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Hidekiが生き様や音楽への想いを込めた“ヒトツ空の下で”

――Masa(ギター)、massu-(ベース)という新たなメンバーが加わっての制作でしたが、それによる変化もありました?

Hideki「今まではたいていTsubasaがギター、ベースをレコーディングしていて、今回も基本的にはそうなんですね。だから、新メンバーがレコーディング参加したのは“ヒトツ空の下で”だけなんです。

ただ、MAHATMAをより〈音楽だけで勝負できる人たち〉という方向に持っていきたいと思って、サポートを迎えた体制ではなく、この二人に入ってもらったわけなんですけど、“ヒトツ空の下で”で彼らの実力は見せられたかなぁとは思います」

――その“ヒトツ空の下で”はどんな思いで作詞・作曲をしていたんですか?

Hideki「たぶん、表面的には恋愛の歌って感じるかもしれないですけど、それは万人にとってわかりやすいだろうと思っての比喩なんですね。最終的には、自分の生き様が少しでも多くの人のためになればいいなという気持ちで書きました。

自分が音楽に救われた部分はすごくいろいろあるんですけど、たとえば冒頭の歌詞〈海の底沈む宝物〉というのは、まだ聴いたことのない、最も感動する音楽などを表しているんですね。

〈許される場所を選んで/陽に当ててくれた君は〉……というフレーズは、音楽を聴ける状況って、いつでもどこでもというわけでもないと思うんです。その人の、音楽を聴きたいという気持ちがある、限られた瞬間だと思うんですね。だから〈陽に当ててくれた〉ことで、作り手としてすごく救われる気持ちにさせてもらったり、逆に自分が音楽を作ることで、その人を〈陽に当てる〉こともできる。自分の音楽を聴いて救われる人がいるなら、自分も救われるというか。

でも、それって目に見えるやりとりではないですよね。〈言葉だけじゃ語れない命のメッセージ〉とも出てくるんですけど、お互いがお互いの尺度でこういう場所を生み出せて、そこには聴いてくれてありがとう、聴かせてくれてありがとうっていう感謝の気持ちが生まれる。そういったものがどんどん連鎖して、より良い世界になっていってもらいたいなぁって」

NaNa「私はMAHATMAを、作曲する二人が監督で自分が俳優みたいなイメージでやっているんですね。この曲もHidekiの中でガッツリと世界観が固まっているので、今の話のように、ちょっとスピリチュアルというか抽象的な部分を、私は聴いてくださる方にわかりやすく伝える役だと思っています。

“ヒトツ空の下で”は、恋愛の曲ではないんだろうなとは思っていて、自分の中では『人魚姫』のようなコンセプトで歌いました」

――『人魚姫』とは、具体的にどういうことなんですか?

NaNa「私、子供のときにディズニーの『リトル・マーメイド』がすごく好きで、何回も繰り返して観ていたんですけど、あのお話は、主人公の人魚が人間の世界にあるちょっとしたものを、どういうふうに使うのかわからないけど、自分の中ではすごく大事なものだからと集めてとっておく、というエピソードから始まるんですよ。

“ヒトツ空の下で”の歌詞を読んだときに、自分の奥底にあるどうしても譲れない部分みたいなところから始まっていくのが、それと少し似てるなぁと思ったんですね。恋愛の話になっちゃうんですけど、人魚が陸に上がって、人間の男性と恋に落ちるみたいなところもちょっとリンクしてて面白いなと思ったので、Hidekiの思いも汲みつつ、自分の曲に対するイメージもうまく組み合わせて歌いました」

――曲調は、90年代J-Pop的な匂いを感じますよね。

Hideki「そうですね(笑)」

NaNa「デモを聴いた感じでは、私は90年代J-Popよりアニソンのイメージでしたね。だから、あまり重たくなりすぎないように歌おうという意識でした」

Hideki「確かに自分はTWO-MIXとかaccessが大好きでしたし、そういった要素もありつつ、もうちょっと現代っぽくハイブリッドな音にしたいなぁという意図はありました」

――そのハイブリッド感の一つにもなるのがHidekiくんのドラムでもあると思います。ただ、90年代であればなかったであろうテクニカルなフレーズが、今までの作品とはまたちょっと違った聴こえ方がするんです。

Hideki「そうですね……前は好き勝手に詰め込んでいたものが、だんだん全体像、木を見て森も見るといったバランス感覚が、歳を重ねるごとに養われてきたのかなぁというのはあります」

――浜田麻里バンドでの活動の影響もありますか?

Hideki「それはもう絶大なる影響がありますね(笑)。厳しい現場であることは当然ですが、浜田麻里さんの歌を一番に引き立たせつつも、特に『Gracia』(2018年)の楽曲などは、演奏もホントに気鋭なるニュアンスで臨まなければならない。ある意味、そこは自分がMAHATMAで求めているところと、すごくリンクする感じではあったんです」

浜田麻里も厚い信頼を寄せるHidekiの超絶ドラミングにフォーカスした2016年のライブ映像。HidekiはYAMAHAとエンドース契約もしている