよね。堀江(博久)さんもギターを弾いたり、トランペットを吹いたり……。機材の面から見ると、小山田さんがいちばんスリムですね(笑)」
小山田「楽をしているんです。荷物は少ないほうがいいって言うじゃないですか(笑)」
松村「たしかに旅行はそうかもしれません(笑)。他方で、撮影クルーは、村尾さんの他には?」
村尾「誰もいないです」
松村「そこもなるべく少人数でやろうと考えて?」
小山田「そうですね。お金がかかるんで(笑)」
Corneliusは叩き上げ
村尾「Corneliusの海外ツアーは〈ハードコア・パンク・バンドがDIYで回るツアー〉と本質的には同じだと思います」
小山田「日本から行くので、そのぶんやっぱりお金が……(笑)。
(99年に)フレーミング・リップスと一緒にツアーをしたことがあるんですけど、(フロントマンの)ウェイン(・コイン)が普通に運転していましたよ。そのツアーはけっこうハードコアで、5バンドくらいで回ったんです。フレーミング・リップスの他にセバドー、ロビン・ヒッチコックとあともう1組(ICU)でした。
イヴェントが大体夜の10時から始まって、5バンドが演奏し終わると2時で、片付けていると5時。で、6時半に集合して次の会場へ行く、みたいな(笑)。僕らは1週間くらいしか付き合わなかったんだけど、ほんっとに大変でしたね」
松村「そのような話を聞くと、小山田さんは叩き上げだと思いますよ」
小山田「〈叩き上げ〉? うん……(笑)。だけど、それをやったのが20代後半くらいの頃だから、その前は〈ボンボン〉なんです」
一同「(笑)」
松村「急に叩き上げの世界に入れられたんですね(笑)」
小山田「そこから叩き上がった(笑)」
松村「フリッパーズ・ギターの頃はボンボン?」
小山田「いきなりデビューして、そこそこ売れちゃったから(笑)。自分で機材をセッティングしたことない、みたいな感じだったのが、急に全部自分でやることになって」
松村「今回『Mellow Waves Visuals』と同時にファースト『The First Question Award』と4作目の『Point』が再発されましたが、『The First Question Award』(94年)の頃の〈ボンボン感〉はどれくらいだったんですか?」
小山田「けっこうなボンボンです」
一同「(笑)」
緊張感あるライヴの息抜きポイント
松村「『Point』からはいまのCorneliusのスタイルに近くなりますが、再現ライヴを控えていますよね。いまはそのリハーサル中ですか?」
小山田「はい。今回はあんまり時間がなくて、そんなに練習してない」
松村「そんな、ネガティヴ・プロモーションしないでください(笑)。私はCorneliusほどリハーサルを重ねるバンドもそうはいないなと思っています」
小山田「練習しないとできないんです」
松村「楽曲の難しさは重荷にならないんですか? 普通の8ビートの曲だったら、〈イェ-イ!〉ってできると思うんですが」
小山田「そんなのつまんないじゃないですか」
松村「ははは(笑)。そういうのが懐かしくならないんですか?」
小山田「それはあるね。“Count 5 or 6”なんて楽勝だから、〈楽しいなあ〉って思ってやれます。あと、最後にやる“E”はクリックなしなので、楽しくやれます」
村尾「あらき(ゆうこ)さんはしんどいんですよね」
小山田「あらきさんはクリックがないと嫌なタイプだから」
松村「『別冊ele-king 続コーネリアスのすべて』(ele-king books)を作ったときにあらきさんにお話を伺ったら、〈クリックがあってこそ、演奏できる〉と言っていましたよ(笑)。でも、ステージにもちょっとした息抜きポイントがあるんですね」
小山田「うん。あるある」