ソロとして初の作品はSUPER GOOD BANDだった

――今回のリリースに先駆けて、真夏さんは昨年に自身のバックバンド、SUPER GOOD BANDを解散させていましたね。その理由もあらためて教えていただけますか?

「私がソロとしてはじめて作った作品は〈バンド〉だったと思うんです。SUPER GOOD BANDは、4年くらいかけて一個の集合体を仕上げるという、壮大な作品だったなって。それが昨年に『BEΔUTIFUL』というミニ・アルバムを出して、そのツアー・ファイナルが終わったとき、メンバー全員にやり切った感があったというか。ソロで初めて何か作れたなと思えたので、これは新しい門出のタイミングだなと思ったんです」

永原真夏+SUPER GOOD BANDの2018年のライブ映像
 

――楽曲制作のやり方は、プロジェクトによって変化していますか? SEBASTIAN Xの場合は、真夏さんがアカペラでつくった曲を基にして、メンバーがそこにコードやリズム、アレンジをつけていくというやり方でしたよね。

「今も基本的にはそのやり方で作っています。もちろん私も打ち込みの技術を得たり、以前よりも細かい指示を出せるようになったりはしましたけれど、基本的にはずっと変わらず、アカペラから作っています。その作曲方法が色んな場面で通用するように、理論や知識も身につけました」

――メンバーが変われば、バンド内の共通言語も自ずと変わるのでは?

「そうなんですよ。プレイヤー1人ひとりにそれぞれの知性と技術、美意識があるので、そこに通じるような言葉を私も理解していかなきゃいけない。相手の表現を理解できるように努める必要は当然あるし、何よりも私は自分のイメージを壊してくるようなミュージシャンが好きなので(笑)。アカペラから自分の完璧な脳内イメージに近づけていくことはできるんですけど、私が〈これいい曲だな〉と心から思えるものって、やっぱり他者のエッセンスが入っているんですよね」

 

やっぱりSEBASTIAN Xは、最高のバンド。大好き

――そもそもSEBASTIAN X自体、かなりクセのあるミュージシャンたちの集まりですものね。

「ホントそうですよね(笑)」

――SEBASTIAN Xは今、どんな状況なんですか?

「今は仲良いですよ(笑)。タイミングが合えばやりたいとも思ってます。やっぱりSEBASTIAN Xは特別な存在だし、最高のバンドだと思う。大好き。私たちは男女比も半々だったので、偏ることもなかった」

SEBASTIAN Xの2017年のライブ映像
 

――ソロとなった現在はいかがですか? ジェンダー間の隔たりを感じるときはある?

「あります。それに、なんだか私もすこしは先輩になったみたいで(笑)。女の子のアーティストから相談を受ける機会が増えたんですよね。私も過剰に女の子扱いをされるのが本当に得意じゃないし、ある部分では、作品でも中性的な表現をしてきたつもりで。ファッションのスタイルとしてかわいいものは好きだけど、メンタリティーとしてはそうじゃないから。でも、たとえばライブハウスの打ち上げ文化って、やっぱり女性は苦労するんですよね。自分は蚊帳の外だなって感じる」

――ただ、SEBASTIAN Xの関係性はそれを感じさせなかったと。

「うん。そこも魅力だったし、なによりSEBASTIAN Xがいちばん大事にしてたのは〈人々の生活〉なんですよね。そこから私たちの表現は始まってる」

――〈人々の生活〉というのは?

「飯食って寝るってことをどれだけ謳歌できるか、ってことかな」