INTERVIEW

Don’t mask yourself――KEITHがファースト・アルバムに込めた〈home〉への想い

KEITH『you are my home』

Don’t mask yourself――KEITHがファースト・アルバムに込めた〈home〉への想い

今年3月にリリースしたデビューEP『emotion and silence』が、CDショップや各種ストリーミング・サーヴィスでじわじわと人気を集め、インディーR&Bやフューチャー・ソウルの新旗手として期待を寄せられているシンガー・ソングライター、KEITH。彼がファースト・フル・アルバム『you are my home』を完成させた。

浮遊感のあるシンセやリヴァーブを効かせたサウンドは海外産インディーR&Bに通じるチルな雰囲気を湛えているが、メロディーは日本人の琴線に触れる曲線を描いているのが特徴。全体的にどこか乾いた音質は透き通ったファルセットともマッチしている。KEITHの音楽のモットーは〈感情と静寂〉だそうだが、実際、彼の曲は静かに始まり、曲が進むに連れてグングン熱を帯びていく展開が多い。青いバラから赤いバラへとモチーフを変えたCDジャケットのアートワークは、そんな二面性を持つ音楽性を見事に表現しているし、描かれたイラストが水彩画というのもKEITHの音楽にあるハンドメイドの温もりや優しさを伝えている。

KEITHは、どのような思いで今回のアルバムを作りあげたのか。日頃の楽曲制作方法なども含めて、たっぷりと語ってもらった。

KEITH you are my home GOONTRAX(2019)

 

〈愛〉や〈home〉なしには何もできない

――中学卒業と共に音楽家をめざして上京。その後、渡豪し、帰国後は一度地元で就職したのち再上京と、デビューまでに紆余曲折ありましたが、ファースト・フル・アルバムを出したいまの心境から教えてください。

「メチャクチャ嬉しいです。EP『emotion and silence』のときもリリースできて嬉しかったんですけど、単純に曲数が増えたから伝えられることも多くなるし。ようやくといった感じです」

――今回のアルバムには、いつ頃に作った楽曲が収められているんですか?

「『emotion and silence』以降に新しく作った曲もありますが、例えば1曲目の“One”は僕が地元を出たときに書いた話で、当時の歌詞のまま、トラックをつけてメロディーをブラッシュアップさせて完成させた曲です。なので、原型は16歳とか17歳の頃にあったもの。“All Yours”も僕が10代のときに書いたもので、歌詞は日本語だったんですが、英語に変えて完成させました」

――じゃあ、アルバムに向けて書き下ろすというよりは、これまでに作ってきた楽曲から選りすぐってコンパイルした感じ?

「そうですね。トラックをつけてない曲も含めると200曲以上はストックがあるんですけど、なるべく書いた当時の歌詞のまま使うようにしていて。日本語から英語に変えることはありますが、内容は極力書き換えない。曲を書いたときの気持ちってものすごく素直で、だからこそ聴いてくれる人に刺さりやすいと思うので大事にしたいんです」

――『you are my home』というアルバム・タイトルはどこから?

「例えば“One”は故郷とか帰るべき場所っていう意味でまさに〈home〉をテーマにしていたり、これがそのまま今回のアルバムのテーマなんです。タイトルの〈you〉は、聴く人にとってそういう思い入れのある場所に置き換えてもらってもいいし、家族でも、恋人でもいい。愛情がすべての〈home〉にあるというか、根底にあるというか、それなしでは何もできないと思っているんです。なので、〈home〉や〈愛〉をテーマに置いて作っていきました」

 

いままでのKEITHと違う

――先行配信曲“This Love”は、どのような思いから作った曲ですか?

「基本、静かなアコースティック系の曲調が多いんですけど、アルバムの収録曲がだんだん決まっていく中で、アップテンポの曲があまりなかったので、もともとあったこの曲をそんな曲調にアレンジしようと。そこから半年くらいかけてトラックをブラッシュアップしていきました」

――トラックで具体的にこだわった部分は?

「シンセです。3つくらい重ねてるんですが、これほど重ねたことは初めてで。〈いままでのKEITHと違う〉とわかるような曲にしたくて、いろんなシンセを入れて厚みと奥行きを出しました。ヴォーカルで引っ張っていくことが多いんですけど、“This Love”と“Distance”に関しては、ヴォーカルだけではなくサウンド全体で盛り上がれるような曲にしたいなと」

――少しラテンのフレイヴァーを感じさせるリズムとハンドクラップが印象的でした。

「クラップは最後までなかったんです。でも、ライヴで一体感を出すために、みんなで手を叩くっていう動きが欲しいなと思って」

――歌詞のテーマは?

