©2019 Polygram Entertainment, LLC. All Right Reserved.

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 ハワード監督は〈良き部外者〉の新鮮な視点で、先ずは神に祝福されたあの奇跡の歌声について検証する。その始まりは1935年、イタリアはモデナ。父親フェルナンドはパン職人にしてアマチュアの歌手で、パヴァロッティは子どもの頃から父を真似て歌っていた。一度は小学校教師の職に就くが、母親の言葉に後押しされ1961年にお隣のレッジョ・エミリア県都の市立劇場に出演を果たし、プッチーニ「ラ・ボエーム」のルドルフォ役でプロ・デビュー。1963年に同役でディ・ステファノの代役として英国ロイヤル・オペラの大舞台に立ち大絶賛を受ける。その武器は口を開いた瞬間、天性のように響かせる高いハ音(C)。とりわけドニゼッティ《連隊の娘》で、この高音を9回も連発する神業を楽々と披露して聴衆を熱狂させ〈キング・オブ・ハイC〉の称号をほしいままにし、オペラ界の頂点に君臨した。劇中ではそのサクセスストーリーを可能な限り実際の音源を使用して再現。先述した雨のハイドパークでダイアナ妃に捧げて歌った《何と素晴らしい美人》(プッチーニ「マノン・レスコー」より)や〈3大テノール・コンサート〉のアンコールで《誰も寝てはならぬ》(同「トゥーランドット」より)をドミンゴ→カレーラス→パヴァロッティと豪華に歌い継いで、最後に三位一体となる場面は圧巻。たとえこれまでクラシックに馴染みがなかった観客であっても、きっと映画館で心躍るようなオペラ体験ができるはずだ。