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Motion Picture©2018 VOX LUX FILM HOLDINGS, LLC. All Right Reserved.

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 セレステを演じるのは、約10年前、彼女にオスカーをもたらした「ブラック・スワン」での熱演が記憶に新しいナタリー・ポートマンで、今作では製作総指揮もこなしている。同作では子役出身の清楚なイメージをかなぐり捨てた姿が役自体のイメージと重なるハマリ具合が印象的だったが、今作では彼女のノーブルなイメージとはかけ離れたポップスターのイメージ(70年代のデビッド・ボウイのようなグラム風メイクアップを施し、グリッターな衣装を纏った)を打ち出し、その裏の、さまざまなトラウマに打ちひしがれた生身の女性のリアルを巧みに演じている。

 そんな彼女の少女時代を、あえて若手のラフィー・キャシディーに演じさせ、セレステの娘、アルビーも同時に演じさせるという配役が興味深い。また、乱れまくったセレステの私生活やアルビーの世話係をこなし、女兄弟ならではの嫉妬や猜疑心に駆られる微妙な関係に悩む姉、エリーをステイシー・マーティンが演じている。彼女は監督、ブラディ・コーベットの前作「シークレット・オブ・モンスター」(2015年)に続いてのコーベット作品への出演。また、セレステをデビュー時から見守るマネージャー役にジュード・ロウが扮し、確かな存在感を発揮している。

 全編を通じて要所要所で挿入されるナレーションの渋い声の主は、あの名優、ウィレム・デフォー。セレステの多難な人生で起こる事件や心境の変化を、さりげなく語る。

 少女時代のトラウマ、その十数年後の、乱れたポップスターとしてのセレステ、そして終盤の、セレステのステージという3つのパートから成る構成。10代での思わぬデビューと成功から、セレステの人生がどのように歪んでいったのかという詳細な描写が省かれているため、母となった経緯やその他の恋愛沙汰、ドラッグや酒への依存などの過程がわかりにくくもあるが、その結果を、30代前半にして、疲れ切った中年女のような、退廃した仕草や表情、そしてしゃべり方で表現してみせるポートマンの演技力に驚く。とにかく、絶妙に〈やさぐれて〉いるのだ。