「これは朝起きたときに、横にいる恋人との時間が永遠に続けば良いなと願ってる歌なんです。サビで、彼女に対して〈Don’t mask yourself〉=〈もっと自分をさらけ出してよ〉〈仮面を取ってくれ、ありのままの君が好きだよ〉と歌ってるんですけど、それは普段のライヴにも通じるところがあって。恥ずかしがってそれこそハンドクラップしたりできない人もいるかもしれないけど、そういう人に向けても〈take off the mask〉っていうことを伝えたくて書いたんです」

――ピアノを弾きながら歌うKEITHさんの姿をシンプルに捉えたMVが公開されている“One”は、本作で唯一、日本語詞を交えた曲です。日本語詞と英語詞の区分けはどのように考えているんでしょうか?

「世界に届けたいという思いから英語詞をメインに歌っているんですけど、ライヴを重ねて行くに連れ、やはり日本では日本語詞のほうが伝わりやすい面もあると感じて、日本のリスナーにもっと自分の思っていることを届けたいと考えるようになって、挑戦してみました。“One”を1曲目にしたのは、(英語詞のイメージだったのが)いきなり日本語で歌い出すとインパクトがあると思ったし、いちばん熱量がある歌でもあるので、それをまず聴く人の耳に届けたかったんです」

――英語詞と日本語詞で、曲の作り方に違いはありますか?

「基本は英語詞で作るのが前提なので、頭の中を英語にして作りはじめます。英語の場合は語呂や言葉が持つリズムをかなり考えながら書くんですけど、日本語で書く場合は思ったことをバーッと殴り書きして、それを歌詞に整えていく感じです。なので、日本語の場合は歌詞先行。英語の場合はメロディーやトラックを先に作ることが多いですね」

――また、“Shabby”はライヴで定番となっている曲ですね。

「これは夜中の3時くらいに急に思い立って、ベッドから起き上がってピアノを弾いたらメロディーがバーッと出来上がっていったんです。サビの〈Listen to my love song〉というフレーズもそのときに自然と出てきたもの。〈僕のラヴソングを聴いてほしい〉っていうのは、当時の自分の素直な気持ちなんだろうなと思ったから、そのまま歌詞にしていきました」

――“Shabby”はみすぼらしいという意味ですが、そのときの自分が情けなく思えたんでしょうか?

「〈Shabby〉という言葉は自然と出てきたんです。というのもこの曲を書いたのが完全にくすぶっていたときだったので……お客さんが0人みたいな。だから、〈Listen to my love song〉というのは本当に心からの叫び(苦笑)。曲の最後にその気持ちがブワーッと溢れ出るように意識して作りました」

――収録曲の中でもっとも新しい書き下ろし曲はどれになるんですか?

「“Pray”ですね」

――“Pray”は、他曲とリリックの方向が違いますよね。この楽曲だけエンパワーメント系の歌になっている。

「この歌はアコギのチューニングをいつもと変えて、いままで押さえないようなコードを使っていることもあってか、ラヴソングというよりは誰かを応援する歌になりそうだなと感じて。もともと、そういう曲を書きたいという思いもずっとどこかにあったんですね。歌詞は最初に〈Pray〉というタイトルが浮かんだので、そこから広げていきました」

――そして、ラスト曲“Someone Else”は後半に行くに連れ、どんどん情感が豊かになってくる曲ですね。

「これはラヴソングなんですけど、そうじゃないようにも捉えられるんじゃないかと思っていて。サビで〈いい男を演じることに疲れた〉と歌ってるんですけど、いままでは、いい人になろうとか誰かにとっての何かになろうとか、頑張って演じてた部分や考えすぎてたところがあったんです。誰しも、〈嫌われたくない〉みたいな気持ちはありますよね。そういう虚勢はもう張らなくていいんだよってことをラヴソングに重ね合わせて書いてみようと」

――たしかに、歌い方も他曲と趣が違いますね。素というか、生々しいというか、気取っていない声だなって。

「そうなんです。曲の内容に寄せるように、ちょっと変えたんですよね。最後はもう壊れちゃうというか……」

――〈Take off the mask〉状態(笑)。

「そう(笑)。多少荒くてもいいし、声が飛んでもいい。そのくらいの気持ちで歌ったんです。“Someone Else”とあと“Shabby”は、さっきおっしゃっていただいたように終盤にかけて情感が豊かになって、最後壊れちゃう系。実際ライヴでも叫んでます」

 

トラックを後付けすることでメロディーが際立つ?

――日頃の楽曲制作方法についても伺わせてください。楽曲を構成するトラック/メロディー/リリックのうち、どれをもっとも重要視していますか?

