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王者に相応しいアルバム

STORMZY Heavy Is The Head #Merky/Atlantic UK/ワーナー(2019)

 それに続く『Heavy Is The Head』は2枚目のジンクスをあっさり吹き飛ばした。前述したように先行カットの“Vossi Bop”は彼にとって初の全英No.1シングルとなり(初週で1億2700万回以上も再生され、英国出身ラッパーとして初週最多の再生回数を記録)、続くMJコール&ジミー・ネイプス制作の“Crown”は4位を記録。その間には客演したエド・シーラン“Take Me Back To London”も全英1位を獲得するというトピックを挿み、そのエドとバーナ・ボーイを迎えた強力なリード曲“Own It”もまたまた全英No.1に輝いている。

 そんな状況下でリリースされた『Heavy Is The Head』も当然のようにチャートを制覇した。アルバムには他にもヘッディ・ワンを迎えた“Audacity”(これも全英6位まで上昇)をはじめ、エイチ、H.E.R.、イェバがゲスト参加。全曲をフレイザーT・スミスが手掛けた前作に対して今回は海外勢も含む複数のプロデューサーが参加しており、ミニマルなヒップホップの“Vossi Bop”やクワイアを従えたメロディアスな“Crown”、アフロ~ダンスホールの“Own It”といった野心的な新生面をあえてシングルで打ち出す一方、その合間に出したサー・スパイロ製のハード・グライム“Sounds Of The Skeng”をアルバム未収録にしたことからもわかるように(日本盤にはボートラとして収録!)、アルバム中でもグライム寄りのプロダクションと言えるのはフレイザーの手掛けた“Audacity”ぐらい。それでもワイリーの過去曲を引用した“Wiley Flow”で先達にオマージュを捧げているのは彼なりの敬意だろうか。いずれにせよ、少し前とは比べ物にならないほどUKのポップ・シーンにラップ/ヒップホップが定着した現在にあって、その王者に相応しい作りのアルバムになっていることは間違いない。2月のブリット・アウォードではふたたび〈英国ソロ男性アーティスト部門〉に輝いたばかりだが、ここからの彼は、同胞のエンパワーメントや社会運動におけるスポークスマン

 ……と、ここまで書いてきたところで3月に予定されていた来日公演が諸事情により11月まで延期されることになった。残念ではあるが、それまでの期間にまた何かしらのアクションもあるはずだし、さらにパワーアップした姿で来日が実現することを期待しておきたい。