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〈人生は難しい〉けど〈信じていれば不可能はない〉

――では、最初のオリジナル・ソング“This is how I feel”が生まれた背景を教えてください。

「姉のウクレレを部屋でポロポロ弾いてたら、〈♪This is how I feel〉っていうメロディーが頭の中で鳴ったんです。それまで歌をつくったことがなかったから、どうやって形にすればいいのかもわからなかったんですけど、ポロンポロン弾きながら浮かんできたものを紙に書いていたら一曲できちゃった、みたいな感じです(笑)。自然と生まれたものだから、そのときの自分が表れているのかなって思います」

『Rocket Science』収録曲“This is how I feel”

――ウクレレは録音でも印象的に使われていますよね。ご自宅には楽器がたくさんあるんですか?

「ありますね。妹も弟も弾くので、今はギターが必要以上にあって(笑)」

――楽器に囲まれて育ったんですね。

「そうですね。YouTubeをやっていたときは楽器以外にもドアを閉める音とか壁を叩く音とかも使って。なんでも音にしてつくるのが好きです」

――アルバムの1曲目“Rocket Science”には環境音や人の声など、いろいろな音が入っていますよね。

「旅先の海の音、実家の周辺の音とか電車の音とか、弟が笑っている声とか……。大学の寮のルームメイトの家にサンクス・ギヴィングで行って、そのときに撮ったビデオの音も入れているんです。彼の家族の末っ子が笑っている声も入っています。めっちゃ可愛いんですよ(笑)。

アルバムにはいろいろなジャンルの曲が入っているので、そのイントロダクションになる曲をつくるなら、ブリーフだけどアルバムのことをちゃんと説明しているものがいいなって。今までの自分があって、ここから飛んでいくよ、(アルバム・ジャケットを指して)こんな感じでジャンプするよっていう作品にしたかったんです。

なので、家族や自分の周りの音、経験してきたことを音でコラージュして、アルバムを聴いたときに当時の自分を〈このときがスタートだったんだな〉って思い出せるようにしました」

『Rocket Science』表題曲

――その“Rocket Science”では〈人生は難しい〉けど〈信じていれば不可能はない〉と英語で語られていますね。これが宣言にもなっていて、アルバムの幕開けを飾るにふさわしい一曲です。

「それは、今の僕のホット・トピックスっていうか。この一年、人生っていろいろなことがあるんだなって感じることを経験しました。時には簡単じゃないこともあるけど、信じて進めば前に行けるんだってことをすごく学んだんです。だから、これからもそうやって生きよう、これがいいスタートだなって。

1曲目の“Rocket Science”で言ったことがベースになって、それをエクスパンドしていくとアルバムの他の曲になっていくっていう感じなんです」

――でも、〈人生は難しい〉と〈不可能はない〉は真逆のことだとも思うんです。

「どちらかだけに傾いちゃうとよくないかなと思って。〈Nothing is impossible〉なんて、軽くは言われたくないじゃないですか(笑)。だから、ちゃんとバランスを取りたかったんです」

 

日本とアメリカ、カルチャーの違いから生まれる歌

――音楽以外では、どんなことからインスピレーションを得ますか?

「人との関係とか、誰かと話したこととか。あとLAは、日本とは環境もカルチャーも違うから、すごく刺激を受けます。でも、刺激を受けたときはそれをアウトプットしなきゃいけないっていうマインドセットでいつもいるので、それをすぐ音にして、 よくボイスメモに録っていますね」

――では、日本とLAを行き来していて、いちばん感じることは?

「アメリカには一人で行っているからか、すごく自由を感じます。あと、自分らしさを出せるっていうのが大きいですね。いろいろな国から人が集まっているから、みんな自分のいいところを出そうとしていて――出さないと負けちゃうっていうか。そういう場所なので、どんどん自分のスタイルのミュージックを出していきなって先生にも言われますし」

――逆に、日本のいいところを感じることはありますか?

「コミュニティーがあるところですね。アメリカにもコミュニティーはあるんですけど、本当にインディペンデントな人は一匹狼みたいな感じですし(笑)。その点、日本だとみんながみんなをリスペクトして人と人との繋がりを大事にしているし、そこがいいなと思います」

――ご自身もコミュニティーを大事にしながら音楽をつくっていますか?

「そうですね。このアルバムでは、本当にたくさんのミュージシャンと一緒にやらせてもらっていて、そのサポートがあってのものなんです。やっぱり人との関係は大事だって感じます。特に“Fly Away (feat. Kan Sano)”はバンドやストリングスが生だったし、Kan Sanoさんにも入ってもらいましたし」

『Rocket Science』収録曲“Fly Away (feat. Kan Sano)”

――そのKan Sanoさんの参加はどういった経緯で?

「“Fly Away”は去年の時点で完成していたんですけど、ブリッジ(間奏)のところにまだ何も入っていなくて、どうしようかなってKOSENさんと相談していたんです。やっぱり上手い人に頼みたいねってなって、Kan Sanoさんにお願いしました」

――感動的なローズ・ピアノの演奏ですよね。出来上がったものを聴いてどう思いました?

「Kan Sanoさんが入ったところは、自分にとっては〈宇宙〉なんですよ。大気圏を突破した宇宙へ行っちゃった感じです(笑)。自分で聴いていても〈これ、すごいな〉って思いますし、新しいものを感じるので、大好きですね。

Kan Sanoさんについては、スタイルもすごく好きなんです。(演奏や歌やミックスを)全部自分でやるっていうのもイマっぽいし、パーソナリティーもすごく好き。表面的にはすごく柔らかい方なんですけど、いつも燃えていて、音楽を本当に理解している感じがするんですよね」