「メロディーです。メロディーで歌い方が決まるというか。僕は楽器でスーパープレイができるわけではないので、歌でスーパープレイ……歌で聴いてくれる人の心を震わせるのがモットーなんです」

――いろんな曲作りのパターンがあるようですが、先ほどの英語詞・日本語詞の話をお聞きするに、メロディー先行がいちばん多そうですね。

「はい。メロディーと、核になる歌詞が同時に出てきて、そこにトラックを後付けするっていうパターンが多いです。最初にパソコンから入ることはあまりないですね。今回の収録曲だと、“Atmosphere”だけ、最初にトラックが出来ていたんです。このトラックはいままでとノリが違うし、質感が生っぽくてバンドチックだし、自分の新しい顔としてなんとかアルバムにねじ込みたいと」

――KEITHさんの曲はメロディーが際立って聴こえるんですが、要因はそこにあるような気がします。

「そのぶん、アコギで作ったり、ピアノで作ったときのクセがそのままメロディーに出ちゃうんです。でも、それが僕の色にもなっていると思っています。ギターとピアノでは作る曲のテイストが変わってくるので、そのへんは意図してやってるところはありますね。最初にアコギを弾きはじめても、これはアコギじゃないなと思ったらピアノに変えたり、その逆もありますから」

――メロディー作りとトラック作りで違う脳が存在している感じですか?

「考え方が別って感じですね。その伴奏だけで歌えるようなメロディーというか、曲を作るときはアコギだけ/ピアノだけで成立するようにしていて。トラックは、その味付けという考え方です」

――メロディー作りに於いて影響を受けたとか、ルーツになっていると思うアーティストはいますか?

「中学生のときに初めて買ったCDがスガ シカオさんの『ALL SINGLES BEST』(2007年)なんです。いま思うのは、スガさんは7thコードをたくさん使ってたんだなと。当時は感覚でしかわからなかったけど、〈何、このメロディー?〉〈何、このインパクト〉みたいな衝撃を受けて。そこからギターを手にするようになったし、異常に7thコードを使ったメロディーを作るようになったんです。それ以降、洋楽も歌謡曲もJ-Popも聴いていく中で、いろいろ影響を受けましたけど、7thを使いがちっていうのは未だに残ってますね」

 

殻を破ることができたのは、海外で受けた刺激

――今年5月にはre:plusさんの中国ツアーに帯同されていましたが、海外ライヴを通じてどのようなことを得ましたか?

「海外のお客さんは僕のことを知らないから、心を近づけることが重要なんだなとは思いましたね。あるとき、スタッフからの勧めもあってステージから観客のいるフロアに降りて歌ってみたんです。そしたらブワーッと(オーディエンスが)沸いて。僕のことを知らなくても、音楽を楽しもうとしてくれていることが伝わってきたんです。国民性はもちろんあると思うんですけど、本当に音楽が好きで歌ってるんですっていう自分を露わにして、なんとか盛り上げたいんだっていう気持ちでぶつかっていけば、ちゃんと受け入れてくれるんだなって」

――その体験以降、ライヴのスタイルは変わりましたか?

「完全に変わりました。帰国後、日本でもフロアに降りて歌ってみたんですけど、殻を破ることができた感じがあって。思えば僕のような音楽性でフロアに飛び込んで行くようなアーティストって見たことがないし、〈これは日本でもイケるじゃん〉っていう手応えがありましたね」

――この先、どのような活動を展開していきたいと考えていますか?

「いま、フィリピンとかタイで僕の音楽がウケているみたいで。なので、実際に足を運んでライヴをしてみたいと思ってます。でもその2か国に限らず、海外に行って刺激を受けて、それを糧にもっともっと自分を磨いて、リスナーの人にはもう1皮、2皮剥けた姿を見せたいなと思います」

――最後に、KEITHさんが音楽活動で肝に銘じていることを教えてください。

「ブレない・折れない、ですかね。たとえば今後ロックを歌いはじめたとしても、僕の中ではブレたことにはならないんです。なぜなら、それは僕の歌だから。僕の歌を僕が歌うから僕の歌になってるわけで。何をやろうとも、何を歌おうとも、僕の歌を僕が歌うことに意味があると思ってるんです。それが〈僕である〉ということなのかな?と」

――〈自分から出たものを曲にする〉ということですか?

「そうです。ロックであろうとR&Bであろうと、自分の中から溢れ出てきたものだから。それが僕の歌なんだっていうことを忘れずにこれからも活動していきたいと思います」

 


LIVE INFORMATION

KEITH 1st oneman show「you are my home」release party
10月5日(土)東京・SHIBUYA SANKAKU(東京都渋谷区渋谷3-13-9 エトワールUビルB1 050-5361-1466)
開場/開演:18:00
チケット:前売り2,500円/3,000円
★詳細はこちら

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