大切なのは、誰に対しても公平であること

――その考え方は今回のメンツにも反映されていますよね。10年前の『…OUT OF THIS WORLD 4』にも参加していたのは、たった11バンドなんですよ。

「(あらためて数える)……あ、ほんとだ!」

――ほかの49バンドはここ10年内で出てきた若手とか、ヴェテランでも新しく友達になった人たち。つまりこのコンピは、長年の友達と〈俺たちずっとこんな感じでやってます〉って言いたいものではないんだなと。

「あ、それは考えましたね。自分のイヴェントをやり続けているバンドや先輩方もいるけど、なーんか気づけばメンツも固まっちゃって、それはそれで良いですけど、台風の目ってやっぱり変わり続けていくから。そのなかで、僕は好きな人たちみんな、年齢関係なく声かけていきたいし。現状維持は嫌じゃないですか」

『…OUT OF THIS WORLD 6』のトレイラー
 

――60バンドの選考基準は、〈好き、カッコいい〉だけですか。

「はい。僕の〈参加してください〉はすごいラフなんですよ。〈俺が作りたいから入って〉みたいな、それこそ電話やLINEで直接ポンと投げるだけ。もちろん支払いに関しては明確に書いていますけど、別に条件も良くないんです。そこは売れてる/売れてないは関係なしにみんな同額です。椎木(知仁/My Hair is Bad)くん、わかってる?みたいな(笑)。

でも、このバンドがこれだけ売れてて、このバンドはそうじゃないって考えたところで、俺が好きな度合いは別に変わらない。それでもいいって言ってくれるバンドだけ参加してくれたおかげでバランスの保たれた作品に仕上がりました」

――条件は〈60秒以内〉と〈全曲新録〉だけ。

「そう、ほかで出した曲じゃダメっていう。すでに発表した曲でも、ヴァージョンを変えたりすればOKですね。でもほんと、どれを聴いても嬉しかったです。俺はFUCK YOU HEROESとTOYBEATSで参加してますけど、やっぱ時計の針をピッと合わせて1分内で終える。〈うわ、1秒出ちゃった。じゃあもっとBPM上げて〉みたいな、この作業をみんなやってくれたんだなぁと思うとほんと嬉しくなる」

――え、61秒でもアウト?

「アウトです(笑)。今回はあんまりいなかったですけどね。でも前回はアブノーマルズが1分20秒で送ってきて。あとSLANGも62秒とか。〈あの……これどういうことっすか?〉〈え、ダメ?〉〈いや、1分以内って言いましたよね?〉って。それを(SLANGの)KOさんに言うのはさすがに震えましたけどね(笑)。でも〈めんどくせぇなぁ!〉って言いながら、ちゃんと短くしてくれました」

――どこまでも公平ですよね。先輩だからって忖度しない。

「それはないです。だってそこで突っ込まれたくないですよね。がんばって守ったバンドに〈なんであのバンドだけオーバーしてるんだ〉とか陰口叩かれたくないし、そこ誤魔化して信用失いたくないし」

 

食わず嫌いしてる音楽に触れるきっかけを作ること

――みんな条件が同じだからこそのおもしろさは感じます。ただ、いまさらな話ですけど、オムニバスのCDって最近ないじゃないですか?

「えーと、CDショップでもオムニバス・コーナーがほぼなくなってるいま時分ってことですよね? それね、みんなに言われるんですよ」

――だっていま売れないですもん(苦笑)。

「でも、なんか企画を組むのって楽しいじゃないですか。ここ最近ACBを使ってイヴェントやブッキングをやってるんですけど。ライヴを観てると〈このバンドとあのバンドは一緒にやったら絶対おもしろいのになぁ〉とか想像するんですよ。それってジャンルじゃなくて、意外と楽屋で話している内容とかでわかること。

表現方法が違うだけで、根本的なマインドが一緒だったりすると、なんかひっつけたくなるんですよね。紹介したくなる……なんの話でしたっけ?」

――いや、なんでいまどきパッケージのCDなのかっていう。

「あ、そうそう。それも一緒だと思う。コンセプト的にも全曲1分なんで。ハードコアが苦手な人も1分ならなんとか誤魔化せる。逆に歌ものも5分とかだと壮大すぎるけど1分ならサラッと聴けるし。なんか取っ掛かりになってくれりゃいいって思うんですね。〈My Hair is Badって売れてるアレでしょ〉って思ってる人が〈あ、意外とこんな感じなの?〉って驚くかもしれないし。サイガン(SAIGAN TERROR)とかクロコダイル(CROCODILECOX AND THE DISASTER)を好きな人が萌々ちゃん(林萌々子/Hump Back)を聴いて癒やされるかもしれない。

そういう発見に関しては、俺のおかげって胸張れるじゃないですか。食わず嫌いはもったいないし。僕は自分がオムニバスやコンピを買って聴いてから一気に世界が広がった経験がいっぱいあったし、そこからきっかけをいっぱいもらったから。逆になんでいまそういうのがないんだろうって思いますよ」

――いまはサブスクのプレイリストがあるから。でも、考えてみたら全部新曲、ほかで発表されていないものなんていうプレイリストはない。

「うん。ここはこだわりました。やっぱりそこも平等でありたくて、一個でも既発曲が入ってくると、ほかのバンドは〈なんで?〉ってことになっちゃうし。すでにある曲の寄せ集めなんだったら、サンプラーとして店頭でタダで配れよって話になっちゃう。でもこれはサンプラーじゃないから。〈みんなが俺のために作ってくれた特別なもの〉なんで」